■2021年5月号

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バイオジャーナル

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●遺伝子組み換え作物
●米中が相次いでゲノム編集で除草剤耐性作物を開発

 中国・華中農業大学のAmjad Hussainらがゲノム編集技術を用いて、除草剤耐性小麦を開発した。耐性をもたらすのは、スルホニルウレア系、イミダゾリノン、アリルオキシフェノキシ・プロピオン酸系といった除草剤である。またこれとは別にバイエル社もまた、ゲノム編集技術を用いて除草剤耐性大豆を開発した。耐性を可能にするのは、ジカンバ、グリホサート、グルホシネートといった除草剤である。〔Plants 2021/3/24〕
●Bt毒素は作物中で毒性が強まる

 遺伝子組み換え殺虫性作物に用いられる殺虫(Bt)毒素の毒性は、農薬として直接用いられるときと比べ毒性が低いと考えられていたが、新しい研究で、作物中にあると毒性が強まり、動物に影響をもたらすことが示された。ドイツ・コブレンツ大学のラルフ・シュルツらの研究によると、とくに水生生物の無脊椎動物やミツバチなどの花粉媒介者に対する影響が大きい、と指摘している。〔Science 2021/4/2〕

●除草剤
●グリホサートの性ホルモンへの影響

 米国と欧州の科学者たちが共同で研究を行い、グリホサートが性ホルモンに及ぼす影響により、女性の赤ちゃんの肛門と性器との間隔が、男性のそれに近づくことを「Environmental Pollution」誌に発表した。中心になって研究を進めたのは、ニューヨークにあるマウント・シナイ・アイカーン医科大学のShanna Swanで、妊娠中にグリホサートに暴露したケースを観察した。肛門と性器の距離は、ホルモンへの影響の指標になっているという。〔Sustainable Pulse 2021/4/7〕
●除草剤に用いる界面活性剤の尿中濃度測定が可能に

 除草剤ラウンドアップに用いられている界面活性剤の人間の尿中に残留した濃度が、きわめて正確に精密に計測できるようになった。研究論文を発表したのはロンドン・キングスカレッジのRobin Mesnageらで、それ自体有害なこの界面活性剤は、グリホサートの毒性を増幅させることでも知られている。その界面活性剤の1つがPOEA(非イオン系界面活性剤ポリオキシエチレンアミン)で、EUではすでに使用禁止だが、米国では認められている。〔Environmental Research 2021/4/1〕

●iPS細胞
●人間とサルのキメラ動物を作成

 サルの受精卵に人間のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を入れ、受精後19日まで培養する実験が行われた。実験を行なったのは米国サルク研究所のファン・カルロス・イズピスア・ベルモンテ(Juan Carlos Izpisua Belmonte)率いる研究チームで、規制が厳しい米国ではなく、中国昆明理工大学との共同研究という形で進められた。今回は、サルの受精卵132個に人間のiPS細胞を入れ培養した。胚は13日目まで約半数が生存したが、19日目には3個に減少した。この実験は、米中の倫理委員会で承認を受けており、日本でもこのようなキメラ胚作りは文科省の指針で容認されている。しかし、生命倫理的に大きな影響があるだけに、先走った実験に科学者の間でも批判が起きている。実験の結果は、4月16日付「セル」誌に発表された。〔Cell 2021/4/16〕