あだち充10
――だったら三振でけっこう。

      ――あだち充『KATSU』 H巻――
        (「週刊少年サンデー」'03・24号〜33号,第79〜88回まで)

 あだち充は、変わったのか?

 “紀本高道”があっさりとライバルの座を譲った“怪物――岬新一”は、今まであだち充の描いてきた ライバル像とは、明らかに異なっている。
 「怪物…か。たいていの場合――物語の中の怪物ってのは、退治されるために出てくるもんなんだけど なァ。」――いみじくも“活樹の父”の台詞に代弁されるようなキャラクターである(今の処)。
 これまであだち充が描いてきたライバル像は、“紀本高道”のような、言わば“良い子”だった。 それがベストの選択かどうかは、取り敢えず置いておいて、今までのような“良い子”のライバルと、 恋もスポーツも競い合い高め合ってきたのが、あだち充流の“正統的ラヴ・コメ”だった。 (“ラヴ・コメ”や、“あだち充”を嫌いな人は、多分、こういう処が嫌いなのだろう…けれど。)

 それが、ぼくたちには、心地良かった。
 頁を開けば、そこは、いつものグランドだった。
 それは、あたかも、少年の日の夏の午後のように、永遠に終わりの来ない原っぱだと思っていた。

 例え“目付きの悪い少年”(鴉をエサで呼び集めボクシングの練習台にする、あの少年だ)が登場しても、 所詮ヤラレキャラだと思っていれば良かった。恋も、ボクシングも、あくまでライバルは“紀本高道”だ った――筈なのだ。
 その“紀本高道”が、あっさりとライバルの座を降りてしまった。
 確かに、ボクシングというスポーツを、(ラヴ・コメといえど)リアリティーのあるものにする為には、 あまり“甘ちゃん”なストーリーでは読者も納得しないかも知れない。(けれど、それなら、敢えて言って おくが、81頁のような、止まった絵を描かないで欲しい。寸止めしたのかと思っちゃったよ。顔も ひしゃげていないし、グラブにもスピード感がない。次の頁で、あっ、勝負が決まったパンチだったの …てなモンだ。(^^ゞ)

 そんなこんなで、『KATSU』 H巻である。
 ぼく的には、イマイチ楽しめなかった。
 鈍チン“香月”も、グレードアップ(笑)してるしぃ!

 余談だが、“茶紀ちゃん”――男だなぁ(164〜166頁)。あっ、女の子か。
 余談ついでに、110頁の“香月”に振られたサッカー部のキャプテン。ラヴレターの名前が「キャプテン 羽異」?――ああ、「翼」か。いいのか、あだち充(笑)。
 それでは、以下次巻。

(2003.10.20)
テキスト:少年サンデーコミックス;2003.11.15 初版発行;本体390円


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