■2021年4月号

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バイオジャーナル

ニュース


●新型コロナウイルス
●いきなり臨床試験が常態化したワクチン開発

 新型コロナウイルスは変異型へと移行し、欧州などで再び感染が拡大し始め、日本でも感染が拡大している。その代表が、英国で発見され、ジョンソン首相が「感染力が70%強い」と述べた変異株である。
この英国型を始めとして次々に現れる変異株による感染で、この感染症への対応は新たな段階にきている。変異型は日本でも相次いで見つかっており、今後感染拡大が予想される。現在、新型コロナウイルスの変異株には、英国型に加えて、南アフリカ(南ア)型、ブラジル型、米国型など、それぞれの地域で独自の変化を起こした株があるが、この中で深刻な影響をもたらしそうなのが南ア型、ブラジル型である。これまで開発してきたワクチンは、中和抗体と呼ばれるウイルスに対抗して効果を発揮する抗体をつくるものだが、この2つの型ではできないのである。これは一度感染した人が再感染することを意味しており、先行きが見えない状況になってきた。
いま製薬メーカーは、この南ア型に対応したワクチン開発を進めている。すでに既存のウイルスに対するmRNAワクチンを開発した米国モデルナ社が、南ア型に対応した試験用ワクチンを2月24日、国立衛生研究所(NIH)に提供したと発表した。本来ならば、ワクチンや医薬品は、基礎研究、動物実験が順次行われた後に、人間への臨床試験が行われる。しかし緊急を要する新型コロナワクチンでは、例外的に基礎研究、動物実験、臨床試験を同時に行なう仕組みが作られてしまった。モデルナ社の南ア型対応ワクチンも、いきなり臨床試験が行われる。今後、医薬品開発やワクチン開発で、こうしたことが常態化する危険性が出てきたといえる。

●新型コロナワクチンに依存する日本の製薬企業

 新型コロナウイルス感染症拡大により、病院に行く人が減少し、医薬品の売り上げは大幅に減少している。その象徴が武田薬品で、2月26日、国内で販売する糖尿病治療薬4製品に関する資産を売却せざるを得ないところに追い込まれた。その武田薬品が期待しているのが、同社が製造・販売するモデルナ社の新型コロナワクチンである。これから日本の製薬企業のワクチン依存体質が進みそうである。JCRファーマも3月4日に、神戸市西区の神戸サイエンスパーク内に、ワクチン製造工場の新設を発表した。ここではアストラゼネカ社の新型コロナワクチンの製造を行なう。稼働予定は2023年で、まだ先のことであるが、そこには変異株のワクチン製造を見込んでいると同時に、新たな感染症のワクチン開発や製造への期待もあると思われる。
●欧州事情
●欧州の科学者が全ゲノム公開を求める

 欧州の科学者団体が、ゲノム編集生物について、全ゲノムの解析結果の公開を求めた。このまま公開されないと、ゲノム編集作物が海外から輸入されても識別も追跡もできない。貿易での混乱を避けるためにも、全ゲノムの公開は必須だと指摘した。〔Foods 2021-10-430〕