■2021年4月号

今月の潮流
News
News2


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る

























バイオジャーナル

今月の潮流●RNA農薬推進を打ち出した農水省

 新しい遺伝子操作農薬が登場しそうである。新型コロナウイルス・ワクチンと同じ、遺伝物質を植物や昆虫の体内に入れ、細胞内で遺伝子を操作する方法で効果を発揮する農薬、RNAi(RNA干渉法)を応用した「RNA農薬」である。RNA干渉法は、特定の遺伝子を壊す技術で、この方法で開発したジャガイモが承認され、米国では栽培されているが、農薬のように環境中に遺伝物質を直接散布することは、これまで行われていない。

農水省は昨年末、「みどりの食料システム戦略」本部を設立し構想を提示、その中でこの「RNA農薬」の推進を打ち出した。戦略では、有機農業を25%まで増やすという。現在、0.2%程度の日本における有機農業の割合を、25%まで増やすということは、それだけ見ると農水省の方針が変わったようにみえるが、そこで示された有機農業は従来のそれとまったく異なるものであった。

農水省は戦略の中で次のように述べている。生産から消費までの各段階で「新たな技術体系の確立とさらなるイノベーションの創造により、我が国の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する」と。ここでのポイントは、2度出てくるイノベーションという言葉である。それは、スマート農業と呼ばれるAIなどを駆使したハイテク化、ゲノム編集を含む遺伝子操作を応用した作物の開発、そしてRNA農薬という遺伝子操作を応用した農薬の推進なのである。大企業による大規模経営の、ハイテクを応用した農業が作り出す作物を、スーパーなど大型の流通業者が取り扱うという戦略であり、そこには輸出用作物づくりも入っている。

昨年始め農水省は、「ゲノム編集作物は有機とは相いれない」という方針をいったんは採用したが、確定されないまま今日に至っている。その背景に、「みどりの食料システム戦略」の構想が企画されていた可能性がある。