■2004年10月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え食品
非GM表示の豆腐からGM遺伝子6割も検出

 国民生活センターは8月4日、「遺伝子組み換え大豆不使用」表示の豆腐、6割強からGM遺伝子を検出したと発表した。東京都と神奈川県の大手スーパーで購入した豆腐29銘柄のうち、18銘柄に組み換え大豆が混入していた。現在、混入率の測定に関する定まった規格がないため、何%混入しているかは示されていない。
 2002年6月に厚生労働省が行った調査では、「遺伝子組み換え大豆不使用」表示の豆腐の2割強からGM遺伝子が検出された。今回は6割にまで増えており、確実に混入の割合は高くなっている。国産大豆を100%使用したものからは検出されておらず、輸入大豆を使用している限り、種子・栽培・輸送過程での混入が増加するだろう。

●GM栽培規制ガイドライン
滋賀県「GM栽培規制」指針、発表される

 滋賀県では昨年8月、バイオ作物懇話会による中主町でのGM大豆の栽培が発覚して、刈り取り、すき込みが行われた際に、國松善次知事が「遺伝子組み換え作物の作付けを規制する独自の指針をつくる」と記者会見で表明した。その後、カルタヘナ議定書国内法が施行され、GM栽培規制の方向が明確になってから指針づくりに取りかかる方針に切り替えられ、やっと2004年8月20日に「遺伝子組換え農作物の栽培に関する滋賀県指針」の発表にこぎつけた。
 指針の中身は、一般圃場での栽培に関しては「自粛の要請」などにとどまり、肝心の研究段階での野外実験にいたっては規制の対象外とするなど、当初の知事の意気込みからすると、かなり後退した内容である。


●産業動向
東京海上火災の「バイオ保険」不発


 東京海上火災が1999年12月29日から販売を開始した「バイオテクノロジー保険」の成約が、いまだにゼロであることがわかった。保険は@有用微生物などが事故等で死滅した際の復元費用を補償する「バイオライフ」、A有害生物体が障害や損害をもたらした際に補償する「バイオハザード対策」、B前二者の事故によって生じた利益損失や営業継続費用等を補償する「バイオ利益・営業継続費用」である。対象は企業や医療機関で、個人農家は対象外になっている。東京海上火災は、リスク分析が複雑なことがネックになっていると説明している。 〔日経バイオテク 2004/8/30〕


●BSE
BSE全頭検査中止へ


 9月6日に開かれた食品安全委員会プリオン専門調査会で、前回8月6日に大筋合意されていた報告書「BSE対策について」が合意され、9月9日の本委員会で承認された。これによって全頭検査を中止することが確実になった。しかし、前回の会議で山内一也委員から「英国で発見された最も若いBSE感染牛に関して、17カ月で陽性確認ができ、13カ月で異常プリオンが蓄積された可能性がある」とする欧州委員会の報告が紹介されるなど、月齢設定で科学的根拠が示せないまま、20カ月齢で決着を図ったことは、食品安全委員会の自殺行為ともいえる。


●幹細胞
基本路線「死亡胎児の細胞利用」変わらず


 8月26日、ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会(厚労相諮問機関、厚生科学審議会)が開かれ、前回に引き続き死亡胎児の細胞利用に関する集中審議が行われた。そこでは前号で(2004年9月号)紹介した2つの出来事についても触れられた。中絶胎児を一般ゴミとして捨てていた問題では、そのような病院が提供施設に含まれないよう、指針作成にあたっては一定の条件を設定することが決められた。また、「日本せきずい基金」の調査に関しては、高坂新一委員(国立精神・神経センター神経研究所長)が国内外の論文を整理し、ヒト幹細胞を用いた臨床研究の現状についてまとめることとなった。結局、死亡胎児の細胞利用を認めるという基
本路線は変わらず、指針作成は着々と進められている。


●省庁動向
個人遺伝情報の取扱いで3省合同会合開催


 4月に閣議決定された個人情報の保護に関する基本方針を受け、独自に検討を進めていた厚労、文科、経産の3省が、8月20日に合同会合を開いた。検討内容は、すでに運用されている「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直し、ユネスコの「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」への対応、それらを踏まえての法制化の必要性などが挙げられた。狙いは、“究極の個人情報”といわれる遺伝情報を大量に収集し、ゲノム創薬などの開発を目指す企業の利益につなげていくことである。そのためには、どうしても個人情報の保護が必要になる。