■2021年7月号

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バイオジャーナル

バイオテクノロジーが主役の農水省「緑の食料システム戦略」

 

 農水省は6月18日、今年9月に開催される国連食料システムサミットに向けて、農業団体、消費者などとの対話を重ね、この日「全体対話」を実施、先に発表した「緑の食料システム戦略」を軸に、「我が国の目指す食料システムの姿(案)」を取りまとめた。 食料システム(案)の基となった「緑の食料システム戦略」では、スマート農業のようなAIや5Gを用いた自動化農業と並び、バイオテクノロジーを応用した農業が前面に掲げられている。その1つが、農薬や肥料に次ぐ、第三の農業資材「バイオスティミュラント(Bio Stimulants:生体刺激資材)」である。低温や台風などのストレスからの緩和や、栄養素の取り込みを促進するために、アミノ酸や微生物、微生物抽出物などを、遺伝子組み換えやゲノム編集によって改造することが想定されている。 ナノ粒子を用いた農薬伝送システムによる植物免疫プライミング(準備状態)も登場している。事前に病原菌に対して抵抗性を増すための方法である。ナノ粒子に農薬を入れ、病気に弱い箇所に送り込み病原菌が働かないようにするもので、これもバイオテクノロジーの応用になる。

化学農薬に取って代わるものとして登場したのが「RNA農薬」である。RNA干渉法を用いて遺伝子の働きを壊す遺伝子操作農薬である(先月号参照)。化学肥料に取って代わるものとしては、土壌微生物の機能解明と、その微生物の有効利用技術の開発が示されている。当然、遺伝子操作、とくにゲノム編集による微生物の改造が想定されている。 スーパー品種の開発は、そのものずばりで、ゲノム編集技術応用作物の開発である。高速フェノミクスを活用したスーパー品種の開発もあげられている。これは植物の表現型と遺伝子の関係を高速で解明して、遺伝子操作による新品種開発を目指すものである。その他にも、培養肉・人工肉や昆虫食などのフードテックの積極推進の動きがある。これもバイオテクノロジー応用が前提であり、「緑の食料システム戦略」の主役はバイオテクノロジーそのものになっている。