あだち充は、変わったのか?
“紀本高道”があっさりとライバルの座を譲った“怪物――岬新一”は、今まであだち充の描いてきた
ライバル像とは、明らかに異なっている。
「怪物…か。たいていの場合――物語の中の怪物ってのは、退治されるために出てくるもんなんだけど
なァ。」――いみじくも“活樹の父”の台詞に代弁されるようなキャラクターである(今の処)。
これまであだち充が描いてきたライバル像は、“紀本高道”のような、言わば“良い子”だった。
それがベストの選択かどうかは、取り敢えず置いておいて、今までのような“良い子”のライバルと、
恋もスポーツも競い合い高め合ってきたのが、あだち充流の“正統的ラヴ・コメ”だった。
(“ラヴ・コメ”や、“あだち充”を嫌いな人は、多分、こういう処が嫌いなのだろう…けれど。)
それが、ぼくたちには、心地良かった。
頁を開けば、そこは、いつものグランドだった。
それは、あたかも、少年の日の夏の午後のように、永遠に終わりの来ない原っぱだと思っていた。
例え“目付きの悪い少年”(鴉をエサで呼び集めボクシングの練習台にする、あの少年だ)が登場しても、
所詮ヤラレキャラだと思っていれば良かった。恋も、ボクシングも、あくまでライバルは“紀本高道”だ
った――筈なのだ。
その“紀本高道”が、あっさりとライバルの座を降りてしまった。
確かに、ボクシングというスポーツを、(ラヴ・コメといえど)リアリティーのあるものにする為には、
あまり“甘ちゃん”なストーリーでは読者も納得しないかも知れない。(けれど、それなら、敢えて言って
おくが、81頁のような、止まった絵を描かないで欲しい。寸止めしたのかと思っちゃったよ。顔も
ひしゃげていないし、グラブにもスピード感がない。次の頁で、あっ、勝負が決まったパンチだったの
…てなモンだ。(^^ゞ)
そんなこんなで、『KATSU!』 H巻である。
ぼく的には、イマイチ楽しめなかった。
鈍チン“香月”も、グレードアップ(笑)してるしぃ!
余談だが、“茶紀ちゃん”――男だなぁ(164〜166頁)。あっ、女の子か。
余談ついでに、110頁の“香月”に振られたサッカー部のキャプテン。ラヴレターの名前が「キャプテン
羽異」?――ああ、「翼」か。いいのか、あだち充(笑)。
それでは、以下次巻。
(2003.10.20)
テキスト:少年サンデーコミックス;2003.11.15 初版発行;本体390円