■2022年5月号

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バイオジャーナル

ニュース


●企業動向
●日清食品が東大と培養肉試食会

 日清食品ホールディングスと東京大学大学院の竹内昌治教授の研究チームは、細胞培養によるステーキづくりを目指し、3月31日に作成した培養肉の試食会を行なった。培養肉はまだ食品として認められておらず、試食する仕組みはなかったが、東京大学の倫理審査専門委員会の承認を受けて行なった。研究チームは牛の筋細胞を用いた立体構造づくりで成果を上げてきたが、今回はすべて食べられる素材のみでつくり上げたとしている。そのポイントとなったのが、細胞を増殖するために用いる食用血清を含む培養液と、もう1つが立体構造をつくるための素材である食用血漿のゲルだという。〔日清食品ホールディングス 2022/3/31〕

●食用コオロギ、飼料市場へ参入

 食用コオロギの最大手の生産者であり、ゲノム編集コオロギを開発する徳島大学発のベンチャー企業のグリラス社は、徳島県美馬市に生産や加工を行う拠点をつくり、現在、年間10トンのコオロギパウダーの生産体制を有しているが、さらに2023年末には60トン体制を目指すという。4月15日には、コオロギを用いた動物用飼料の新ブランドを設立し、同時に爬虫類用飼料の販売も開始した。さらに、今後はコオロギを水産・畜産動物用飼料として売り出すことを考えている、と述べている。〔グリラス 2022/4/15〕

●大学発のゲノム編集植物ベンチャー企業発足

 ゲノム編集技術を用いて植物の品種の改良を行う、大学発のベンチャー企業グランドグリーン社(丹羽優喜・代表)が、資金調達を完了し事業を本格化する。同社は名古屋大学内に置かれ、研究農場は豊橋市に開設する予定。〔グランドグリーン 2022/4/13〕

●大阪大学と島津製作所らが培養肉を共同開発

3月28日、 大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授は、島津製作所、コンサルティング会社のシグマクシスと共同で3Dプリンターを用いて培養肉を自動製造する技術を開発する、と発表した。培養肉はまだ価格が高く、最初は100グラム1万円を超える高級肉をターゲットに開発を進める予定。〔大阪大学 2022/3/28〕

●植物由来の糖を原料にバイオプラスティック実用化へ

 バイオベンチャーのグリーンアース・インスティテュートは、三井化学と組んでバイオマスプラスティックの生産に向けた研究開発を行うことを発表し、グリーンアース社の株価は急上昇した。植物由来の糖を原料に、バイオイソプラパノールを発酵法で生産した物質は、そもそも洗浄剤などに用いるものだが、三井化学はこれを原料にポリプロピレンを生産する予定である。〔日経バイオテク・オンライン版 2022/4/1〕


●知的財産権
●モデルナ社、特許権侵害で訴えられる

 mRNAワクチンを開発したベンチャー企業のモデルナ社が、mRNAを包む脂質ナノ粒子をめぐって特許権侵害で訴えられた。この特許権を持っているのはカナダのアルブタス(Arbutus)社で、同社がアキュイタス(Acuitas)社にライセンスを供与していた。そのアキュイタス社がモデルナ社にサブライセンスを発行していた。しかし、アルブタス社からスイス・ゲネバント(Genevant)社が分離独立し、ゲネバント社がビオンテック社にライセンスを供与したため、モデルナ社へのライセンスは使用できる範囲が限定されてしまった。今回のパンデミックが収まるまで、差し止めや請求がなされる可能性はないとみられていたが、2月28日、アルブタス社とゲネバント社は特許権侵害訴訟を米デラウェア地区地方裁判所に提起した。〔日経バイオテク・オンライン版 2022/3/10ほか〕