■2026年2月号

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バイオジャーナル

ゲノム編集はエピジェネティクスに影響を及ぼす

 

DNAは細胞内で三次元構造をとっており、その周りをタンパク質などが囲み、どの遺伝子をオンにするか/オフにするかを制御する仕組みがある。これをエピジェネティクスという。ゲノム編集技術ではDNAを切断し、修復を自然にゆだねるが、その際、そのエピジェネティクスがどのような影響を受けるのか、オン/オフの仕組みは変わらず働いているのかはこれまで調べられてこなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学の研究チームが、この問題に着目して、変化が起きているのかどうかを人間の細胞を用いて調べた。その結果、自然修復の際に影響を受けた領域では遺伝子の発現が低下し、この変化が世代を超えて受け継がれていることを発見した。研究者は、この現象を「クロマチン疲労」と名付け、警告を発した。
遺伝子や細胞などを操作した際のエピジェネティクスの変化が問題になったことがある。体細胞クローン動物で、それは「体細胞クローン動物にはなぜ異常が多いか」を調べて明らかになった。DNAには変化も異常も起きていないのに、なぜ異常が多く死亡率も高いのかを調べていったところ、遺伝子をコントロールするエピジェネティクスの異常に突き当たったのである。
エピジェネティクスの異常は、世代を超えて伝えられる。この現象は、ゲノム編集のみならず、ダイオキシン類の影響である枯葉剤を浴びた人たちや、カネミ油症の被害者などにも起きており、グリホサートやネオニコチノイドなどの農薬でも起きることが動物実験で確認されている。
ゲノム編集でもこの現象、研究者が言うところの「クロマチン疲労」が確認されたわけである。研究では人間の細胞を用いたが、植物や動物の細胞でも起きうる。これまで開発されたゲノム編集生物で、一見大きな影響もなくDNAの切断や修復が正常に行われているようでも、エピジェネティクスの領域では大きな問題が発生していることが考えられ、従来のDNA配列の確認だけで生物多様性への影響や食品としての安全性を評価することの無謀さが浮き彫りにされた。
DNAを切断・修復した後に大きな影響が残り、DNAが完全修復されているように見えても遺伝子発現に変化をもたらし、それが世代を超えていくことの重大さを研究者は警告している。〔Science 2025/11/6〕