■2022年3月号

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バイオジャーナル

ニュース


●南米事情
●GM魚が逃げ出し、ブラジルの一般河川で繁殖

 GM魚がブラジル南東部の養魚場から逃げ出し、大西洋岸の森林にある河川で繁殖していることが確認された。この魚は東南アジア原産の小型の淡水魚のゼブラフィッシュで、クラゲの発光遺伝子により青と緑に光る魚と、サンゴの発光遺伝子で赤く光る魚がある。家で魚を飼う人が増えて人気があり、販売量が増加している。ブラジルではゼブラフィッシュを補食する魚はおらず、予想以上に繁殖・拡散した。環境中でのこのような繁殖は例がなく、生物多様性への影響が懸念される。〔Science 2022/2/11〕 この前例のないGM魚の環境中への拡散に、カナダや米国の環境保護団体が強い懸念を表明した。カナダでは、プリンスエドワード島でGM鮭が養殖され、市場に出荷されている。同様に米国でも養殖が始まり流通している。養殖が拡大すれば環境中に逃げ出すリスクは強まる。2月23日、カナダの環境保護団体は連名で、カナダ政府に対して警告を発した。〔cban 2022/2/23〕

●ブラジルが遺伝子組み換えユーカリを承認

 ブラジル政府がGMユーカリを承認した。ブラジルではユーカリの植林が盛んで栽培面積は増え続けている。このGMユーカリは、木材に適した大きさになるのに、通常7年かかるところを5年半に短縮でき、しかも木材にできる量が20%増えるという。このユーカリを開発したのはイスラエルのフツラ・ジーン社で、ヘブライ大学の研究者が立ち上げたベンチャー企業である。同社はブラジル・サンパウロにあるスザノ製紙の傘下にある。〔Canadian Biodiversity Action Network 2022/3/7〕

●欧州事情
●欧州特許省、CRISPR-Casの特許の範囲を縮小

 欧州特許省は、ゲノム編集の基本技術CRISPR-Casの特許の範囲に関して、これまでより狭める修正を行なった。これまで認められていた人間の生殖細胞や胚に関しては特許から外された。動物の細胞に関しても「医学的利益が明らかにある場合のみ」に限定された。これによりゲノム編集技術の特許は大幅に限定される。〔TEST BIOTECH 2022/2/22〕
●ゲノム編集
●イスラエルで雄が生まれない鶏を作成

 イスラエルの研究者が、ゲノム編集で雄が生まれないようにした鶏を開発した。雄の場合、孵化する前に卵の段階で死ぬように遺伝子を操作したもの。この鶏の開発には米国の企業が絡み、EUでも卵の販売計画があるという。〔TEST BIOTECH 2022/2/10〕

●長浜バイオ大学がゲノム編集コオロギ開発へ

 長浜バイオ大学教授小倉淳らは、ゲノム編集技術を用いたスーパーコオロギを開発し、2025年までの作出を目指している。昆虫食関連企業も絡むこの計画は、内閣府が進める科学技術政策であるムーンショット型農林水産研究開発事業の一環で進められる。〔日経バイオテク・オンライン版 2022/1/25〕

●NEDO、ゲノム編集産業化ネットワーク立ち上げへ

 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、2016年度から21年度にかけてゲノム編集技術を中心に「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」事業であるスマートセルプロジェクトを進めてきた。その延長線上にゲノム編集産業化ネットワークが立ち上げられることになり、拠点となる広島大学、九州大学などで実証研究体制の整備が進められている。〔日経バイオテク・オンライン版 2022/1/25〕