あだち充18
ああ。夕方って言ってた。

      ――あだち充『クロス・ゲーム』@巻――
        (「週刊少年サンデー」'05年22・23合併号〜32号,第1〜10回まで)

 う、嘘だろぉ〜!

 正直に言って驚きというよりも、それは、ショックに近かった!

 ぼくはいつも、コミックスを買ってくると、その日の内に大体3回くらい読み返す。3回目は、お気に入りのシーンや台詞を、拾いながら読んだりする。
 けれども、今回は、どうしても第9話以降を再び開く事が出来なかった。
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警告! まだ本書をお読みでない方は、@巻のラストまでお読みの上で、以下をご覧下さい。】
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 何故? という感情より、繰り返すが、それは、ショックに近かった! 

 考えてみれば、あだち充が、小学五年生から描き始めた事に違和感もあったのだ。
 彼のホームグラウンドは高校生であり、それは、デビュー当時から変わらない。(『虹色とうがらし』は時代劇だが、主人公は15歳=高校一年生だ。)勿論、回想シーンで小学校時代を描く事はあったけれども。まさか、小学五年生から高校に入るまでを描き続ける筈は無い。
 更に言うなら、あだち充が《小学五年生を主人公にして》描く事など考えられない。いや、断言しても良いが、有り得ない!
 何故って、あだち充の本質は《ラブコメ》以外の何物でも無いのだから。(小学五年生の《ラブコメ》って、無いでしょう(^^ゞ)

 違和感といえば、初見から一日経った現在、よくよく考えてみると、《ヒロイン》の“月島若葉(小五)”(あくまで@巻での暫定的な《ヒロイン》だが(^^ゞ)は、あだち充の《ヒロイン》としては、いい娘(子?)過ぎるのだ。
 その上、主人公へのベタ甘(笑)。
 過去の《ヒロイン》を思い出して貰いたい。『KATSU』の“香月”、『H2(エイチツー)』の“ひかり”(“春華”はあくまでサブヒロイン)、『ラフ』の“亜美”、『虹色とうがらし』の“菜種”、『スローステップ』の“美夏”(“麻里亜”は…って(笑))、『みゆき』の“若松みゆき”(“鹿島みゆき”は勿論サブヒロイン)、『陽あたり良好!』の“かすみ”、そして『タッチ』の“南”も。更に加えるなら『じんべえ』の“美久”も。
 どの娘も、(本心はともかく)主人公にベタ甘態度は見せはしない。更に言うなら、“亜美”・“菜種”・“かすみ”は主人公に(“かすみ”の場合は男主人公に)対して、初めは険悪ですらある。
 『ナイン』の“百合ちゃん(笑)”だけは、少しベタ甘かな?(笑) まあ、デビュー長編だし……。(それと、“若松みゆき”は二人きりの時は少しベタ甘かも……(^^ゞ あと、『いつも美空』の“美空”は、あまり《ラブコメヒロイン》としての印象が無い。)

 で、いい娘(子?)過ぎる“月島若葉(小五)”は、あだちまんがのヒロインたり得ていなかったのか? (まあ、小五で《ラブコメのヒロイン》と言われても困るのだが(^^ゞ ……つまり、成長してから、主人公の心を掴む《ヒロイン》に成り得たのか、という意味であるが。)
 結局の処、その答えは出ずに終わった。(そろそろネタばれに入りますが、本書は読み終わりましたか(^^ゞ。

 正直な処、第9話の冒頭から、嫌な予感はあったのだ。
 「バッティングセンターも喫茶店も閉まってた?」「ああ。定休日は昨日だったはずなんだけど。」「おかしいわね。昼間、前を通った時にはやってたわよ。」−−「若葉ちゃんの帰りは明日?」「ああ。夕方って言ってた。」−−ここまで読んで、頁を捲れなくなってしまった。
 やめてくれよぉ〜!
 “和也”の死はF巻だった。“ひかりの母”の死も突然ではあっても物語の半ばを過ぎていた。けれど、まだ@巻だよぉー!
 祈るような気持ちで頁を繰ったが、予想通りの答えだった。

 勿論、“月島若葉(小五)”に《ヒロイン》としての感情移入は、まだ、出来てはいない。けれど、いい娘(子?)過ぎる小五の少女に好感を抱き始めていたのは、確かだった。二十歳(はたち)のプレゼントの予定に婚約指輪と書く小五の少女に、ぼくは、微笑ましさを覚え始めていたのだが……。

 あだち充は、主人公に、小学五年生の夏という季節の中で、《自分に想いを寄せる同級生の(しかも可愛い)幼馴染の突然の死》という十字架を、何故、背負わせたのだろう。

 第二部は、雑誌では読んでいないので、外すと恥ずかしいが、多分主人公が高校生になった辺りからだろう。
 「第一部【若葉の季節】」とある。ならば、第二部は【青葉の季節】か? ――“月島家 三女 青葉(当時小四)”……無い無い(笑)。(参考文献(笑):「青葉はどんな男の子が好きなの?」「160キロのストレートが投げられる男。」)
 多分、主人公(は“光(コウ)”だと思うが)は、野球に打ち込んでいるだろう。いずれ、「160キロのストレートが投げられる男」になるだろう。けれど、“月島家 三女 青葉”が《ヒロイン》になる事は……無い無い(笑)。“光(コウ)”に打たれそうになってデットボール(ビーンボールとも言う)で逃げて「ペコ」と頭を下げる顔(P.113、P.118)は《ヒロイン》の顔では無い。
 かといって、“月島家 長女 一葉(当時高一)”も“月島家 四女 紅葉(当時幼稚園)”も、《ヒロイン顔》では(笑)無いしぃ……。

 『みゆき』、『スローステップ』、『じんべえ』以外は全て《ヒロイン》は同級生(同い年)である。これが、あだち充の《ラブコメ》の基本だと考えると、正直、判らなくなる。

 また、何故、《四つ葉のクローバー》の一枚が欠けたのか? それとも、第二部、第三部、第四部と、残りの三つの葉が、それぞれの季節で、主人公に関わってくるのだろうか?

 『KATSU』@巻のレヴューでぼくは、あだち作品には<“ボーイ・ミーツ・ガール” で始まりながら、簡単に結ばれる訳にはいかない“険しい山”が>常に用意されている、と書いた(詳しくは当該頁をご覧下さい)。今回の“険しい山”は、何なのだろう?
 そして、《ヒロイン》は誰なのか?

 次巻が出るまで、とても待てそうに無い。
     * * * * *
 余談だが、「少年サンデーコミックス」の発売日は毎月18日(今月は日曜の為16日)が基本である。それを映画「タッチ」の公開(9/10)に合わせて、本書は9/2に発売された。

(2005.09.03)
テキスト:少年サンデーコミックス;2005.10.15 初版発行(9/2);本体390円;ISBN4-09-127351-3


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