4月3日の参議院決算委員会で、岸田首相が「花粉症対策を進めるため関係閣僚会議を設置する」と述べたのを受けて、14日に最初の閣僚会議が開催された。そこでは、6月に出される「経済財政運営と改革の基本方針」に花粉症対策の方針を盛り込むことが決定した。閣僚会議に出された大雑把な方針は、スギ伐採の促進、AIを用いた予測の充実、治療法の普及が3本柱で、治療法の普及に、開発が頓挫していたGM稲「スギ花粉米」が復活した。
スギ花粉米は2000年度に開発が始まった。消費者メリットがあるとして、次世代GM作物の旗手として登場したのである。農水省の研究機関・生物資源研究所(後の農研機構の研究所)と全農、日本製紙の三者が中心となって開発を進め、当初は「スギ花粉症緩和米」という名称だった。米粒の中に、GM技術を用いて花粉症を引き起こすアレルゲンの構造を変えて作るように操作した。毎日ご飯を食べる際に、そのアレルゲンを摂取してスギの花粉に慣れていくという、減感作療法の考え方である。
農水省はこのGM稲を健康食品として開発を進めようとしたが、厚労省が2007年度に「これは食品ではなく医薬品である」と待ったをかけた。しかし、協力する製薬企業はなく、その結果、開発は大幅に遅れ、名称も「スギ花粉症治療米」と変更された。2010年度からは医薬品として実用化を目指した。
このGM稲は、ペプチド含有米と、ポリペプチド含有米の2種類が開発され、先行したペプチド含有米を用いて2013年から慈恵医科大学で医薬品としての効果を確認する臨床試験が行われた。しかし、症状が改善したとは言えない、という結果だったため、開発は再び頓挫した。それでも商品化をあきらめたわけではなく、開発を広く進めるために2016年からオープン・イノベーション方式をとり、名称も「スギ花粉米」となった。岸田政権も、協力してくれる製薬企業の登場を最大のポイントにあげている。
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