■2020年9月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●欧州事情
●英国牧草家畜協会の認証制度ではグリホサート認めず

 英国の牧草飼育家畜協会(PFLA)が、最新の認証基準を発表した。動物を100%牧草で飼育するなど、土壌や野生生物に良い影響をもたらす方法で飼育していることを保証すると同時に、栄養や品質の高い食肉と乳製品の生産を保証するものである。新しい基準では、対象の動物が増え、革やウールなどの繊維製品も含まれている。加えて、グリホサートの使用が禁止されたため、グリホサートを散布した土地で飼育したものは認証されない。〔Farmers Guide 2020/7/24〕


●アジア事情
●国際ゴールデンライス抗議デー

 8月7日の国際ゴールデンライス抗議デーに、アジアの市民団体を中心に33団体で構成されるストップ・ゴールデンライス・ネットワークが、声明を発表した。それによると農薬企業やIRRI(国際稲研究所)が共同で、今回のパンデミックを利用してゴールデンライスの売り込みを図っており、ターゲットになっているのが、フィリピン、インドネシア、バングラデシュの3カ国であると述べている。フィリピンではすでに栽培が承認され、インドネシアでは昨年から西ジャワ島で試験栽培が始まり、バングラデシュでは栽培承認に向けた動きが活発化しているという。〔Stop Golden Rice Network 2020/8/7〕

●GM昆虫
●米国のGM蚊放出試験延期

 米国フロリダ州モンロー郡キーズ諸島では、今夏からのGM蚊放出についての投票が予定されていた。そのキーズ諸島蚊制御地域(FKMCD)は7月22日、投票の延期を決定した。承認されれば英国オキシテック社は2年間で7億5000万匹のGM蚊を放出するとしていた。環境保護団体などは、この投票延期を歓迎している。フロリダ州以外にも、大都市ヒューストンのあるテキサス州ハリス郡で来年放出試験が予定されている。〔Friends of the Earth 2020/7/22〕

●ゲノム編集
●ゲノム編集子牛に異常見つかる

 カリフォルニア大学デービス校で、ゲノム編集のノックイン操作で性決定因子を操作し、雄の子牛を誕生させた。この子牛は一見大きくて健康に見えたが、染色体に異常が起きていた。研究ではSRYとGFPの2つの遺伝子を挿入したが、対であるはずの17番染色体の1つに新しく挿入した遺伝子は見つからず、そのギャップを埋めるために26のDNAがランダムに挿入されていた。また、ほとんどの細胞にSRYとGFPの7つもの遺伝子のコピーが見いだされ、そのうち2つは逆方向に挿入されていた。また、遺伝子の挿入に用いた細菌のプラスミドの断片も見つかっている。この結果についてオーストラリア国立大学キャンベラ校の遺伝学者ガエタン・ブルジオ(Gaetan Burgio)は、このような複数のコピーやプラスミドが挿入されるケースはよくあることだと述べている。以前、ウォールストリート・ジャーナル紙が、動物のゲノム編集でウサギの舌の肥大、脊椎が多い豚、牛の早期死亡などが起きているとする報告を載せた際に、ハーバード大学の動物生命倫理学者のリサ・モーゼス(Lisa Moses)は「私たちが何をしようとしているかを知ること、どのような悪い結果が起きるかを予測すること、それをきちんと行なってこなかった。その点で、私たちがいかに傲慢であったか」と述べている。〔WIRED 2020/7/24〕

●ゲノム編集では意図した変更にもリスク評価が必要

 独マックス・プランク研究所のカタリナ・カヴァル(Katharina Kawall)らが、意図しない問題をもたらすオフターゲットやオンターゲットだけでなく、意図した目的でもたらされた新たな性質に対しても徹底したリスク評価が必要であるという論文を『ヨーロッパ環境科学誌』に発表した。その理由として、小さな遺伝子組み換えがしばしば起きており、代謝経路と植物組成に大きな変化をもたらす可能性があるからだとしている。これは欧州食品安全庁(EFSA)が発表しているゲノム編集技術に対する見解とは異なるものである。〔Environmental Sciences Europe 2020/8/11〕