■2021年3月号

今月の潮流
News
News2


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る

























バイオジャーナル

今月の潮流●高GABAトマトの問題点をドイツの科学者が指摘

昨年12月11日、日本初のゲノム編集作物「高GABAトマト」の国内流通が可能になった。筑波大学教授の江面浩らが開発し、同大学発のベンチャー企業サナテックシード社が種苗を販売する予定。商品名は「シシリアンルージュハイギャバ」である。すでに苗の無償提供を募集しており、今春にも配布が始まる。

このゲノム編集トマトは、血圧の上昇を抑える働きがあるといわれる物質「GABA」を多く含むようにゲノム編集したもので、この点についてドイツの科学者団体が問題点を指摘した。それによると、抑制性神経伝達物質のGABAは、人間の血圧を下げるなどの効果が喧伝されているが、植物にとってもさまざまな機能を担っており、害虫や病気への抵抗性、成長などにも影響する。GABAは、害虫から攻撃を受けた際に増える。これまでの研究では、通常の状態で恒常的に増やすことはできなかった。さらには、4500もの植物体を用いて突然変異を誘発した実験でも増やせなかった。今回はゲノム編集技術でいくつかの遺伝子を破壊し、恒常的に高い状態をもたらした。

しかしGABAは、植物が持つさまざまな機能に重要な役割を果たすため、遺伝子への介入は代謝に影響を及ぼし、そこで起きる変化は、環境からのストレスに予想外の反応を示す可能性がある。とすれば、食品としての安全性にも影響があるかもしれない。このトマトの開発では、リスク調査が行われておらず、苗の配布や販売が許される段階にない、と指摘した。〔Testbiotech 2021/2/3〕