■2006年8月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え動物
米国産牛肉・牛乳摂取で多胎出産増加

 米国の家畜牛に一般的に用いられている、モンサント社製遺伝子組み換え牛成長ホルモン剤の、新たな危険性が明らかになった。
 米国内の、牛肉や牛乳など牛由来食品をよく食べる人の間で、双子などの多胎出産が増えていることがわかったというもの。この研究を「Journal of Reproductive Medicine」5月20日号に発表した、ニューヨーク州ロングアイランド・ユダヤ・メディカルセンターのゲーリー・スタインマンらによると、多胎出産の傾向は、このホルモン剤が使われ始めた1990年頃から見られ、日常、牛由来製品を多く食べている女性は、自然に起きる5倍もの高率で双子を出産しているという。〔GM Weekly Watch 2006/6/15〕
●遺伝子組み換え植物
米国農務省によるGM作物作付け状況

 米農務省は6月30日、GM作物の作付け状況を発表した。大豆は89%(前年87%)、トウモロコシは61%(前年52%)、ワタは83%(前年79%)だった。性質の内訳は、大豆はすべて除草剤耐性。トウモロコシは殺虫性25%、除草剤耐性21%、殺虫性と除草剤耐性を合わせもつもの15%。ワタは殺虫性18%、除草剤耐性26%、殺虫性と除草剤耐性を合わせもつもの39%であった。殺虫性と除草剤耐性を組み合わせたスタック品種の増加が目立つ。〔USDA 2006/6/30〕

ハワイのGMパパイヤの見通しは暗い

 環境保護団体グリーンピースが、ハワイで栽培されている耐病性パパイヤは失敗作であり、今後の見通しも暗いという報告を米国農務省の統計データに基づきまと めた。報告によると、1998年よりGMパパイヤの栽培が始まったが、1995年に2200万ドル(約25億円)を上回っていたハワイ産パパイヤの総価値は、現在は半分以下になってしまったという。1997年には農家は1kg当たり1.23ドルを得ていたが、1998年には0.89ドルに下がってしまった。〔GM Watch 2006/6/26〕

ブラジルでGM大豆畑さらに拡大か

 ブラジルのGM大豆栽培面積は、昨年940万haに達したとされる(ISAAAによる)が、今年はさらにそれを上まわり1260万haに達すると、同国種苗業者が見ていることがわかった。この栽培面積拡大は、熱帯雨林の伐採を伴っており、地球的規模での環境破壊が懸念されている。 〔Sao Paulo-Shimbun 2006/6/19〕

独BASF社が豪州でGM小麦開発へ

 ドイツの農薬メーカーBASF社のGM作物開発部門であるBASFプラント・サイエンス社は6月8日、オーストラリア分子植物育種共同研究センター(MPBCRC)と共同で、GM小麦の開発に取り組むと発表した。開発を目指しているのは、旱魃抵抗性の品種と真菌耐性の品種である。予算規模は2800万豪州ドルで、7年計画。今後GM小麦開発に関しては、モンサント社の除草剤耐性、シンジェンタ社のフザリウム菌病抵抗性とともに、BASF社の動向も注目される。 〔BASF 2006/6/8〕
●欧州事情
EUのバイオテクノロジーに関する意識調査

 欧州委員会は、消費者がバイオテクノロジーをどのように見ているか調査を行い、5月19日に発表した。調査は、EU加盟国各1000人、計2万5000人を対象に昨年行ったもので、同様の調査は1991年から続けられており、今回が6回目である。
 調査結果では、バイオテクノロジーに対して肯定的に評価する人は52%。医療や工業分野ではとくに受け入れられている。しかし食品となると話は別で、58%の人が否定的に評価した。国によって評価は異なり、肯定的評価が否定的評価を上まわった国は、マルタ、チェコ、ポルトガル、スペイン、逆に否定的評価が高かった国は、オーストリア、ギリシャ、ハンガリー、ドイツ、フランスなどであった。 〔Food Navigator 2006/6/21〕
●アジア事情
インドのGM作物承認手続き簡略化へ

 7月3日、インドでGM作物承認手続きが変更された。これまでGM作物の承認に際しては、遺伝子組み換え承認委員会が、1つ1つの品種ごとに審査してきたが、同じ遺伝子が導入されているものに関しては手続きが簡略化されることになった。この変更によって、インドでGM 作物の栽培がすすむ可能性が強まった。〔Hindu Business 06/7/4〕

●北米事情
FDAがGM作物に関する新たな指針策定

 米国食品医薬品局(FDA)は6月21日、GM作物に関する新たな指針の最終案を発表した。開発途上にあるGM作物の交雑・混入事件が相次いだことから、新たな指針では、開発中の段階でもその作物に導入した遺伝子産物の情報提供を求めている。しかし、情報提供は任意であり、提供を求める対象がアレルゲンか有害性をもたらすタンパク質に限定されており、しかも食品・飼料以外を対象外としているため、市民団体などから疑問が持たれている。 〔FDA 2006/6/21〕
●分子農業
フランスで医薬品産生GM作物の栽培試験

 フランス政府が医薬品生産GM作物の野外での栽培試験を認めたことに対して、懸念の声が上がっている。政府が認めたGM作物は、タバコとトウモロコシの2種類である。2003年に米国でプロディジーン社が開発した家畜用ワクチン産生トウモロコシが自生し他の作物に混入する事件が起きたことから、食品や飼料への交雑・混入が危惧されている。 〔GM watch 2006/6/13〕


ドイツで医薬品産生GMジャガイモの栽培試験

 ドイツ連邦消費者保護・食品安全局(BVL)は、同国北東部メークレンブルク地方ロストックにあるロストック大学で行われるGMジャガイモの試験栽培を、人間や環境に対する危険性は認められない、として承認した。栽培されるジャガイモは3種類で、コレラ毒素、ウサギの伝染病ワクチン、工業用洗剤の原料を生産する。〔BVL 2006/6/14〕


ペルーで医薬品産生GMイネの人体実験

 米国のベンチャー企業ベントリア・バイオサイエンス社が、感染症予防や下痢止めの薬をつくり出すGMイネを開発し、米国内で栽培試験を行おうとしている状況に関しては、先月号で伝えたが、このたびGMイネにつくらせた感染症予防効果を持つヒト・ラクトフェリンを、ペルーで乳児に用いて人体実験を行っていることが明らかになった。同社スポークスマンのハーバート・クー
バー・ガルシアによると、リマとトルヒーヨにある公共病院で140人の乳児を対象にしている。
〔GM Weekly Watch 2006/6/15〕
●クローン
クローン競走ラバの結果は?

 先月号で、米国ネバダ州の競馬場で行われた記念レースに、アイダホ大学のゴートン・ウッズらによって、チャンピオン・ラバからクローン技術でつくり出された2頭のラバ「アイダホ・ジェム」と「アイダホ・スター」が出場すると報告したが、レースの結果は、ジェムが3位、スターが7位だった。チャンピオンのクローンからチャンピオンは誕生しなかった。〔BBC NEWS 2006/6/5〕