■2006年10月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
カリフォルニア州でGM規制阻止法廃案に

 米カリフォルニア州上院で審議されていた、郡などの地方自治体で進むGMOフリーゾーンに対抗して、地方自治体がGM作物の種子に関する規制を行うことを阻止する法案が、同院通過に失敗した。この法案1056号は、モンサント社がロビー活動を展開し、2人の上院議員フローレスとシャフターが提出したもので、共和党に加えて民主党の一部の議員の賛成も得て、成立が確実視されていた。しかし、この法案が求めている範囲が広く、自治体がGM種子の表示、販売、輸送、使用など、さまざまな規制を行うことを禁止していることから批判が強まり、さらに独バイエル・クロップサイエンス社のLLライス601の違法流通で、同州の米作農家が経済的なダメージを受けたことも重なり、上院を通過できず廃案となった。 〔GM Watch 2006/9/9〕
●欧州事情
ドイツで乳業用GMトウモロコシ引き抜かれる

 環境保護団体グリーンピースは、独ブランデンブルク州ブルナウで作付けされていたGMトウモロコシを、約50uにわたり引き抜いた。このトウモロコシは、ドイツの三大乳業大手Campina社に供給される予定だった。〔GM Watch 2006/8/18〕
●アジア事情
スリランカでGM食品の法的規制来年施行

 スリランカ政府は、来年1月1日から、GM食品の表示と安全審査にかかわる法律を施行する。この法律は、すべてのGM作物の輸入に際して、保健省長官が委員長を務める食品勧告委員会の承認を求めている。また将来的には、加工食品に関しても承認を求めていく。承認されるためには、食品としての安全性が確認され、正しく表示されなければならない。 〔GM Watch 2006/8/22〕
●自治体動向
北海道でGM作物のあり方を考える“市民”委員会が発足

 8月28日、北海道は、第三者(GM推進派や反対派など、直接の利害関係者でない専門家以外の人)がGM作物の在り方を考える「コンセンサス会議」を運営する実行委員会(実行委員長・杉山滋郎北大教授)を発足させた。同会議で合意した内容を“市民”提案としてまとめる予定である。 〔毎日新聞北海道版 2006/8/29〕
●省庁動向
農水省、バイオエタノール生産本格始動

 農水省が、バイオエタノールの生産に向けて本格的に動き始めた。今年3月、政府は「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定し、取り組みを開始してきたが、このたび農水省は北海道など3カ所以上にバイオエタノール製造プラントを設置、そのプラントを軸にしたモデル地域作りを支援し、原料のサトウキビ、小麦、テンサイの栽培計画を本格化させる。 〔日本農業新聞 2006/8/22〕
●ES細胞
ヒトES細胞、薬剤毒性試験研究での使用を承認

 8月30日、ヒトES細胞研究の審査を行う文科省の専門委員会が開かれ、京大再生医科学研究所と国立成育医療センター研究所の使用計画がそれぞれ承認された。使用計画とは、すでに確立されたES細胞株を用いる研究のことである。京大の計画はこれまで数多く認められてきた研究と同様の特定細胞への分化誘導だが、国立成育医療センターの計画はそれらとは異なる薬剤毒性試験法の開発に向けた研究である。ここ最近、動物実験の代替法として人の組織や細胞を用いる研究が普及し始めている。しかし、ものが人だけに入手は困難を極め、現在は外科手術で採取した組織片などを用いている。その問題を一気に解消する切り札としてヒトES細胞が注目されている。強い増殖力を持つヒトES細胞を工場で大量生産し、薬品開発における毒性試験に用いようというのだ。こういった研究は今後ますます活発化していくだろう。
●クローン
ヒト・クローン胚報告書、東京公聴会開かれる

 8月26日、文科省の作業部会がまとめた報告書「人クローン胚の研究目的の作成・利用のあり方について――中間取りまとめ」に対する公聴会が東京・霞が関で開催された。すでに大阪では7月29日に開かれている。同報告書は、ヒト・クローン胚研究を解禁するとしながらも、研究機関の条件や未受精卵(卵子)の入手方法に厳しい規制を設けているため、反対派、推進派双方からの批判にさらされている。公聴会における意見陳述者の構成は、研究解禁を求める難病患者団体、研究材料となる卵子の提供者とされる不妊治療や子宮関連疾患のセルフケアグループ、そして再生医療研究者の三つに分けられていた。意見陳述者は事務局である文科省と作業部会委員が相談して決めたという。この日の最大のサプライズは、国内初のヒトES細胞の樹立に成功し、再生医療研究のトップランナーといわれる京大再生医科学研究所所長・中辻憲 夫の意見だろう。中辻は「将来、クローン胚研究は必要なかった、実用化できなかった、となる可能性は50%以上と判断している」と前置きした上で、「(報告書は)研究を行ってよいですよ、と言いながら実施不可能に近い規制を課すことによって、研究推進についての政策責任を不透明にしている」などと述べた。