■2022年2月号

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バイオジャーナル

2022年は新規バイテク応用食品が席巻する年になるのか

 

 2022年はバイオテクノロジーの応用が、さまざまな分野に及ぶことが予想される。その中心はやはり食品で、ゲノム編集技術を中心に「フードテク」と呼ばれる新たな食品が席巻する年になりそうである。 2021年はトマト、マダイ、フグと、ゲノム編集食品の市場化が相次いだが、その流れがさらに加速する可能性がある。一番手に挙げられるのが、九州大学が開発した攻撃性を抑え養殖しやすくしたマサバで、すでに魚は誕生させており、今年から実際に食用になるのかどうか、評価を始める計画である。リージョナルフィッシュ社が開発しているエビの実験も本格化すると思われる。そして、名古屋大学などが開発している糖度の高いトマトも実用化に向けて動き出す可能性がある。

食品分野ではもう一つ、昆虫食がある。2021年、日本ではコオロギ・パウダーの商品化が相次ぎ、カイコを用いた食品も出回り始めた。欧州では、2021年6月にミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)が承認され、商品化に向けて動き始め、昆虫食は世界的な動きになっている。日本では原料としてはコオロギが中心に取り組まれている。食材としてのコオロギの生産を進めている企業にエコロギー社(東京)やオッドフューチャー社(東京)がある。またタケオ社(東京)は、さまざまな県産のコオロギや山梨県産のカイコのさなぎを用いるなど、地域色のある昆虫食の開発に取り組んでいる。エリー社(東京)もカイコのさなぎを原料にしている。今後注目されるのが、徳島大学発のベンチャー企業グリラス社で、成長を早めたゲノム編集コオロギの開発を行なっている。

さらに細胞培養による食品開発も進んでおり、その実用化の年になりそうである。日清食品、丸大食品、日本ハム、伊藤ハムなど大手食品メーカーが相次いでこの分野に参入し、培養ステーキ肉の開発に本格的に取り組むと発表している。再生医療に取り組むベンチャー企業ティシューバイネット社と大阪の懐石料理店雲鶴のオーナー料理長とが組んで設立したベンチャー企業のダイバースファーム社の動きも注目される。細胞農業研究会、日本細胞農業協会、培養食料研究会などが設立され、実用化を後押ししている。 この分野で先行している米国インポッシブル・フーズ社は、培養肉の弱点である味覚や栄養に肉らしさを加えるために、酵母によって生産した鉄含有血液色素のヘム分子を作るノウハウを持つ。同社は、米国内と香港を中心に展開してきたが、さらにオーストラリアとニュージーランドでの市場化を狙って両国に申請をした。