■2020年11月号

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バイオジャーナル

ニュース


●アジア事情
●農薬被害のインド農民がシンジェンタ社を提訴

 インドのマハラシュトラ州の農家が9月17日、2017年に起きた大規模な農薬被害について、スイス・シンジェンタ社をスイス・バーゼルの民事裁判所に訴えた。シンジェンタ社は世界最大の農薬企業で、かつ世界第三位のGM種子企業である。現在は中国化工集団公司傘下にある。農薬行動ネットワークによると、被害をもたらした殺虫剤「Polo」には、有害性の強いジアフェンチウロンが含まれている。スイスでは2009年に禁止したにもかかわらず、輸出を停止しなかった。マハラシュトラ州ヤバトマル地区では、約800人の農民が被害に遭い、少なくとも20人が死亡している。〔Frontline 2020/9/30〕

●ゲノム編集
●サイバス社のゲノム編集ナタネは突然変異だった?

 ゲノム編集でスルホニルウレア系除草剤耐性ナタネを開発した米国のベンチャー企業サイバス社は、このナタネはゲノム編集ではなく、突然変異によるものだと主張を変えた。先月、米国アイオワ州にある民間の研究機関HRIが、このゲノム編集ナタネの全ゲノムを解読し、検査方法を発表したばかりである。しかしサイバス社は、当初説明していた、ゲノム編集でDNAを切断した後に、短いDNAを挿入する「オリゴヌクレオチド指向性突然変異」で開発したものではなく、単なる組織培養の最中に起きた突然変異である、と主張を変更した。前者の場合はEUで規制の対象になるが、後者の場合は規制の対象とならない。〔Inf’OGM 2020/9/29〕
●RNA干渉法
●RNAi農薬は生態系に甚大な影響をもたらす

 RNA干渉法(RNAi)技術による農薬は、ミツバチなど益虫のみならず、生態系や人にも甚大な影響をもたらすという報告をFoE(Friends of the Earth:地球の友)などがまとめ発表した。RNAi農薬は、RNAが細胞の中に入り、生存に必要な遺伝子を壊し殺す。この農薬に関してはバイエル社、BASF社、シンジェンタ社などの農薬企業が開発を進めている。その中でグリーンライト・バイオサイエンシーズ社が開発し、コロラドハムシを対象にしたRNAi農薬について、同社は認可を求め、今年中にも申請する予定である。この農薬を散布すると、標的以外の生物の遺伝子の働きを壊す危険性があり、世代を超えて影響する可能性もある。〔FoE 2020/10/6〕
●企業動向
●グリホサート訴訟におけるバイエル社の対応

 バイエル社は、グリホサート訴訟の一括和解に失敗した後、個別に交渉を進め、大手法律事務所が和解に応じるなど、集団訴訟の切り崩しを図ってきた。一方、和解に応じていないテキサス州のデイビッド・ダイアモンド弁護士事務所は、停止している裁判の再開を求めた。それに対してバイエル社は、交渉に応じなければ破産を申請すると脅しをかけている。バイエル社は現在、農薬部門の合理化を推し進め、結果として株価の下落をもたらしている。同社の株価は、モンサント社買収時より50%以上も下落した。〔US Right to Know 2020/10/1〕