あだち充09
わたしの夢なんだから、里山活樹は

      ――あだち充『KATSU』 G巻――
        (「週刊少年サンデー」'03・12号〜21号,第69〜78回まで)

 何だかなぁ〜っ!
 あだっちゃん、もう少し読者を惑わす展開をしてくれいっ! …まんまじゃないかっ!

 さて、気を取りなおして『KATSU』 G巻である。前巻のラストのアザトイ伏線の ままの展開で“香月”とふたりきりで(しかも停電した暗闇で)一夜を明かす事となった“活樹”だった が。(笑)
 けれど、暗闇にも意外な効用があって……。

 “香月”の部屋――。懐中電灯の明かりの中へ落ちてきたのは“香月”の小学生の頃のラクガキ帳。 頁を捲れば、そこには“香月”の夢が詰っていて……。
   「できそうな気がしてたのよ、この頃は…
   だれよりも強くなれると……信じてた。」
   「裏表紙がこげてるけど。」
“活樹”の問いに、懐中電灯の明かりを消して“香月”は答える。
   「一度燃やそうとしたのよ、中学生になった時…」
   「……これ、もらっていいか?」
   「やめてよ! 恥ずかしい、そんなモン。」
   「見せてやるから、――おれが。
   水谷の夢の続きを――


 暗闇でなければ、“活樹”の口にできる台詞じゃないね!(間違い無く!)
 そして、次の頁(P.38)の2コマ目。暗闇の中、返事の変わりに唇を噛み締める“香月”。
 中々、感動的なシーンでした。(パチパチパチ(^^ゞ)
 そして、いつのまにか、“活樹”の膝で眠ってしまった“香月”。「…里山ァ。行け――。負けるなァ ……」“香月”の寝言に、拳を握り締め、〈今なら…たとえ相手が世界チャンピオンでも、逃げ出さない 自信があった。〉と、心に誓う“活樹”だったが――

 ――だったが。
 まあ、あだっちゃんのシリアスがそう長く続く訳も無く。(続いたらラヴコメじゃないしぃ(^^ゞ)
 そんなこんなで、今巻は、結構面白かった。◎。
 ただ、難を言えば、“活樹”のライバルは次々に現れる が、鈍チン“香月”の恋のライバルはまだかいね!

 最後に、今巻の名台詞。
 「変わったな、おまえ……」
 「気がついただけですよ。ボクシングが殴り合いだってことに――」
勿論、“活樹”の台詞ではない。
 以下次巻((^^ゞ)。

 そう言えば、余談だが、女の子ってのは「おまえ」と呼ばれる事に神経質なんだよね!(P.19)  昔、会社の部下の女の子に、「父親にも“おまえ”なんて呼ばれた事ありません」と怒られたっけ(笑)。 別にいいけどね。

 余談ついでにもうひとつ。今回の“活樹”と“香月”の親父さんの関係(というかやり取り)って、 『ラフ』のそれと、何だか似ている。女の子の部屋に偶然上がり込んだり…もそうだったし……。 まあ、いっか!

(2003.07.18)
テキスト:少年サンデーコミックス;2003.08.15 初版発行;本体390円


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