■2024年2月号

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バイオジャーナル

欧州議会の環境委員会がNGTs規制せず案を可決

 

欧州委員会が提案した「新ゲノム技術(New Genomic Techniques :NGTs)は規制しない」という提案に対して、環境保護団体などからの反発が強まるなか、1月24日、欧州議会の環境委員会がこの提案を可決した。 可決に先立ち、欧州委員会の提案に対しては次々と批判が出ていた。フランス食品安全機関(ANSES)は、欧州委員会が示した「NGTsのカテゴリー1は規制せず、食品のリスク評価、トレーサビリティ、食品表示を免れる」とした提案に対して、科学的根拠がないとして強く否定した。欧州委員会はNGTsのカテゴリー1において、遺伝子改変で20塩基配列以下を規制からはずしたが、これには科学的根拠がなく、遺伝子操作の影響は、その種類やサイズで決まるものではないとした。またシスジェネシスのように同じ種あるいは近縁種での遺伝子操作もまた、規制を免れる理由にはならないとした。

オーストリア・スイスの生態学会(GfDE)は、NGTsを規制がないまま野放しにすれば、生物多様性に対して深刻な影響をもたらす可能性がある、と警告を発した。同学会は、欧州委員会が現在の複合的な環境危機の原因について理解していないと指摘した。またこれとは別に、さまざまな分野の研究者100名が同様の警告を公開の声明で発表している。

欧州議会での議論の中身に対しても批判が強まっている。環境委員会での議論は「NGTsは特許保護から免れることができる」という主張で進められていた。これに対して農民団体のビア・カンペシーナ欧州などは、それはあり得ない、と強く批判した。また「NGTsは検証できない」という議論に対しても、「事前にゲノム配列に関する情報が提供され、実際の作物や種子などのサンプルが提供されていれば可能である」「現在EUでは、GM作物に対してはその提供が義務付けられている」として、環境保護団体などから批判が出ていた。 批判が強まる一方、EUのロビー団体WePlanetは、NGTsを規制なしとする欧州委員会の提案を支持する35人のノーベル賞受賞者と1000人以上の科学者が署名した公開書簡を公開し、欧州議会に働きかけてきた。このような論争下で、欧州議会の環境委員会は「NGTsは規制せず」を可決したのである。〔FoE Europe 2024/1/24ほか〕