■2021年1月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●アジア事情
●シンガポールで培養肉の販売承認

 シンガポールで、鶏の細胞を培養して製造する培養肉が承認された。製造・販売するのは「イート・ジャスト・プロダクト(Eat Just’s product)」で1200リットルのバイオリアクターで生産される。当面、シンガポール内で販売し、輸出が可能になれば、1〜5万リットルのプラント建設を予定している。〔The Guardian 2020/12/2〕

●フィリピンのゴールデンライスの栽培停止を求める

 アジアの117の市民団体や農民団体、個人がフィリピン農務省に対して、ゴールデンライスの実験や生産の停止を求めた。ゴールデンライスは、2019年末に同国で承認されている。声明では、このGM稲は莫大な資金を投入して開発されてきたが、人間が食べるものを作れず、失敗が繰り返されてきた。これ以上、実験を継続すべきではなく、停止すべきだとしている。〔PAN Asia Pacific 2020/11/13〕

●除草剤
●グリホサートが生物の絶滅を加速させる

 米国環境保護局(EPA)は、グリホサートは絶滅危惧種の動植物種の93%にダメージを与え、滅ぼす可能性があるとする報告書をまとめた。現在2億8000万ポンドのグリホサートが2億9800万エーカーの土地に散布され、その84%がGMOに用いられている。それが希少生物に及ぼす深刻な影響が示されたという。〔Center for Biological Diversity 2020/12/3〕

●グリホサートは体内にある微生物に影響を及ぼす

 フィンランド・トゥルク大学の研究チームが、グリホサートが人間の体内にいる重要な役割を果たす微生物の54%に影響を及ぼしていることを明らかにした。論文は「有害物質ジャーナル(Journal of Hazardous Material)」2020年11月14日号に掲載された。微生物には腸内細菌も含まれる。影響は、グリホサートがEPSPS酵素をターゲットにしていることが要因と考えられている。
また、ニューヨーク州にあるマウントサイナイ・アイカーン医科学校の疫学研究所が発表した論文によると、メキシコの子どもたちの尿からグリホサートが検出されている。この論文は「環境健康ジャーナル(Journal Environmental Journal)」2020年11月12日号に掲載された。論文は過去2年に発表された、メキシコの地方に住む子どもの尿を調査した5本の論文を分析したもの。アグア・カイエンテ地域に住む192人の子どものうち73%に、数値としてはっきりわかるほど尿が汚染されていた。アウアカパンに住む子ども89人の調査では、全員からグリホサートが検出された。研究者は、グリホサートによる汚染拡大の実態は深刻だと指摘している。〔US Right to know 2020/11/23〕

●省庁動向
●種苗法改正案が可決成立

 12月2日、種苗法改正案が可決成立した。この法改正の目的は、これまで登録品種の一部に限られていた作物の自家採種・増殖禁止を全作物に拡大し、罰則を強化することにある。日本で開発された品種が海外に流出していることを理由に、政府は改正に動いてきた。
種苗法は、UPOV条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)の国内法である。1980年代に入り新品種開発が遺伝子組み換え技術中心になり、その保護強化を主要目的に1991年にUPOV条約が改正され、知財保護の範囲が大幅に拡大された。その際、それまで一部にとどまっていた保護の対象を全植物種に拡大し、従来は権利が及ばなかった収穫物にまで権利が及ぶようになった。こうして登録品種の権利の範囲は種子や加工食品にまで及ぶようになり、自家採種・増殖は原則禁止となったが、各国の裁量で禁止作物を指定できることから、日本では長い間一部の作物の禁止にとどめていた。条約改正に基づき日本は1998年に種苗法を改正し、新品種保護を強化した。
今回の種苗法改正では禁止作物をすべての植物に拡大し、加えて罰則を強化した。目的はゲノム編集技術という新たな技術を用いた新品種開発が進められるなかで、いっそう重要になってきた知的財産権の強化である。