■2007年6月号

今月の潮流
News
News2
今月のできごと


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る






























バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
●生物資源研、今年もスギ花粉症緩和米を作付け

 4月27日、農業生物資源研究所は遺伝子組み換え作物の栽培に関する説明会開催をプレスリリースした。それによると、昨年につづき、スギ花粉症緩和米と、その他、除草剤耐性大豆と殺虫性・除草剤耐性トウモロコシを展示栽培することが明らかになった。説明会は住民の反発を懸念してか、5月9日から12日にかけて午前と午後、各回10名前後の小人数で行うとしている。スギ花粉症緩和米に関しては、4月3日に動物を用いた安全性試験の概要が発表され、「異常は確認されなかった」と結論付けた。しかし、食品として認められなかったことから、新薬開発のため新たに動物実験・臨床実験を行う必要が出てきた。なお、田植えは6月に行われる予定である。

表1 今年のGM作物試験栽培計画
●日本モンサント社(茨城県)  除草剤耐性テンサイ
 除草剤耐性大豆
 除草剤耐性+殺虫性トウモロコシ
●(独)林木育種センター(茨城県)  セルロース増量ポプラ
●(独)畜産草地研究所(栃木県)  除草剤耐性+アセト乳酸合成酵素阻害剤耐性トウモロコシ
●(独)農業生物資源研究所(茨城県)  スギ花粉症緩和米
 除草剤耐性大豆
 除草剤耐性+殺虫性トウモロコシ
●農業環境技術研究所(茨城県)  除草剤耐性大豆
●日本製紙(徳島県)  スギ花粉症緩和米(温室内)
●シンジェンタ社中央研究所神座試験センター(静岡県)  試験栽培を予定



●下痢止めGMイネの効果に疑問

 米ベントリア・サイエンス社が開発し、試験栽培を目指している医薬品用GMイネについて、効果が疑わしいとする報告がまとまった。見解を発表したのは米国の民間科学者団体の食品安全センター。GMイネは下痢止めに効果があるとしているが、幼児には安全とはいえず、費用対効果を見た時、下痢の解決策にならないとする検討結果を発表した。イネは、農務省が認可し、カンザス州内で栽培が予定されているが、FDA(食品医薬品局)による医薬品としての認可は受けていない。〔Center for Food Safety 2007/4/24〕

●ゴールデンポテト開発される

 ゴールデンライスにつづきゴールデンポテトが開発された。GM技術によってビタミンAの前駆体であるβ−カロチンを増やしたジャガイモで、イタリア・ローマにあるカサシア研究センターと独フライブルク大学の研究者がバクテリア由来の遺伝子を用い共同開発したもので、「Public Library of Science」に掲載された。〔Nutra Ingredients 2007/4/26〕
●遺伝子組み換え食品
●加工食品の3分の2にGM原料混入または分析不能

 独立行政法人・農林水産消費技術センターは、加工食品がJAS法に基づいて正しく表示されているかどうかを調査し、その結果を3月30日に発表した。GM食品に関しては378商品が分析され、237商品(62.7%)が混入確認(182商品)あるいは分析不能(55商品)という結果だった。そのうち分析不能商品に関しては、製造業者への調査を実施し、最終的に237商品のすべてが混入容認上限である5%以内の混入であったとしている。
●GMOフリー
●欧州で全国土GMOフリーゾーンが3カ国に

 4月19〜20日、ベルギー・ブリュッセルでGMOフリーゾーン欧州会議が開催され、その中で、ギリシャに続いてポーランド、オーストリア全土の自治体がGMOフリーを宣言したことが明らかになった。  最初に全国土がGMOフリーゾーンになったのは、ギリシャである。同国では2004年10月までに54地方政府すべてがGMOフリーを宣言した。次に全国土がGMOフリーゾーンになったのがポーランドで、2006年2月までに16州のすべてがGMOフリーを宣言した。そしてオーストリアが昨年末までに9州すべてでGMOフリーを宣言した。また、EU加盟国ではないが、スイスが2005年11月、国民投票で5年間のGM作物栽培禁止を決定している。
●遺伝子治療
●国内初のパーキンソン病遺伝子治療始まる

 5月7日、国内初となるパーキンソン病に対する遺伝子治療が自治医科大学附属病院で始まった。患者は発病後11年が経った50歳代の男性で、実施するのは同大教授の中野今治らのグループ。パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質ドーパミンの減少により発病し、手足の震えや歩行障害などを引き起こす神経変性疾患である。従来は「L−DOPA」と呼ばれるドーパミンの素となる薬を服用する薬物療法が行われてきた。体内に入った「L−DOPA」は、L−アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)のはたらきによってドーパミンに変換される。  自治医科大の計画は、遺伝子組み換え技術を用いてAADC遺伝子をベクター(運び屋)に組み込み、それを患者に投与して病状を緩和させようというもの。ベクターにはアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いる。すでに米国で6例実施されているが、今のところ重大な副作用は報告されていないという。  しかし、これまで行われてきた遺伝子治療全体で見てみると、安全性において多くの問題があるのも確かだ。AAVとは異なるが、レトロウイルスやアデノウイルスがベクターに用いられた遺伝子治療で、フランスでは副作用で患者が白血病を発症し、米国では死亡例まである。効果についても、完全に病気が治ったという例はないし、多くは従来の治療法との併用のため遺伝子治療そのものの効果は不明である。それでも次々と実施される理由の一つは、遺伝子治療がベクター開発のための事実上の治験だからである。今回の自治医科大でも学内研究という体裁をとってはいるが、ベクターの製造・検定を行うのは米国のバイテク企業Avigen社とGenzyme社で、研究成果はすべてベクター開発のための基礎データとなる。

今月のGMO承認情報
表1 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
イネ スギ花粉ペプチド含有 独立行政法人農業生物資源研究所 7Crp # 10 2007年4月19日
トウモロコシ 高リシン+害虫抵抗性 日本モンサント YL038 × MON810, OECD I: REN-00038-3 × MON-810-6 2007年4月19日
*正式にはパブリックコメントの後に認可される。