■2021年8月号

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バイオジャーナル

EUが食用昆虫を承認

 

 EUが本格的に昆虫食の推進に向けて動き出した。最初に承認したのが、チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫の乾燥ミールワームである。これまでゴミムシダマシ科の甲虫は、小鳥や魚など小型動物のえさ用に飼育されてきた。2018年2月にフランスの昆虫食品製造グループからの申請があり、審査を経て今年1月、欧州食品安全庁(EFSA)が食品として安全と評価した。それを受けて欧州委員会がEUの動植物・食品・飼料常設委員会(PAFF Committee)に諮問し、5月3日にPAFFの承認を得、6月に欧州委員会が正式に承認した。現在すでに11件の昆虫食品の申請が出されているという。 この乾燥ミールワームは、開発したオランダのベンチャー企業のプロティファーム社を傘下に収めた仏企業インセクト社が、今後、製造と販売を手掛ける。

日本でも、昆虫食は昔からタンパク質を補う目的で地域の食文化として根づいており、けっして新しいものではない。しかし今回の昆虫食は、それとは異なるものである。昨年5月に良品計画がコオロギせんべいを製造販売して話題になったが、脱炭素化をにらみ肉の代替食として、また将来の食料不足に対応するために開発が進められているのである。農水省は「緑の食料システム戦略」の中でフードテックの推進を謳い、昆虫食を積極的に推進している。それは地域の食文化を大切に守るものではなく、大規模な食料生産の柱の1つとして国を挙げて取り組み、製造主体は大企業で、事業として積極的に進めるのである。

良品計画のコオロギせんべいは、徳島大学の三戸太郎准教授と同大学発ベンチャーのグリラスが共同開発した、フタホシコオロギを粉末にして製品に練りこんだものである。それとは別に同准教授らは、ゲノム編集技術を用いてコオロギの脱皮ホルモンを制御し、過剰脱皮を促し巨大化させる開発にも取り組んでいる。EUや徳島大学の動向は、これまで日本各地の食文化であった昆虫食とは一線を画した昆虫食であり、将来的には遺伝子操作された昆虫食が主流になることが考えられる。