■2023年11月号

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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●業界の圧力でカナダのGM食品規制は大幅緩和した

 カナダ保健省は2022年5月、ゲノム編集技術などの新たな遺伝子操作食品に対応するために、届け出に対する審査を大幅に簡素化し、安全性評価は開発者の自主規制に委ねられることになった。その過程で、バイオテクノロジー業界と農薬業界のロビー団体であるクロップライフ・カナダが強い圧力をかけていたことが明らかになった。同ロビー団体は、連邦政府GMO部門と「タイガーチーム」と呼ばれる合同委員会を作り、この規制緩和に取り組んだ。2021年11月には105の団体が規制緩和に反対する書簡を送っている。カナダの市民団体CBAN(Canadian Biotechnology Action Network)によると、カナダ市民の54%がGM食品の安全性に対して疑問を持ち、46%対24%の差で、この規制緩和に反対している。〔CBAN 2023/9/27〕

●ゲノム編集
●鳥インフルに抵抗力を持たせるゲノム編集開発の限界

 鳥インフルエンザに耐性を持つ鶏の開発を進めてきた英国の研究者が、一定の成果を上げたとして科学誌に研究を発表した。この研究はもともとインペリアル・カレッジ・ロンドンとエディンバラ大学ロスリン研究所との共同研究で進められてきた。研究を主導しているのはロスリン研究所のマイク・マクグルーで、ゲノム編集技術を用いて、鳥インフルエンザのウイルスが鶏の細胞に感染した際、自己増殖のために必ず利用するタンパク質の遺伝子を破壊して耐性を獲得させようとした。それが「ANP32A」という遺伝子である。ウイルス量が少ない場合には効果が発揮されたが、ウイルス量が多い場合は効果が弱かったという。原因はANP32Aに似た他の遺伝子が作るタンパク質を利用していたからだという。それを完全に防ぐには、これらの遺伝子をすべて壊さなければならなくなり、鶏に大きな負担を強いることになりかねない。〔Nature Communication 2023/10/14〕

●遺伝子組み換え作物
●米国食品安全センターがGMO表示で上訴

 米国コーネル大学の若き植物育種の研究者メリット・カイフォ・バーチが、GM作物の収量増加を謳う論文への批判論文を「ネイチャー」誌に発表した。それによると、過去20年間にわたり、1つあるいは少数の遺伝子を組み換えた作物の収量増加を報告する論文が発表されているが、これは過剰な評価だと批判した。これらの増収をもたらすという論文は、ほとんどの場合、温室や小規模な圃場での評価であり、実際の圃場での評価にはつながっていない。収量増加の要因の多くは植栽密度に起因するもので、収量増にはさまざまな遺伝子がかかわるため、1つあるいは少数の遺伝子を組み換えただけでは大幅な収量増加にはならない、と指摘した。〔Nature 2023/9/20〕