あだち充06
運命なのよ。二人が出逢ったのは――

      ――あだち充『KATSU』 D巻――
        (「週刊少年サンデー」'02・28号〜33号,38号〜41号,第39〜48回まで)

 さて、『KATSU』 D巻である。物語は漸く佳境に入ってきた。
 @巻のレビューの最後に<第1話の終わり頃、「墓参りの帰りに」と言う父親に、少年は「おふくろの命日はまだ先だろ?」と訊くと、父親が「あ、まあ。それはそれ、これはこれ……」と答える。――この伏線、後になって忘れないといいのだが。>と書いたが、漸くその辺りの話が語られ始める。こういう、ジグソーパズルが1枚ずつ嵌め込まれていくような展開は、読んでいて楽しい。(……尤も、あだち充の事だから、こういう緊張感は、そう長続きしないだろうがね(^^ゞ。)
 処で、今回、この先の展開において、とても興味深い疑問が湧いた。《自分が、今の父親がリングで死に至らしめた男の忘れ形見だ》、という事実を、“活樹”(主人公?の名だ)は、何時、知るのだろうか
 “活樹”の祖母は知らないようだ。鈍チンの“香月”(少女の名だ)が気付く訳はないし……(鈍チンなのは、恋に関してだけ、という説もあるが)。“佐久良”君は、いずれ気付くだろうな。問題は、本人がそれを知って悩むような、そういうストーリー展開を、あだち充が選ぶか? という事である。――それは、あだち充の持ち味ではないような気もするのだ。暫く、この意味からも楽しめそうである。

 さて、その鈍チン“香月”の恋の行方((^^ゞ)だが、相変わらずだねぇ……(^^ゞ。「運命なのよ。二人が出逢ったのは――」――普通、これは、恋の告白の台詞だ。どんな場面で 鈍チン“香月” が使ったかは、どうぞコミックスのD巻を((^^ゞ)。
 それにしても、“本阿弥さやかお嬢さま”は、何時現れるのか?(前項参照(^^ゞ)。役不足の“半沢みのり”君が、頻りとチョッカイをかけ、小学校五年の時に“活樹”から(遊びで=“活樹”談)ラブレターを貰ったと、“香月”に告げた時も、
   「どう思う?」(“活樹”)
   「何が?」(“香月”)
   「小学校の時のラブレターなんて、とっくに有効期限切れだよなァ。」
   「さあ…どうでもいいわよ、あなたがどこのだれとつき合おうと興味ないし。」
これだもんなァ……。
 またある時。“活樹”の事を「はじめて他人のボクシングで夢が見れた」と言う“香月”に、
   「夢は見れないか? ――おれのボクシングじゃ
喧嘩ファイトの後でそう言う“紀本高道”君(“活樹”のライバルだ)の想いは、鈍チン“香月”に、何時になったら届くのだろうか?(合掌)
 出でよ!“本阿弥さやかお嬢さま”!(^^ゞ 男のライバルはまたひとり現れたようなのだが……。

 今巻は、かなりハードな(あだち充にしては)展開だった。そんな中で、お気にのカットをば。134頁中段から下段への“香月”の《寄り目》は必見。ついでにもうひとつ。84頁の上段と下段のコマ。写真を手に取ると、その写真が斜めになっている。――う〜ん、デジタルって素晴らしい!((^^ゞ 以前は、もろコピーしたな、っていうのが印刷に出たものだが……)
 ついでに(?)今巻の名台詞。
 「残念ながらプロボクシングに100%の安全はない。不幸な事故はゼロにはならない。――だがそれは、ボクシングだけに限らない。人生も同じだ。
 以下次号((^^ゞ)。

(2002.11.19)
テキスト:少年サンデーコミックス;2002.12.15 初版発行;本体390円

 《追加です!》 先の134頁中段の“香月”だが……おいおい、あだっちゃん、それは野球選手の握りだよっ! 普通の女の子(あっ!、あくまで野球に関しては、の)は、そんな握りでボールは投げないっ! 
 もうひとつ。第43話の扉はまあサービスとしても(それ程サービスでもない?)、第45話の扉の“香月”のポーズは、何の意味が???(11.20)


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