単行本はまだ出ていない(12月辺りか?)が、「週刊少年サンデー」51号から「第三部 高校生篇」が始まるようなので、取り敢えず、A巻の総括をしておく。
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ひと気の無い林でキャッチャーズポジションを取る“赤石”に、“コウ”が不思議そうな目を向ける。
「どした?」“赤石”が問い掛ける。
「あ、いや。何かおまえがうれしそうにしてるからサ」と“コウ”。
「月島が喜んでると思ってな。」
「青葉が何か言ったのか?」
「ちがうよ。月島…若葉だ。」
事故の前日、キャンプに出かける“若葉”が“赤石”に、前夜の夢で“コウ”と“赤石”が甲子園でバッテリーを組んでいたという話をしたのだと言う。
「もちろん夢の主役がおれでない事はわかっていたけど――な。おれは月島の夢の中に出られた事だけで満足だった。」
「まさかおまえ…それで中学に入ってからキャッチャーを?」
「悪いか。」“赤石”は即答した。
“コウ”にしても、ピッチングのトレーニングを日課としていたのは、動機は“青葉”との草野球で負けた悔しさだが、続けていたのは“若葉”との約束だったからだ。「――なるほど。若葉ちゃんとの約束…か。道理であきっぽいおまえが続けてるわけだ。」(“コウ”の父親談)。
こうして、あの事故から四年、いい娘(子?)過ぎる“月島若葉(当時小五)”が二人の少年を結び付ける。
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そして物語は巡り――
小学生時代が「第一部 若葉の季節」、中学生時代が「第二部 青葉の季節(仮題)」(単行本が出ないと確定ではないが、まず間違いあるまい)と来て、さて、高校生時代「第三部」の章題は……。
そして、いい娘(子?)過ぎる“月島若葉(当時小五)”から、おっ茶目ッ!“青葉ちゃん”と引き継がれた《ヒロインの座》は誰に……(笑)。
“紅葉”の訳は……無いだろうし、“一葉”って言うのも……何だか。
となれば、一枚欠けた《四つ葉のクローバー》を補う、新たな“○葉”の登場か? それも、同級生で……と言うのが自然な(ありがちな(笑))流れか?
もしかして、“双葉”とかいう“若葉”にうりふたつな同級生が……って。それは無いか。
以前から、ぼくは、このあだち充のレビューで繰り返し語ってきたが、「大っ嫌い!」な相手を好きになるには、相手の日常を見続ける事に尽きる。その意味からも、「第二部 青葉の季節(仮題)」の《ヒロイン》は、紛れも無くおっ茶目ッ!“青葉ちゃん”だったし、“コウ”の事を認め始めている事も確かである。
例えば、毎日の通常業務(笑)だったバッティングセンターへのボールの配達のついでに、打撃センスを磨いていた事とか。あるいは、走る電車の中から一瞬見えた強盗の現場に気付くような、優れたスポーツ選手並みの動体視力とか。それとも、お節介な優しさと、意外な料理の才能(笑)…とか。
とは言え、これも先に書いた事だが、『クロス・ゲーム』の《ヒロイン》が“青葉”だとすると、今回の超えねば成らぬ“険しい山”*(注:詳しくはここをご覧下さい)は『タッチ』と同じ山になってしまう。あだち充が同じ山に登るとも思えないし、……さて、さて。
それにしても、「第一部 若葉の季節」のラストがあまりに衝撃的だったせいで、この「第二部 青葉の季節(仮題)」は、少しく物足りないと感じるのだが、それはぼくだけだろうか。
まあ、「第二部 第3話」のおっ茶目ッ!“青葉ちゃん”の奇っ怪な行動(笑)*(注:詳しくはこことここをご覧下さい)は、未だ未解決のまま残ってもいるのだが……。
さて、さて。こんな処で、いよいよ「第三部 高校生篇」スタートだ。
因みに、ぼくは、未だに「第一部 若葉の季節」のラストを再び開けずにいる。嗚呼っ!
雑誌連載の回ごとのレビューは下にまとめてあるので、合わせてお読み戴ければ幸いである。
(2005.11.15)
テキスト:「週刊少年サンデー」'05年40号〜49号
第二部 第1話(第11回)=「週刊少年サンデー」'05年40号、26頁
第二部 第2話(第12回)=「週刊少年サンデー」'05年41号、18頁
第二部 第3話(第13回)=「週刊少年サンデー」'05年42号、18頁
第二部 第4話(第14回)=「週刊少年サンデー」'05年43号、18頁
――あるいは、解けてしまった魔法の言葉――
第二部 第4話(第14回)Vol.2=「週刊少年サンデー」'05年43号、18頁
第二部 第5話(第15回)=「週刊少年サンデー」'05年44号、20頁
第二部 第6〜8話(第16〜18回)=「週刊少年サンデー」'05年45〜47号、各18頁
第二部 第9〜10話(第19〜20回)=「週刊少年サンデー」'05年48〜49号、各18頁