■2021年5月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●ゲノム編集食品市場化への活発な動き

 

 ゲノム編集食品をめぐり、企業や研究所、それを受けた政府の動きが活発化している。その代表的なものが、新たなゲノム編集ジャガイモの野外試験栽培開始である。開発したのは理化学研究所で、栽培は共同で実験している農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の圃場で行われる。このジャガイモは、ジャガイモが持つ有害物質のアルカロイドのソラニンやチャコニンを低減させたものである。

ソラニンは芽にできる有害物質で、チャコニンは太陽に当たった部分が緑色に変化してできる有害物質である。これらの有害物質がつくられないようにSSR2と呼ばれる酵素ができないように遺伝子を破壊して作成した。野外試験栽培は、第1次が4月下旬から8月上旬まで、第2次が8月下旬から来年1月に行われる予定である。
他方、まもなくサナテックシード社から高GABAトマトの苗の無料配布が開始される。それを前に、市民団体の食と農から生物多様性を考える市民ネットワークは、開発者の江面筑波大学教授とサナテックシード社に対して、繰り返し面談の申し込みや、省庁も交えた意見交換会への出席を求めた。しかし、両者が拒んだため、参議院議員の福島瑞穂事務所を通じて再度要請したが、またも出席は拒まれ、質問状に対する回答のみが寄せられた。それによると、「(ゲノム編集トマトは)関係省庁との事前相談および専門家による検討の結果、科学的に従来の品種改良と同等の安全性が担保されていると判断されております」と回答。詳しい内容については述べなかった。4月23日、同社は5月中旬から苗の配布を開始し、合わせて契約農家で栽培し、加工してトマトピューレで通信販売する旨の記者会見を開いた。


肉厚マダイなど魚の動きも活発化している。日本消費者連盟などの消費者団体は、開発者の木下京都大学助教授、リージョナルフィッシュ社、厚労省に対して質問状を出し、それに対する回答が寄せられた。木下助教授とリージョナルフィッシュ社の回答は、概略、以下の通りであった。@環境への影響については、陸上で二重の防護を行なった上での養殖である、A全ゲノムの解析を行なっておりオフターゲットはなかった、Bモザイクは子世代以降にはない、Cエピゲノムに関してはまだ解析していない、D食品の成分分析で従来の品種と相違ない、E消費者の知る権利に配慮して表示する、というものだった。厚労省からは、知的財産権を盾にとって、事実上の無回答だった。