■2002年4月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●安全性論争
BTコーンが自然界で蝶に影響


 BTコーンの殺虫毒素が蝶の幼虫に影響するか否か、論争が続いている。米農務省・農業研究局(ARS)は、BTコーンの花粉はオオカバマダラ蝶の幼虫に重大な影響を及ぼさないという〔Agricultural Research 2002/2〕。この報告は、昨年Proceeding of the National Academy of Science USA(2001/9/14)に発表された内容とほぼ同じだ。
 これに対して、カナダ・オンタリオ州ゲルフ大学のダイアン・スタリー・ホーンは、実際の畑で実験を行っている。飛来したBTコーンの花粉の付着したトウワタの葉を食べた野生の蝶の幼虫は、生存率が対照群に比べて60%と低く、体重も42%少なかった。BTコーンの花粉が蝶の幼虫に影響すると結論した。実験に用いたBTコーンは、スイス・シンジェンタ社の「イベント176」である。〔New Scientist 2001/11/1〕

●遺伝子組み換え食品
遺伝子組み換え大豆の経済効果は?

  アイオワ州立大学のマイク・ダフィは、このほど除草剤耐性大豆(GM大豆)と通常の大豆の生産者に及ぼす経済効果を調べた。
 1998年の調査では、GM大豆の費用は少ないが、収量も減少しているため、結果としてGM大豆栽培農家の方が利益が小さかった。今回(2001年)の調査でも、前回同様収量が減少し、種子代が高くなるため、農家にメリットがないことが示された。

表1 GM大豆の経済性(1998年)  単位:ドル/エーカー
  収入 費用 利益
GM大豆 260 115 145
通常の大豆 270 124 146

表2 GM大豆の経済性(2001年)
  収量
(ブッシェル/エーカー)
費用(ドル/エーカー)
種子 除草剤 雑草管理
25.56 19.98 27.14
21.21 26.15 34.80
GM大豆 43.4
通常の大豆 45.0

1ブッシェル=約35.24リットル(米国)、1エーカー=40アール
費用はGMか否かに関連するものだけです。


米英で、科学者グループがGM慎重派に

 これまで、どちらかというと遺伝子組み換え食品を推進してきた科学者団体が、相次いで態度を転換した。
 米国では、全米科学アカデミー専門委員会が、2月21日、遺伝子組み換え作物の作付けや販売時における環境への影響評価が不十分だという見解を発表した。同専門委員会がとくに問題にした点は、中立的立場の審査機関での検討が行われていないことである〔共同通信〕。
 英国では王立協会が、「遺伝子組み換え食品の潜在的な健康への影響に関して厳格に検査されるべきである」という見解を表明した。同協会は今まで、一貫して遺伝子組み換え食品推進の立場を取っていた。報告書では、とくに「ベビーフードや妊産婦、高齢者、慢性疾患を持つ人たちの食品に関しては、厳格な検査が必要である」。また、アレルギー性疾患への懸念を指摘し、遺伝子組み換え食品は、栄養上予想できない有害性をもたらす可能性があり「どのような乳幼児用食品も、市販される前に栄養学の科学顧問委員会の意見を求めるべきだ」と述べている。          〔The Guardian 2002/2/7〕



ことば
*BTコーン
枯草菌の一種が作り出す毒素遺伝子を導入した遺伝子組み換えトウモロコシのこと。蝶や蛾などの幼虫が食べると麻痺し死に至る。