あだち充05
ガンバレよ、男の子。

      ――あだち充『KATSU』 C巻――
        (「週刊少年サンデー」'02・16号〜24号,26号,27号,第29〜38回まで)

 さて、『KATSU』 C巻である。また、今回の話に入る前に前回の訂正から。<本巻(B巻)でようやく女の子のライバルらしき少女が現れる。ラヴコメは、こうじゃなくては。ただ、今の処、少し、いや大分、役不足だが!>と書いたが、役不足どころか、単なる狂言回しだったね、“半沢みのり”君は。残念だが! やはり、女の子のライバルが欲しいけれど――何故って、“香月”(少女の名だ)がヤキモチを焼く姿を見たいじゃないかっ! (尤も、“天然”が入っている“香月”には、“ヤキモチ”は無縁かも? )それに、“香月”の相手になれるとしたら、“本阿弥さやかお嬢さま”位のインパクトがないと、無理だろうがねっ!

 で、C巻では、いよいよ“香月”と“紀本高道”君(“活樹”のライバルだ)との試合が近づき、臨時コーチの“活樹”の父が、何と“活樹”を仮想“紀本高道”に仕立て上げ、スパーリングをする事に。
 好きな女の子を本気で殴れるか! この設問は魅力的だ!
 で、そのスパーリングの最中に、もう一方の“紀本高道”の“香月”を本気で殴ろうとする想いが、挿入される。この辺りの場面展開と構成は、流石あだち充は上手いっ! と、唸らされる。
 ロードワークの途中で、“紀本”は“香月”の母に呼び止められる。
   「本気なの? 香月と試合するって…」
   「とめないでください。香月のためなんです。(中略)香月はふつうの女の子に戻りたいんですよ。待ってるんですよ、……彼女は。自分を倒してくれる男を、ボクシングをあきらめさせてくれる男を――」
 好きな女の子を本気で殴れるか! 幼馴染の少年は、ずっと、少女を見続けてきた故に、本気で殴ろうと決意する。一方、スパーリング会場では、本気モードに入ってしまった“香月”のパンチを受け続け、少年は、立ったまま気絶して、少女の肩に倒れ込む。
 少女は、少年の身体を受けとめて、そっとその背に腕を回し、「ありがと…」耳元で囁くのだ。

 さて、“幼馴染の少年”の想いは届くのか……。まだ、最終結果が発表された訳では無い。「ガンバレよ、男の子。」
 それにしても、“香月”のお母さんは、イカシてる。“紀本”君が突然の《放棄試合》宣言に、慌てて“香月”の家を訪ねた時の事。
   「香月呼んでもらえますか?」
   「どうぞ、2階にいるわよ。」
   「いいんですか入って?」
   「何が?」
   「おばさんの嫌いなボクサーですよ。」
   「一丁前に、ただのクラブ活動でしょ。」
この母故の、あの“天然”娘か!

 ガンバレよ、男の子っ!

(2002.08.14)
テキスト:少年サンデーコミックス;2002.09.15 初版発行;本体390円

おまけ


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