■2021年6月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●農水省、RNA農薬推進を打ち出す

 

 農水省は5月12日、「みどりの食料システム戦略」を策定し公表した。この戦略は「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」するために、農林水産業の量的・質的転換を目指し、イノベーションを導入のポイントに置いている。その中身は、グリーン化、有機農業化、食品ロス対策等が今後の持続可能な農業にとって大切であるとして、大企業によるハイテクを用いた生産システムの構築、その生産物を大量流通・販売する仕組みの確立を企図している。有機農業を25%まで増やすという数字だけを見ると、農水省も変わったと思われるが、そこで述べられている有機農業の中身は、現在取り組まれている家族経営を基盤にした有機農業とはかけ離れたものである。

この戦略の基底にあるのは、安倍政権が推し進め、菅政権が受け継いだイノベーションの活用で、柱はAIとバイオテクノロジーである。その代表がRNA農薬の活用で、化学農薬からバイオテクノロジーに全面的に移行する方針が示された。スーパー品種の開発では、ゲノム編集技術の応用を想定している。今回、戦略の公表前に一般からの意見を募集したが、多くの意見が集中したのが、このゲノム編集技術を用いた新品種開発への反対だった。

RNA農薬は、特定の遺伝子の働きを壊すRNA干渉法を利用したものである。ゲノム編集に似ているが、ゲノム編集がDNAを切断して遺伝子を破壊するのに対して、RNA干渉法はRNAの働きを阻害して遺伝子が働かないようにする。アポトーシス(突然死)遺伝子を活性化させるために、それを阻害している遺伝子の働きを壊す農薬などが開発されている。殺虫剤や除草剤での活用を想定しており、とくに殺虫剤の使用が先行しそうである。すでにバイエル社、BASF社、シンジェンタ社などの農薬企業や、日本でも名古屋大学や基礎生物学研究所などが、この農薬の開発に向けて動きだしている。化学農薬の有害性が指摘されて久しいが、それに取って代わるこのRNA農薬は、新たな災害をもたらす危険性がある。