■2006年10月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●GM作物
欧州で中国産GMイネ発覚

 9月5日、環境保護団体グリーンピースとFoEは、中国で栽培された未承認GMイネが、英国、フランス、ドイツで見つかったと述べた。このイネはBt米で、昨年中国で違法栽培が発覚し、アジア各地で流通していることが確認されていた。フランスとドイツではヌードルから、英国では米粉から検出された。Bt米はアレルギーを引き起こす可能性があることから、欧州の消費者が危険にさらされる、とグリーンピースのスポークスマンは述べている。 〔GM Watch 2006/9/5〕

GM作物栽培は絶滅危惧種保護法に反する


 8月10日、米国連邦地裁は、農務省がハワイ州でのGM医薬品生産作物の栽培試験を認可したのは、絶滅危
惧種保護法に違反するという判決を下した。また、判決では、認可にあたって事前に調査を行わなかったのは、国家環境政策法にも違反すると指摘した。この裁判は、2003年11月、農務省がモンサント社などによる申請に認可を与えたことに対して、環境保護グループなどが訴えたものである。環境保護団体は判決を受け、同州でのGM医薬品生産作物の栽培試験の停止を求める声明を出した。 〔ワシントンポスト 2006/8/16〕

昨年大量処分された未承認“Bt10”、静岡で実験中

 8月10日、静岡県島田市にあるシンジェンタ・ジャパン社の隔離圃場を市民団体が訪れた。現在、同圃場では殺虫性トウモロコシ「Bt10」と除草剤耐性大豆(グリホサートとスルフォニルチオウレア耐性)が作付けされている。Bt10は、昨年、米国で長期にわたった違法栽培が発覚し、EUでは事実上輸入禁止、日本でも大量処分がなされるなどの事件を引き起こした(本誌2005年5〜10月号参照)。この違法状態の解消を目指し、承認を得るために急遽栽培されたようだ。また、除草剤スルフォニルチオウレアは、デュポン社の製品で、耐性雑草ができやすい欠点を持っている。

スギ花粉症緩和イネ収穫

 8月7日、農業生物資源研究所は、今年作付けしたスギ花粉症緩和イネを収穫した。今後、このコメを用いて安全性評価の実験が行われる。現在行われているカニクイザルを用いた実験の結果は、年内に発表される。

冠水耐性イネ開発される

 米カリフォルニア大学デイビス校などの研究チームは、冠水耐性イネを開発した。このイネは、冠水に抵抗力があるイネから見つけだした遺伝子を、アジアで広範に栽培されている品種に導入した。〔Nature2006/8/10〕

来年、徳島県でスギ花粉症緩和イネ栽培へ

 9月6日、日本製紙は、徳島県小松島市にある自社の工場敷地内に温室を作り、スギ花粉症緩和イネの栽培試験を来年1月から開始することを発表した。このイネは、農水省の委託事業として、同社と農業生物資源研究所が組んで開発してきた。日本製紙は、抗生物質耐性遺伝子を用いなくてすむMATベクターの特許をもっており、それを応用した最初のGMイネとして実用化を目指している。 〔農水省 プレスリリース2006/9/6〕


●GM汚染
予想を超えて広がる遺伝子汚染

 米オレゴン州コーヴァリスで行われていたGM芝の調査で、組み換え遺伝子が実験圃場周囲を汚染していることが明らかになった。このGM芝は、モンサント社とスコッツ・ミラクル−グロ社が共同でゴルフ場などで用いるために開発した。調査は、米国連邦環境保護局(EPA)研究所のジェイ・ライクマンらの研究チームが行った。GM芝の圃場から4.8q以内の地域を調査したところ、55地点のうち6地点で遺伝子汚染が見つかった。もっとも離れた地点は3.8qで、汚染は予想以上に広がっていた。野生種が駆逐されるなどの、生態系に及ぼす影響が懸念されている。 〔GM Watch 2006/8/9〕


●モンサント
モンサント社が綿の種子市場独占へ

 モンサント社が、綿の種子企業デルタ&パインランド社を買収した。デルタ&パインランド社は、米国内の綿の種子のシェア50%を占めるなど世界最大の綿の種子開発・販売企業である。米国以外でも中国、インド、ブラジル、メキシコ、トルコ、パキスタンなど、綿の主要生産国の市場のほとんどを押さえており、今後GM綿導入に向けた動きが加速しそうである。
 また、デルタ&パインランド社は米農務省と共同で開発したターミネーター技術の特許を取得しており、これがすべてモンサント社のものになることから、同技術の実用化が早まる可能性も出てきた。〔ニューヨーク・タイムズ 2006/8/16〕