■2022年4月号

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バイオジャーナル

世界で、日本で、ゲノム編集鶏の開発進む

 

イスラエルと米国に拠点を持つNRS Poultry社が、昨年11月、ゲノム編集技術で雌の卵には影響がなく、雄の卵だけ孵化しない卵を産む鶏の生産を可能にしたが、この技術が大きな波紋をもたらしている。 これまで採卵鶏では、誕生した雄の雛は基本的にすべて殺処分されてきた。これがアニマルウェルフェアに反すると批判され、ドイツでは2022年1月1日より、雄の雛の殺処分が禁止された。この殺処分問題をクリアするために、ゲノム編集技術を用い、鳥類が持つ独特の染色体であるZ染色体を操作して雄の雛だけ孵化しないようにした。このことが、欧州で雄の雛の殺処分禁止を拡大する流れをつくり出そうとしている。 同時に、欧州におけるゲノム編集食品の動きに影響しかねないものになった。というのも、この卵は欧州に輸出される可能性が高いからである。欧州委員会はこの卵を口実に、ゲノム編集食品について、リスク評価も表示もせずに流通を認める動きをみせている。この卵を産む鶏にはゲノム編集に用いた遺伝子が残っていない、というのがその理由である。

英国もまた、ゲノム編集をGMOに含ませないことで、環境への影響や食の安全を守る仕組みの放棄を水面下で決定し、ゲノム編集食品推進の動きを示している。

日本でも同様の鶏の研究が進められている。取り組んでいるのは広島大学の堀内浩幸教授らの研究チームで、ゲノム編集技術を用いて雌になるように遺伝子を操作した鶏である。生殖細胞の基となる雄になる遺伝子を壊し、生まれてくる鶏がすべて雌になるというもの。

他にも日本ではゲノム編集鶏の開発が進んでいる。最初に開発されたのが、農研機構の畜産研究部門の研究チームが取り組んだ、卵白にあるアレルゲンであるオボムコイドタンパク質をつくれないようにした「オボムコイド遺伝子欠失ニワトリ」である。まず、雄の生殖細胞の基となる細胞にゲノム編集技術を用いてオボムコイド遺伝子を壊し、雌と交雑させ作製した。このように国内外で鶏へのゲノム編集技術の応用が活発化している。