10月21日から12日間の日程で、コロンビアのカリで生物多様性条約第16回締約国会議(CBD-COP16)が、カルタヘナ議定書第11回締約国会議と、名古屋議定書第5回締約国会議とともに開催される。そこでは「自然と共生する世界」の実現に向けた議論が行われることになっている。今回取り組まれる大きなテーマは、@愛知目標に代わる新たな国際目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に対する各国の実施状況のチェック、A先進国と途上国の対立が続く、遺伝資源のデジタル配列情報から得られる利益配分の問題、そしてB合成生物学の扱い、である。
合成生物学に関しては、2014年のCOP12において、科学技術助言補助機関会合(SBSTTA)の提案に基づき、この問題を特別に検討する特別技術専門家グループ(AHTEG)が設立された。しかし、これまでAHTEGでは、遺伝子ドライブ蚊の扱いをめぐる議論が中心で、合成生物学の定義や対象の範囲の検討は進んでこなかった。
今年5月のSBSTTAでは、「合成生物学とは何か」という普遍的な定義がないことが問題視された。バイオテクノロジーを推進し規制をさせまいと動く先進国は、ゲノム編集技術の規制にかかわる合成生物学の議論を先延ばしし、なし崩しに取り下げさせようと動いている。その背景には、遺伝子組み換え生物(GMO)への規制がGM作物や家畜・魚などの開発をストップさせ、結局、頭打ちにさせたことがあげられる。
今回の会議でも、GMOの二の舞を演じさせてはならないとばかりに、ゲノム編集技術や合成生物学を規制させまいとする動きが見られそうだ。日本政府もまた、この考え方に近い。議論の展開次第では、生物多様性条約それ自体の存在意義がなくなってしまう危険性がある。
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