●遺伝子組み換え作物
GMスギ花粉症稲、今年は2か所で栽培
昨年、神奈川県平塚市にあるJA全農営農・技術センターで栽培が計画され、市民の反対によって野外隔離圃場から温室での試験に変更されたGMスギ花粉症稲が、今年は温室に加えて、つくば市にある農業環境技術研究所の隔離圃場でも栽培される。このGMイネは、農業生物資源研究所などが開発した。
隔離圃場で栽培する理由として、温室の試験栽培では当初目標の12s(玄米)を下回る7〜8s程度の収穫しかなく、実験で必要とする40sを大きく下回ったことをあげている。JA技術センターでは2月と秋の2回の温室栽培を計画している。
科学者団体が非食用GM作物の栽培禁止勧告
米国の民間科学者団体「憂慮する科学者同盟」は、2004年12月15日、米農務省に対し、医薬品、プラスチック、工業用エタノールなどの生産を目的として開発が進められているGM作物について、野外栽培禁止を求める勧告を行った。同盟では6人の専門家に分析を依頼していたが、現在の生産・流通システムでは非食用GM作物の食用GM作物への交雑・混入をゼロにすることは困難であり、完全に隔離するなどの新しいシステムを作らない限り交雑・混入を防ぐことは不可能との報告を受け、発表された。
〔CI-foodprogramme 2004/12/17〕
Btトウモロコシをめぐる特許紛争
スイス・シンジェンタ社は、Btトウモロコシの特許権を侵害されたとして、ダウ・アグロサイエンス、マイコジェン・シード、モンサント、パイオニア・ハイブレッドなど、米国の主要GM作物開発企業を訴えた。そのうち、パイオニア・ハイブレッド社とは和解が成立したが、他の企業に関しては裁判となった。連邦地裁の裁判長は、2つの特許権侵害に関してシンジェンタ社の訴えを斥けた。残る1つは陪審の判断を仰ぐことになったが、2004年12月14日、シンジェンタ社の主張は斥けられた。同社はただちに控訴した。 〔Agriculture online 2004/12/15〕
●遺伝子組み換え食品
3割の加工食品にGM作物が混入
農水省は、2004年12月10日、遺伝子組み換え作物や原産地などの加工食品における表示実施状況を発表した。調査は1845商品を対象とし、1つの商品に付き3つのサンプルを購入し、独立行政法人・農林水産消費技術センターが分析した。
遺伝子組み換え作物に関しては、全国で販売している非GM表示の加工食品117を分析した結果、約3割の37品(31.6%)に、GM品種の混入が見られた。
●中米事情
メキシコでGM作物実質容認の法律が可決
メキシコ下院議会は、GM作物栽培規制法案を319対105で承認した。この法案は、2年前に上院を通過しており、下院では野党の抵抗で採決が遅れていた。規制とは名ばかりのGM作物作付けを推進するこの法案成立に向けては、GM作物を売り込もうとする米国やモンサント社などの強い要請があったことから、グリーンピースなどは「モンサント法」と呼んでいた。
メキシコでは、トウモロコシの原生種にGMトウモロコシの遺伝子が広がり、生物多様性への影響が懸念されている。今回の法案可決は、生物多様性よりも多国籍企業の利益を優先させたものだとして、環境保護団体は批判を強めている。 〔ロイター 2004/12/15〕
●EU事情
イタリアのGMOフリーゾーン自治体が1806に
イタリア北部のピードモントがGMOフリー自治体を宣言し、イタリアにおけるGMOフリーゾーン自治体は1806に達したと、2004年12月21日、イタリア農民組合コルディレッティが発表した。
イタリアではワイン生産地400をつないだ「GMフリーランド」が結集し、1999年に「GMフリー自治体」キャンペーンがスタートした。その後、次々と拡大し、すでにイタリア全土の80%近い地域がGMOフリーを宣言している。 〔ANSA-TURIN 2004/12/21〕
●アフリカ事情
ケニアへのGMトウモロコシ導入遅れる
ケニアのGM作物規制が強化されるため、スイス・シンジェンタ基金が中心になって進めてきた、IRMA(Insect Resistant Maize for Africa)プロジェクトの遅れは必至となった。プロジェクトは、アフリカへのBtトウモロコシ(殺虫性トウモロコシ)導入を目的に、5年前からケニアの農業研究機関とメキシコにある国際トウモロコシ・小麦改良センターが共同でナイロビで温室実験を積み重ねてきた。資金は、主にシンジェンタ基金が出資し、米ロックフェラー財団も一部提供している。
今回の規制強化によって、2008年に導入予定だったGMトウモロコシは、2010年以降にずれ込むことが確実となった。 〔SciDev.net 2004/12/14〕
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