■2022年9月号

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バイオジャーナル

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●遺伝子組み換え作物
●中国で開発されたGM稲に疑惑強まる

 中国農業科学院の研究チームが、単一の遺伝子(OsOREBIC)を過剰発現させただけで稲の収量が劇的に増えた、とする成果を発表した。「サイエンス・オンライン版」(2022年7月22日)が掲載したこの論文では、中国各地で行われた実験で、収量が41.3〜68.3%増加したという。同じ遺伝子を用いた小麦の開発でも、17.2〜22.6%増加したとされる。この成果は、そのほかの科学誌でも繰り返し紹介された。しかし、同時に多くの研究者から、単一の遺伝子組み換えでこのように収量が劇的に増加することはあり得ない、と疑問が呈されている。再現実験での検証が求められる。〔GMWatch 2022/8/14〕
●ゲノム編集
●ゲノム編集で短尾種細毛羊が誕生

 中国農業大学と新疆畜牧科学院の研究者が、ゲノム編集で短尾種細毛羊を誕生させたと発表した。現在、綿羊の品種の多くは尾が長く、感染症が起きやすいなどの理由で子羊の段階で尾を短く切る。そこでチベット系綿羊などいくつかの綿羊を研究し、ゲノム編集で誕生させた。〔新華社 2022/8/13〕
●幹細胞から人工胚
●精子も卵子もなく誕生した胚を人工子宮で育てる

 イスラエルのバイオテクノロジー企業が、マウスの幹細胞を用いて人工胚を作成し、機械で作られた子宮の中で成長させた。精子も卵子もなく作られ、子宮もない状態でマウスの胚は心臓が鼓動し、血液が流れ、頭がいのひだができるまで成長したという。この企業は、ワイツマン科学研究所教授のジェイコブ・ハンナが進める研究を実践している。ジェイコブ・ハンナは今回の成果を「セル(Cell)」(2022年8月1日)誌に発表した。同社によると、人間の細胞でこれを行うのが目標だとしている。教授はすでに人間の細胞での研究を開始しており、最終的には妊娠40日から50日に相当するヒト胚の人工モデルを作ろうとしている。この段階になると、臓器はもとより小さな手足や指も形成されているという。〔MIT Technology Review 2022/8/17〕