■2022年6月号

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バイオジャーナル

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●ゲノム編集
●CRISPR-Cas9の基本特許をめぐる争い継続へ

 ゲノム編集技術で使用されるCRISPR-Cas9の基本特許をめぐる争いが、カリフォルニア大学(西海岸)とブロード研究所(東海岸)間で繰り広げられてきた。技術を最初に開発したジェニファー・ダウドナとエマニュエル・シャンパンティエは、2020年にノーベル化学賞を受賞している。ダウドナはその後、カリフォルニア大学バークレー校でイノベーティブ・ゲノミクス研究所を立ち上げている。しかし、2人が確認したのはあくまで原核生物だった。他方のブロード研究所は、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学の研究者が立ち上げたベンチャー企業で、真核生物でこの技術の有効性を確認した。2月28日に米国特許商標庁が、その確認(発明日)が同研究所の方が優位であるとの判断を下したため、最初の発見者と特許取得者が異なる事態となってしまった。西海岸側は争う姿勢を示している。〔MIT Technology Review 2022/4/27〕

●ゲノム編集トマト・ピューレの販売開始

 ゲノム編集トマトの苗やトマトを昨年から販売しているパイオニアエコサイエンス社は5月20日、加工食品としては初めてとなるゲノム編集トマト・ピューレの販売を始めた。価格は15グラムのピューレ30袋入り5832円。
●異種移植
●豚の心臓移植患者の死亡原因はウイルスか

 1月10日、メリーランド大学で豚の心臓の人間への移植が発表され、移植後しばらくは手術がうまくいったようだったが、わずか2か月後に患者は死亡した。異種移植に用いた豚の心臓は、人間の免疫系の影響を受け難いように3つの遺伝子をノックアウトし、さらに人間の免疫寛容を担う6つの遺伝子を挿入し、豚の心臓が大きくならないように1つの遺伝子をノックアウトするなど、計10の遺伝子を操作して製造されていた。早期に患者が死亡したため、その原因が注目されていたが、新たにこの豚の心臓がサイトメガロウイルスに感染していたことが明らかになり、これが早期死亡の原因の1つではないかとみられている。しかしいまだ正式な死亡原因は報告されていない。〔MIT Technology Review 2022/5/4〕

●今度は腎臓の異種移植

 このところ豚の臓器を人間に移植する異種移植が活発化していて、その中心が腎臓移植である。昨年にはニューヨーク大学ランゴーン医療センターとアラバマ大学バーミンガム校で、相次いで豚の腎臓移植が行われた。この2例はいずれも遺伝子操作した豚の腎臓を脳死状態の患者に移植したものである。腎臓を製造したのは、心臓移植用の豚の臓器をメリーランド大学に提供したレヴィヴィコア社である。今回、新たに実際の患者へ移植する計画が明らかになった。移植を行うのはマサチューセッツ総合病院の河合達郎医師らのチームである。現在、米国食品医薬品局(FDA)が許認可の検討を進めており、承認されれば来年にも行われる。この移植用豚の腎臓はバイオベンチャー企業のイージェネシス社が開発した。〔東京新聞 2022/5/17ほか〕