■2023年12月号

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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
●ブラジルのGM大豆栽培地域で小児白血病が増加

 米国の研究者が、ブラジルのGM大豆栽培地域の川の上流と下流域を調査したところ、下流域で子どもの小児がんが多く発生し、とくに急性リンパ芽球性白血病(ALL)の多いことが判明した。調査したのは米国イリノイ大学の農業・消費者・環境科学部のマリン・スキッドモアらの研究チームで、報告は「米国科学アカデミー」誌に掲載された。この地域ではGM大豆栽培開始以来除草剤ラウンドアップ(主成分グリホサート)の使用量が増え、しかもこの地域の大豆農家は、米国の農家に比べて単位面積当たり2.3倍も使用している。報告では、大豆生産量が10%増加すると、子どもの死亡率が1万人当たり0.40人増加しているという。また10歳未満のALLによる死者226人の内123人が農薬の暴露により死亡したと推定している。〔Proceedings of the National Academy 2023/10/30 vol.120 no.45〕

●国際的な研究でグリホサートの有害性示される

 10月25日イタリアのボローニャで開催した国際的な科学者の会議「21世紀の環境・仕事・健康――世界的危機への戦略と解決策」で、グリホサートを幼少期に暴露すると、白血病を引き起こす確率が高くなることが示された。実験に用いたのはEUで安全だとされている1日の摂取許容量よりも低い濃度の農薬で、暴露により若いラットが白血病を引き起こした。この研究は、世界のグリホサート研究の一環で行われた。会議では多くの機関による、グリホサートそのものやグリホサートを主成分とした除草剤に関する毒性研究が発表された。発がん性、神経毒性、世代を超えた影響、臓器への影響、環境ホルモン作用、出生前の影響などである。すでに査読ずみの論文もあり、順次発表されることになっている。〔Rammazzini Institute 2023/10/25〕

●EU科学者ネットがグリホサートの評価に懸念

 EUでは、グリホサートの再承認の検討が進んでいるが、欧州食品安全局(EFSA)が示した「重大な懸念はない」との評価に対して、欧州の市民や科学者の間で批判が強まっている。このたび欧州科学者ネットワーク(ENSSER)は「グリホサートは科学的に有害であるとする論文は多数発表されており、予防原則に基づき再承認すべきではない」との声明を発表した。〔ENSSER 2023/11/3〕

●インドのBt綿は長期的には損害をもたらした

 インドのBt綿栽培は短期的には増収をもたらしたが、長期的には損害をもたらしていることが明らかになった。カルナタカ州ではこれまで20年間栽培されてきたが、最初数年は収量が増えたものの、その後、害虫の影響が強まり減収に転じた。この傾向は他の州でも見られた。論文の著者であるカリフォルニア大学バークレイ校のアンドリュー・ポール・グティエレスらは、Bt綿は小規模農家が採用している唯一のGMであることから、特にアフリカでの影響が懸念される。この報告を今後のGM作物の在り方をめぐる議論の土台にしてほしいと述べている。〔Frontiers in Plant Science 2023/vol.14〕