■2022年2月号

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バイオジャーナル

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●異種移植
●米メリーランド大学で豚の心臓を人間に移植
 1月10日、メリーランド大学メディカルセンターは、豚の心臓を人間に移植したことを発表した。執刀したのは同センターのバートリー・P・グリフィス。この異種移植の特徴は、豚の心臓を製造し提供した企業の存在である。バージニア州ブラックスバーグにある再生医療専門のリヴィヴィコール社で、ユナイテッド・セラピューティクスの子会社である。リヴィヴィコール社が製造した豚は、拒絶反応を抑えるために、人間の免疫系の影響を受け難いように3つの遺伝子をノックアウトしている。そして人間の免疫寛容を担う遺伝子を6つ挿入し、さらにこの豚の心臓が大きくならないように1つの遺伝子をノックアウトしている。このように計10の遺伝子を操作して製造された心臓が用いられた。ゲノム編集技術が登場し、容易にノックアウトができるようになったことが、この移植に結びついたと考えられる。 米国政府は12月31日、この移植手術を緊急承認した。移植を受けた人物は、デビッド・ベネットという57歳の男性で、手術の6週間以上前に不整脈で入院し、ECMO(体外膜酸素化装置)に接続されていた。移植リストに入っていなかったにもかかわらず、心臓移植が行なわれたことに疑問が広がっている。メディアはこの人物の犯罪歴を取り上げ、その適格性を指摘している。この人物はまた、10年以上前に豚の弁の移植手術を受けていた。〔University of Maryland Medical Center 2022/1/10〕

●バイオマス
●化学製品のバイオマス化活発に
 脱炭素化に向けて、世界的に燃料や化学製品のバイオマス化が進んでいる。その先頭をいくのがフィンランドのネステ社で、同社はシンガポールに拠点を持ち、バイオナフサやバイオ航空燃料の製造を進めている。三井化学や韓国のLG化学が、同社からバイオナフサの輸入を開始した。フランスのアルケマ社もシンガポールと中国で、バイオマス化学製品の生産体制を構築している。ブラジルのブラスケム社は、タイで大規模なバイオエチレンの生産に乗り出す予定である。その他にも中国やインドでは、大規模なバイオマス化学製品の生産体制構築を進めている。現在、バイオマス化学製品の原料として最も用いられているのが非食用植物のトウゴマで、主要生産地はインド、中国、ブラジルである。インドのジャイアントアグロ・オーガニクス社は、原料のトウゴマの確保に向けて動いている。バイオマス化学製品を増産するため、GM技術やゲノム編集技術を用いた改造も活発化しており、脱炭素化がバイオテクノロジーでの競争を押し上げている。