■2005年2月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●南米事情
モンサント社、アルゼンチンで新たな戦術

 モンサント社は、アルゼンチンで栽培されている大豆のほとんどが同社のGM大豆種子であることから、輸出業者に対して、大豆1トンあたり売上高の2%を取り立てる計画を通知した。自家採種する農家はモンサント社に種子代金を支払わないため、輸出時に回収する非常手段に打って出たものと思われる。将来的には3%まで増やす予定というが、計画自体まだ固まっていない。〔AgProfessional 2004/12/17〕

●アジア事情
ベトナムにバイオ研究の拠点設立

 ベトナムのホーチミン市に医療、農業などへの寄与を目的にバイオテクノロジー・センターが設立される。センターは、同市人民委員会の同意を得て、キューバ人専門家の支援でつくられ、研究施設は市の実験分析サービス・センター内に設けられる。〔Crop Biotech Net 2005/1/7〕

中国で遺伝子組み換え牛誕生

 中国山東省梁山県にある家畜試験場で、中国農業大学と地元の企業の共同開発による、乳に人間のタンパク質を含むようにさせた遺伝子組み換え牛が1月3日、5日に相次いで2頭誕生した。牛乳にヒトラクトフェリンが含まれることによって、鉄分が増加する。健康食品として販売するのが目的と思われる。 〔共同 2005/1/5〕


●ロシア事情
ロシアで交雑実験行われる


 ロシア科学アカデミーのバイオ工学センターに所属するDmitry Dorokhovは、モンサント社の除草剤耐性大豆はロシアの野生種と交雑を起こす危険性があると指摘した。実験は、GM大豆、野生種、栽培種を用い、圃場と温室で行われた。結論として、交雑はごくまれにしか起きないものの、条件次第ではしばしば起こり得るという2ものだった。 〔Crop Biotech Net 2005/1/7〕


●ゲノム
イネゲノム解析終了


 2004年12月10日、独立行政法人・農業生物資源研究所とSTAFF(社団法人・農林水産先端技術産業振興センター)は、イネゲノムの完全解読を宣言した。イネゲノムは約3億9000万塩基対を持つが、そのうちの約3億7000万塩基対を解読した。残りの部分はセントロメアと呼ばれる染色体が交差する場所で、現在の技術では解読が困難な場所である。ゲノムの完全解読によって、DNA上の塩基の並び順がすべてわかったが、この中にどのような遺伝子があり、それがどのような働きをしているか─これから遺伝子探しが本格化する。


●遺伝子組み換え樹木
中国でGM樹木が植えられていた


 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催された「国連・気候変動に関する国際会議」に対して、排出権取引で二酸化炭素の排出とGM樹木の植林の取引ができるようにしたことに抗議する市民集会が開かれた。
 2004年12月16日の記者会見で、クリス・ラングによって書かれた、地球の友インターナショナルの報告書「GM樹木、森林への最後の脅威」が示され、FAO(食料農業機関)とUNDP(国連開発計画)のプロジェクトによって、中国で150万本におよぶGM樹木が植えられていることが判明した。クリス・ラングは、国連にくり返し情報の公開を求めているが、いつも回答は拒否されてきたと述べている。 〔Vermont Guardian 2004/12/18〕


●オーダーメイド医療
「イレッサ効果なし」の波紋


 国内で400名以上の副作用死亡者を出し訴訟に発展している肺がん治療薬「イレッサ」を製造・販売していたアストラゼネカ社は、2003年7月から2004年8月にかけて世界28カ国の210施設で行った臨床試験で「生存期間の延長に効果はなかった」とする中間結果を公表した。これを受けて米FDA(食品医薬局)は、「市場からイレッサを回収するか、ほかに妥当な規制措置を取るか決める予定」という。  〔共同ほか 2004/12/23〕
 イレッサの「効果」と「副作用」をめぐっては、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長で30万人遺伝子バンク計画のプロジェクトリーダー、中村祐輔がアストラゼネカ社と共同でSNPを用いた副作用予測などについて研究を重ねており、昨年11月にイレッサの副作用と関係する5個のSNPを発見したと発表したばかりだった。臨床研究が行われれば、自身が取締役に名をつらねるベンチャー企業オンコセラピーサイエンスで実用化するとしている。 〔日経バイオテク 2004/11/22〕
 アストラゼネカ社の最終報告は今年上半期になる見通しだが、もし「認可取り消し」となれば、世界に先駆けて認可した厚生労働省の責任は重大である。また講演などでSNPとイレッサの副作用との関係を引き合いにしてオーダーメイド医療の有効性を流布してきた中村祐輔の資質も問われることになろう。