あだち充04
でも、手かげんはさせない。――絶対に。

      ――あだち充『KATSU』 B巻――
        (「週刊少年サンデー」'02・4/5合併号〜'02・14号,第19〜28回まで)

 『KATSU』 B巻である。“活樹”(少年の名だ)は、否応なくボクシングにのめりこんでいっている。(作者の思惑通りに……(^^ゞ)
 今回の話に入る前に、前回の訂正から。<どうやら、実の父は別にいたらしい。……墓参り云々の伏線、あれは、今の父がリング上で死に至らしめたボクサーの子供を自分の子として育ててきた、という事らしい。>云々は、A巻ではなく、このB巻での話。(雑誌でちょこちょこ続きを読んでいたので…。)
 では、否応なくボクシングにのめりこんでいっている(いや、のめり込まされている)“活樹”の話。父親の会社の社長から預かった大型犬の散歩を朝晩させられて、否応なく足腰を鍛えられ、突然父親の押しかけ弟子になった“香月”(少女の名だ)のスパーリングパートナーを否応なくする事になり……(ま、これはこれで、“活樹”も楽しんではいるのだが)、時に、自らの内なるファイティングスピリッツを無意識に開花させたりしている。見事に誰かの策略通り、ボクシングへと突き進んでいる“活樹”だ。誰かのと書いたが、今の処、作者の策略通り、と言うしかない。父親も含めて、今の処、登場人物は誰もそれを望んではいない(^^ゞ 。(何だかなァ……(^^ゞ)
 処で、本巻では“香月”(女の子の方だ)が、何故ボクシングにのめり込み、また何故ボクシングが嫌いになったかが語られる。<「あいつがホレたのは男同士の殴り合いなんだよ。危険で、野蛮で、――そして、悲しいくらい純粋な殴り合いなんだよ。どんなにホレても受け入れてもらえないのなら、あきらめるしかねえじゃねえか。てっとり早くあきらめるなら、嫌いになっちまうのが一番、――だろ?」>“香月”の親父さんの台詞だ。幼い頃から父親の間近でボクシングを見続けて育った少女――“香月”。この設定は魅力的だ。
 そして、“活樹”の父親に「パンチ力でハンデのある女でも、男に負けないボクシングを教えてください!」(※筆者注:下線の部分は、作品上では傍点である。)こう言ってコーチを依頼する“香月”の眼がいい。もうひとつ、急に練習をする事になった原因の少年との試合を「女が男に負けたって恥じゃないもんね。負けたって構わないのよ、本当に――」と言いつつも、「――でも、手かげんはさせない。――絶対に。」と言う“香月”の眼がいい。

 今回は、取り敢えずこの辺りで……。あとひとつだけ。本巻でようやく女の子のライバルらしき少女が現れる。ラブコメは、こうじゃなくては。ただ、今の処、少し、いや大分、役不足だが!

(2002.05.20)
テキスト:少年サンデーコミックス;2002.06.15 初版発行;本体390円


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