■2023年1月号

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バイオジャーナル

生物多様性条約締約国会議、成果のないまま閉幕

 

カナダ・モントリオールで12月7日から19日にかけて、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が、カルタヘナ議定書第10回締約国会議、名古屋議定書第4回締約国会議とともに開催された。昨年の昆明でのオンライン開催が第1部、今回は第2部という位置づけである。COP15での大きな争点は、生物多様性保護ではなく、先進国と途上国間の生物資源から得られる利益をめぐるものだった。最大のテーマは、ポスト愛知目標に代わる「昆明・モントリオール目標」の内容についてである。その中で最も大きな焦点の1つが、2030年までに実現すべき「4つのゴール」と「21のターゲット」のうちの「ターゲット17 バイオテクノロジーの規制」であった。最終的には、論争となったすべての点が削除され、最後に「すべての国において、生物多様性条約の第8条g項で規定されているバイオセーフティ措置、及び第19条に定められているバイオテクノロジーの取り扱いおよびその利益の配分のための措置を確立し、そのための能力を強化し、実施する」という文言だけが残った。

COP15の会期中、フランスのNGOのPOLLINISは、ゲノム編集技術やRNA干渉法、遺伝子ドライブ技術などが、受粉をもたらす昆虫にとって大きな脅威になるとして、予防原則に基づいた厳格な規制を求める科学者100人による声明を発表した。

合成生物学についても議論は進まず、議論すべきかどうかという基本的なところでも結論が定まらず、かろうじてCOP16へ議論が先延ばしにされた。バイオテクノロジーを推進し、規制をさせまいと動く先進国は、ゲノム編集技術の規制にかかわる合成生物学の議論を先延ばしし、なし崩し的に取り下げようと動いている。その背景には、GM生物への規制によって、GM作物や家畜・魚などの開発がストップさせられ、結局、頭打ちになった経緯があると思われる。
最近、そのGM作物の後退を象徴する出来事があった。毎年恒例のISAAA(国際アグリバイオ事業団)による世界のGM作物作付面積の発表が、2019年を最後に停止したのである。この間、栽培面積は広がらず、むしろ減少傾向を示していた。
今回のCOP15では、GM作物の二の舞を演じてはならないとばかりに、ゲノム編集技術や合成生物学への規制をさせまいとする動きが顕著に見られた。このままでは生物多様性条約それ自体の存在意義が失われてしまうおそれがある。