■2008年3月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●GMOフリー
●カナダの準州がGMOフリー政策へ

 カナダの北部にあるユーコン・テリトリー(準州)が、GM作物に対して「否」と宣言する方向で動き始めた。住民と政治家が集まって決めたもので、さらに話し合いは継続される。もし正式に宣言されれば、北米でもっとも大きなGMOフリーゾーンとなる。〔The Tyee 2008/1/25〕

●豪州のスーパー・チェーンがGMOフリーを表明

 オーストラリアのスーパーマーケット・チェーンの「フードランド」が、GMOフリーを維持すると表明した。自社ブランド製品にGM原材料を用いないことを明らかにしたもので、表示を行い、それを保証するとしている。同チェーンは、南オーストラリア、ニューサウスウェールズ、ノーザンテリトリーの3州に109の店舗を展開している。 〔The Age 2008/1/24〕

●遺伝子組み換え作物
●IRRIがGMイネ開発を本格化

 IRRI(国際稲研究所)が、コメの生産力を上げる計画を発表した。この計画はビル・ゲイツ基金を用いて、主に気候変動で予測される生態系の変化や、旱魃・水害・塩害などに耐える品種を作り出すため、GM技術などを用いて稲の品種改良を行う。またIRRIのロバート・ツァイグラー事務局長は、ゴールデンライス(ビタミンAライス)が2011年までには農家の手に渡るだろう、と述べた。IRRI の研究は、本格的にGMイネ開発へとシフトしたようだ。 〔Livemint.com,India 2008/1/30 ほか〕

●モンサント
●モンサント社が開発の重点を新GM大豆に移す

 モンサント社が、開発の重点をトウモロコシから大豆に移行させることになった。今後、中国で増える中産階級と、健康志向を強めている米国人の要求に応えることが重要だと考えたものと思われる。昨年はエタノールブームで史上最高の利益を上げたが、これからは大豆の新品種開発によって利益を得る戦略のようである。〔St.Louis Post-Dispatch 2008/1/27〕

●企業動向
●ドイツ企業と中国研究所がGM作物共同開発へ

 ドイツのバイテク企業BASFプラント・サイエンス社と中国の国立バイオロジカル・サイエンス研究所(北京)が、研究・開発でライセンス契約を結び、協力関係を築くことで合意した。トウモロコシ、大豆、稲などを対象に、新しいGM作物開発を進める。BASFプラント・サイエンス社は、欧州でのGM作物規制が厳しいので、規制の弱いアジアに開発拠点を移して取り組むことになっ
た、と同社CEOは述べている。 〔Food Navigator 2008/1/24〕

●アフリカに飢餓を終わらせるのはGM作物?

 スイス、ダボスで開かれた世界経済フォーラムで、「慢性化した飢餓に対抗する企業連合」は、アフリカでは「緑の革命の準備ができている」と述べた。同企業連合は、ユニリーバ、ナイキ、TNTなどの多国籍企業によって構成されている。バイオ燃料やバイオテクノロジーを推進する企業が、「緑の革命」が主役を演じるだろうと述べ、モンサント社がケニアで推進しているGMトウモロコシを例に上げた。 〔Inter Press Service News Agency 2008/1/19〕

●バイテク企業が飢餓克服の国際農業計画から撤退

 「開発のための農業科学・技術の国際的評価(The International Assessment of gricultural Science and Technology for Development)」では、昨年インドネシアで開かれた、気候変動に関する政府間パネルの際に、増大する人口をどのように養っていくかについての計画を発表した。モンサント、シンジェンタ、BASFなどバイテク企業は、この計画がGM作物に否定的で、途上国に問題を引き起こす可能性があるとし、同計画からの撤退を打ち出した。 〔The Guardian 2008/1/23〕

●生殖医療
●学術会議報告案、代理出産「限定的許容」の方針

 代理出産の是非を議論している日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」は報告書案で「限定的許容」との方針を打ち出し、1月31日には一般市民に向けた公開シンポジウムを開催した。代理出産については、倫理的・社会的側面や生物学的秩序の面などから問題があるとして、原則禁止で法制化の必要性を強く訴えている。しかし、報告書案では、「国による厳重な管理の下に、厳格な要件を付けて試行的に代理懐胎を実施し、国家的なモニタリングを行いつつ、(中略)詳細に調査研究」するという「試行的実施」は、例外的に認めるとしている。
 委員長は、これはあくまでも案と言う。現段階では「試行に対して私は抵抗感がある。何のためにモニタリングをやるのかエンドポイントが見えない」(東京大学先端科学技術研究センター特任教授・米本昌平)や「試行というのはあまりにも不適切。生まれてくる子どもに対して失礼だと思う」(慶應大学医学部教授・吉村泰典)などの反対意見があり、まだ議論は混沌としている。当初の予定では検討期限は1月末となっていたが、結局、報告書はまとまらず、3月末まで延長することが決まった。

●iPS 細胞
●文科省、ヒトiPS細胞からの生殖細胞作成を禁止

 2月1日、文科省の生命倫理・安全部会(科学技術・学術審議会)が開かれ、昨年11月に京都大学の山中伸弥らの研究チームなどが樹立に成功した人の人工多能性細胞(induced pluripotent stem cell = iPS 細胞)からの生殖細胞の作成について、当面は禁止とする方針を打ち出した。iPS 細胞は胚性幹細胞(embryonic stem cell = ES 細胞)とほぼ同じ性質を持つが、今のところそれを規制する指針などは一切存在しない。現在、ヒトES細胞からの生殖細胞の作成は指針によって禁止されている。
 ヒトiPS細胞は、胚を壊して作成されるES細胞と違って、分化して身体の一部となった体細胞から作り出されるという理由から、基礎研究については自由作成していいとの方針がすでに出されている。しかし、次世代に受け継がれる精子や卵子などを作り出すことには倫理的な問題があるとして、下部組織の専門委員会で検討が続けられていた。専門委員会からの報告を受け、部会ではヒトiPS細胞について、ES細胞指針に準じて次の4つの行為を禁止することを正式に決めた。@生殖細胞の作成、Aヒト胚への導入、B胎児への導入、CヒトiPS細胞を用いて作った胚からの個体作成。