「コミック伝説マガジン」の創刊について(続き)

 前回から何やかやあって、ひと月が過ぎてしまった。謝謝!
 さて、「コミック伝説マガジンNo.1」買いました。モチ、古本で!
 まず、手塚プロによる「鉄腕アトム」の新作。まったく何を勘違い しているのだろう! カバーイラストだけ手塚治虫のオリジナルを使い、客寄せしておいて、 本編はまるで手塚治虫のエッセンスが感じられない。(その上、絵も似ていない!)ブラックジャックや 写楽保介などお馴染みのキャラを登場させ賑やかだが、肝心のストーリーに手塚治虫らしさがまるで 感じられないのでは、もう救いようがない。
 本誌の巻末に「スタートにあたって」と題して編集部のメッセージが記されている。<「子供の頃に 読んだマンガは面白かった」という記憶は、いつまでたっても色あせないものだ。どんな世代でも、 原体験として刷り込まれてしまった名作があるはずで、「もう一度、読みたい!」と思うのは、 しょうがないことだ。>・・・それはよく判る。でもね! これは 違う! 本人が描く新作を読むことが適わぬ今、でもね! <原体験として 刷り込まれてしまった名作>を<「もう一度、読みたい!」と思うのは>、言っとくけど、こんな まがい物じゃない!
 藤子F不二雄が亡くなった後、「ドラえもん」がどうなるか、というのが少し話題になった。 しかし、僕の周りではあまり心配する声は上がらなかった。けれどそれは、藤子F不二雄と手塚治虫との まんが家としての評価の上下、優劣、とは別の問題だった。「ドラえもん」は工房作品だからということを みんな知っていたし、それは、それを含めて藤子F不二雄の価値だったからだ。最近の「ドラえもん」を 僕は殆ど読んでいないが、きっと何ら変わらず面白いだろう。
 話が長くなったが、新作「鉄腕アトム」は、そこの処を勘違いしている、と言わざるを得ない! 例 えば、手塚治虫展か何かで、入場者に記念品として手塚プロに制作してもらった、と言うのなら話は別だ。 しかし、ここに掲載された新作「鉄腕アトム」は、先に述べた藤子F不二雄死後の「ドラえもん」を 志向している。いや、それを狙ったように、僕には見える。繰り返すが、二人のまんが家としての評価の 上下、優劣、とは別の問題で、それは無理な話だ。それは、二人の個性の違いなのだから。間違っても 手塚治虫はこんな話は描かない! (妄言多謝)
 さて、永井豪「オモライくん2001」。さすが! “都会のゴミを漁る カラス”ネタまで入れて文句無し!
 あと、藤子不二雄A「踊ルせぇるすまん」。元のまんがの熱心な読者ではなかったので、何とも 言えないが、こういう普遍的な作品は、旧作も新作も、多分何の違和感もないだろう。処が、旧作の ままのノリの、えびはら武司「まいっちんぐマチコ先生」は、逆に旧作のファンしか面白がれないのでは ないか? しかし、それが、この雑誌のコンセプトなのだからそれで良しとしようか? (しかし、 『トゥナイト2』が取材に来たって? 何考えてんだか!)
 また、旧作から20年。主人公達も20歳年を重ねて登場の、吉森みき男「新しまっていこう ぜ」。実際の年月差よりは少し若いけれども同じコンセプトの、三浦みつる「The かぼちゃ ワインsequel 」。この二作は、編集部の「スタートにあたって」の狙い通りにイイ味を出している。 みやたけし「嵐のフィールド」は、まあ、ご愛嬌か!
 むしろ、この雑誌の思わぬ拾い物!! は、巻末の、単行本未収録作の 復刻・再録ではなかろうか。

 もうちょっと続く(2001.07.12)


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