■2023年10月号

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バイオジャーナル

GM微生物の散布始まる

 

GM微生物の散布が始まったことに対して、国際環境保護団体のFoE(Friends of the Earth:地球の友)が報告書で警告した。それによると、米国ではすでに2種類のGM微生物が農業目的で散布されている。散布面積は数百万エーカー(1エーカー=4047u)に達し、0.5エーカーあたり約3兆個のGM微生物が散布されていると考えられる。このGM微生物を開発・販売しているのは、バイエル社、BASF社、ピボット・バイオ社。この中で先陣を切ったのがピボット・バイオ社で、同社はビル・ゲイツが支援するバイオテクノロジーのベンチャー企業である。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の生物工学の研究者であるカルステン・テンメが同じ研究室にいたアルヴィン・タムシルと共同で2019年に立ち上げ、化学肥料に代わるバイオ肥料の開発を専門にしている。このベンチャー企業は、窒素を生み出す潜在能力を持つ微生物を見つけ出し、その微生物を遺伝子組み換えで改造して窒素を作り出す能力を持たせ、さらにその能力を強化した。ごく最近シンガポールで、4億3000万ドル(約600億円)という破格の資金を調達し、アルゼンチンやカナダの市場を目指すとしている。この分野のベンチャー企業にはほかに、Indigo Ag社、Ginkgo Bioworks社、Joyn Bio社がある。 しかし、GM微生物の散布は、GM作物より危険性が大きい。
特に問題なのが、微生物同士は頻繁に遺伝子を交換しているので、風に乗って容易にさまざまな微生物にGM遺伝子が拡散する危険性があり、予測できない遺伝子汚染が起こり得ることである。また、土壌の生態系はとても複雑で、そこに住む微生物や昆虫などの生物に取り返しのつかない悪い影響が起こり得る。FoEは「私たちが食べる食料の95%が土壌に依存しており、そこへの取り返しのつかない事態が起こり得るし、一度散布された微生物は回収が不能である」と指摘している。〔Friends of the Earth 2023/8/29ほか〕