■2020年10月号

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バイオジャーナル

ニュース


●除草剤
●グリホサートがGM大豆に有害な影響をもたらす

 除草剤グリホサートが、この除草剤に耐性を持つ大豆に有害な影響をもたらすことが示された。実験を行なったのはノルウェーの研究所とブラジルのサンタカタリーナ大学の研究チームで、複数の遺伝子を入れるスタック品種でも、単一の遺伝子の品種でも、深刻な代謝障害が起きていたことが確認された。研究者は、ブラジルで許可されている量を散布し、8時間後に調べたところ、炭素の代謝や流れ、エネルギーの代謝、光合成、植物の防御システムに悪影響があった。しかも植物の解毒システムの活動が活発化し、酸化ストレスが増幅していた。この論文は『環境科学ヨーロッパ』誌に掲載された。〔Environmental Sciences Europe 2020/7/25〕

●グリホサートは喘息をもたらす

 アルゼンチンで行われた調査研究で、グリホサートの散布と喘息の有病率の間に関係があることが示された。この調査研究は、モンテマイズ市の市長を中心にした市民グループの要請で行われ、コルドバ国立大学医学部が調査と評価を担当した。同市では、グリホサートの散布が増加するにつれて、喘息の罹患率が増えている。少なくとも年間975トンの農薬が散布され、市内の濃度は農作地の数倍だった。グリホサートは、穀物粉塵の100%で見つかっており、その濃度は他の農薬の約20倍だった。〔Sustainable Pulse 2020/8/15〕

●GM昆虫
●米国フロリダ州のGM蚊放出試験実施へ

 米フロリダ州で、英オキシテック社のGM蚊放出計画が行われることになりそうである。放出地域での住民投票が延期され、中断される可能性があったが(本誌2020年9月号参照)、フロリダ州キーズ諸島蚊制御地域(FKMCD)は8月18日、来年から2年かけて7億5000万匹のGM蚊を放出する計画を正式に承認した。これにより実際に放出が行われる可能性が強まっている。〔BBC News 2020/8/20〕


●合成生物学
●東工大が合成生物学のプロジェクト立ち上げ

 東京工業大学は9月1日、合成生物学による、微生物の人工ゲノムを作る「細菌ゲノムアーキテクト・プロジェクト」を立ち上げた、と発表した。東工大生命理工学院生命理工学系の相澤康則准教授らの研究チームは、東工大発のベンチャー企業ロゴミックス(Logomix)と共同で研究を進める。まずは大腸菌の合成ゲノム構築に向けて動き出すことになる。〔日経バイオテク 2020/9/15〕


●省庁動向
●農水省がGMナタネ、GM大豆の自生調査結果を報告

 農水省は9月7日、「平成30(2018)年度遺伝子組換え植物実態調査」を発表した。同省は平成18(2006)年度から、輸入港の周辺地域でGM作物の自生調査をしている。ナタネ類に関しては苫小牧、鹿島、千葉、名古屋、四日市、神戸、博多の7港(前年度は17港)、大豆とツルマメに関しては鹿島と博多の2港(前年度は10港)において、その陸揚げ地点から5kmの範囲で調査を行なった。
GMナタネに関してはすべての港で見つかり、苫小牧では採取した5検体すべてがGMナタネであった。また四日市と博多は採取数も多く、陽性検出率も高かった。四日市では59検体中46検体、博多では97検体中76検体で検出、両者とも検出率は78%だった。またセイヨウナタネの種子165個体を検査したところ、グリホサートとグルホシネートの両耐性のものが20見つかった。大豆に関しては、鹿島港ではGM大豆の自生は見られなかったが、博多港では採取した3個体がすべてGM大豆だった。

●GM香料使用可能に

 GM香料のバレンセンの日本での使用が可能になった。この香料は3種類の生物由来の遺伝子を13種類使用している。グレープフルーツの香気成分で、ジュースやチューインガムなどへの使用が見込まれている。オランダの企業が開発し、その後独BASF社が買収し、同社が事業化を進める。