■2023年2月号

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バイオジャーナル

フードテックで開発される乳製品

 

植物や細菌由来の代替肉
動物由来の食肉、ミルクや乳製品が避けられる一方で、植物や細菌由来の多様な代替肉やミルクが開発されている。その中で目立った動きをしているのがスイスのネスレ社である。同社は、アーモンドと大豆が原料の「ミロ」に続き、アーモンドとオーツ麦を原料にしたネスカフェ「アーモンドラテ」「オーツラテ」の販売を開始した。ネスレは現在、マレーシアや中国で植物性の食肉製造工場を新設し、植物性食肉「ハーベスト・グルメ」の生産を開始した。すでに香港で販売を始めている。

細胞培養の乳製品
細胞培養による乳製品の開発も進んでいる。イスラエルのウィルク(Wilk)社は、細胞培養でつくった乳脂肪を用いてヨーグルトを作成した。まだ市販はされていない。同社はまた、細胞培養で母乳を開発し、まもなく試作品ができると発表した。
米国のバイオミルク(Biomilq)社は、乳腺上皮細胞の培養による母乳の作製を目指している。この開発には、ビル・ゲイツがかかわる投資ファンドが出資している。

遺伝子組み換え技術による「精密発酵」
母乳づくりで注目される新たな技術が「精密発酵(Precision fermentation)」である。動物を使わず、植物由来のミルクを細菌に製造させる技術だ。精密発酵とは、遺伝子組み換えなどにより、細菌が特定の成分のみを生産するように遺伝子を改造し、その細菌を水や栄養素、糖などを加えて発酵タンクで増殖させミルクを生産する。「精密」は、特定の成分のみを作り出すことを意味し、例えば乳タンパク質のみを発酵技術で量産することができることから名付けられた。
米国のパーフェクト・デイ(Perfect Day)社は精密発酵で、牛などの家畜を使わずに乳タンパク質をつくり、製品化している。同社によれば、この乳タンパク質は動物由来のタンパク質と異なり、コレステロール、グルテン、ラクトース、ホルモン剤、抗生物質などが入っていないことが売りだという。パーフェクト・デイ社の子会社ザ・アージェント・カンパニィ社(The Urgent Company)は、この乳タンパク質を用いてアイスクリームやチーズ、プロテインパウダーを販売している。ベターランド・フーズ(Betterland Foods)社もまた、2022年からパーフェクト・デイ社の乳タンパク質を用いた牛乳やチョコバーの販売を始めた。またネスレ社は、パーフェクト・デイ社と提携し、すでに乳製品の試験販売を開始している。この分野は、両社がけん引している状態にある。
イスラエルのリミルク(Remilk)社は2022年4月、デンマークに世界最大規模の精密発酵工場を建設し、米国内でのアイスクリームやチーズの販売を目指すと発表した。 精密発酵の応用では、米国のザ・エブリー・カンパニィ社(The Every Company)が2022年から鶏を使わない卵タンパク質を製造販売し、プレスド社がそのタンパク質を用いて期間限定でスムージーを販売した。また卵白も商品化し、チャンタル・ギリオン社と共同でマカロンの販売を始めている。〔Foovo 2022/12/21ほか〕