■2022年10月号

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バイオジャーナル

ニュース


●アフリカ事情
●GM作物は裕福な農家に増収を、貧しい農家に貧困をもたらす

 米国サンフランシスコ大学准教授のブライアン・ダウド・ウリベが、ブルキナファソの綿農家を調査したところ、実地試験では収量が34%増加するはずだったのが、実際には13%しか増えていなかった。加えて、裕福な農家では33%の収量増と43%の収益増をもたらしたが、中流農家では8%の収量増と8%の収益減となり、貧しい農家では11%の収量減と46%の収益減をもたらしていた。GM綿が、裕福な農家のための作物であることが示された。これはかつての緑の革命と同じ構図であり、GM作物の性格をよく物語っている。これはゲノム編集作物にも言えることである。〔GMWatch 2022/9/10〕
●培養肉
●食べられる血清で培養肉を開発

 第4回細胞農業会議が開催され、東京大学大学院教授の竹内昌治が、今年3月31日に日清食品と共同で行なった試食会について述べた。その中で、食用血清と食用血漿ゲルを独自に開発し、食用の素材のみで培養肉を作成したことを報告した。 東京女子医大の清水達也教授は、従来の細胞培養方法に代わる、藻類を用いた循環型細胞培養システムについて述べた。順天堂大学の赤澤智宏教授はiPS細胞や幹細胞などを用いて培養肉の細胞を作り出す技術について報告した。さらに大阪大学教授の松崎典弥教授は3Dプリンターを用いた立体構造づくりについて報告した。
●企業動向
●リージョナルフィッシュ社が巨大養殖プラント建設へ

 ゲノム編集魚を市場化しているリージョナルフィッシュ社が、2022年9月6日、第2回目の資金調達で20.4億円を調達したと発表した。同社はこの資金を用いて、現在の生産量の約20倍、1万平方メートルを超える巨大プラントの国内建設と、水産大国インドネシアでの事業展開などに取り組むと発表した。それに合わせたゲノム編集による品種改良やスマート養殖にも取り組む姿勢を示した。資金提供企業は、新しい養殖システムを共同開発している奥村組、岩谷産業、NTTや、共同でゲノム編集すしネタ開発を進めているスシローなどを傘下に持つフード・アンド・ライフカンパニーズ社など。 リ社による巨大プラントづくりや海外での事業展開は、同社が進めているバイオフロック養殖システムの構築とゲノム編集による品種改良が柱となりそうである。現在、バイオフロック養殖システムで養殖可能な魚がティラピアとバナメイエビで、この2種類の魚で、インドネシアでの養殖に向けて動き出すとみられる。〔リージョナルフィッシュ 2022/9/5〕

●ユーグレナ社がゲノム編集ミドリムシを開発

 東大発のベンチャー企業ユーグレナ社は、理化学研究所科技ハブ産連本部、環境資源科学研究センターなどの研究チームと共同で、ゲノム編集技術を用いて遊泳しないミドリムシを開発した。ミドリムシが持つ遊泳に必要な鞭毛の形成にかかわる遺伝子をゲノム編集で壊したもの。こうすることで回収の生産効率を上げることができるとしている。ミドリムシは、光合成の能力を持つ微細藻類であるため、二酸化炭素の吸収能力を上げて脱炭素化に向けた取り組みが進められ、さらにバイオ燃料に使え、栄養分が豊かであることから食品としても利用することができる。そのため、このような取り組みが進められている。〔ユーグレナ 2022/9/9〕

●シンビオーブ社が海洋性光合成細菌の開発を本格化

 京大発のベンチャー企業シンビオーブ社は、ユーグレナ社と同様の研究で、海洋性光合成細菌を用いた二酸化炭素や窒素の固定化と、その利用先の開発を進めている。そのシンビオーブ社が、8月25日までに2億円の資金調達を完了させたと発表した。この分野の競争が過熱している。〔日経バイオテク 2022/8/25〕