■2022年10月号

今月の潮流
News
News2


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る

























バイオジャーナル

除草剤ラウンドアップとその主成分グリホサートの新たな毒性が判明

 

除草剤のラウンドアップと、その主成分のグリホサートについて、新たな毒性が相次いで示されている。その1つが、アリゾナ州立大学の研究チームによる、アルツハイマー病との関係を示した研究であるが(バイオジャーナル2022年9月号参照)、新たに、神経毒性と腸内細菌への影響に関する研究が紹介された。 神経毒性に関しては、フロリダ州アトランティック大学のアクシャイ・ナレインらの研究チームによるもので、ラウンドアップとグリホサートを、それぞれ土壌に生息する線虫の仲間の回虫に用いた結果、行動に影響することが示された。とくに影響があったのはGABA-A受容体で、この受容体は回虫にとって移動に不可欠なものであり、人間では睡眠や気分の調節に関与している。実験では、環境保護庁(EPA)が求めるよりもはるかに低濃度のものを使用した。グリホサートでは0.002%で、これは消費者の摂取基準の300分の1である。

実験ではラウンドアップとグリホサートの両方を用いているが、ラウンドアップの場合、米国と英国のものが使用された。英国のものは、2016年に補助剤のPOEAが使用禁止となったため、それ以前のものと以降のものの両方を用いた。その結果、グリホサートでは、回虫の神経に強く影響し痙攣をもたらした。ラウンドアップでも同様の影響が見られたが、死亡率がさらに増した。〔The Independent 2022/8/23〕

もう1つの腸内細菌に大きく影響することを示した研究は、ロンドン王立大学の研究員ロビン・メスナージらの研究で、ここでもラウンドアップとグリホサートの両方を用いた。使用したのは、健康な3歳の幼児から採取した腸内細菌で、その組成や代謝の変化を観察した。この研究でも、長期にわたって摂取しても安全とされる濃度で行なった。その結果、ラウンドアップもグリホサートも両者ともに、腸内環境に変化をもたらす結果が生じた。特に問題なのがラウンドアップで、アンモニア産生はグリホサートでは増加しなかったが、ラウンドアップでは増加した。アンモニア産生は、結腸癌を促進する可能性がある。またラウンドアップは、長鎖多価不飽和脂肪酸を増加させ、細菌の組成を変化させ、乳酸菌を増加させ、腸内環境の酸性化をもたらすことがわかった。〔Cambridge University Press 2022/7/26〕