今、一番のお気に入りは『カスミン』である。
10月13日(土曜日、P.M.6:30〜6:55、NHK教育)から始まった
『カスミン』が面白い!! 本当に、久し振りに、面白いアニメを見た気がした!!
この時間帯は、今までにも『飛べ!イサミ』や『YAT安心!宇宙旅行』等、オリジナルな傑作を生んで
来た。そこにもう一本、とても楽しみな作品が生まれた。個人的には早くも本年度No.1はこれで
決まり! の感あり、である。
オリジナルが原作物より上だとは言わないけれど、先が読めない面白さは、原作物には無い楽しみだ。
この人は誰? どういう人? これは何? ここは何処? これからどうなるの? ・・・・・・というように、
全てが新しい出会いなのだ。これは楽しい!
さて、物語。学者夫婦の両親がアフリカでの研究の為、主人公(小学校4年生の女の子)をひとり残して
旅立ってしまう。で、父親の恩師の紹介でやってきた“霞家”。実はそこは、“ヘナモン”達の棲家だった。
しかも、由緒正しいヘナモンの屋敷だったのである。では、“ヘナモン”とは何か。屋敷の主、
仙左右衛門曰く「ヘナモンとは、古くなった物や自然界に存在するものが、変化したものじゃ!」――
例えば、歩く電子レンジ、喋る雑巾、タンバリンを鳴らして踊るタワシ、桜を咲かせる夫人、雲を呼ぶ主人、
綿飴を生み出す兄、水を操る龍神の息子、調理人の埴輪の奥さん・・・・・・等々。オープニングのテロップの中
に「ヘナモン指南 荒俣宏」とあって、「?」と思ったら、こういう事だったのね。(ただ、顔がカメラで
写真を撮る亀のネーミングが“デジガメ”っていうのは、今風で面白いのだけれど、少しこの世界にそぐわ
ない気がした。荒俣さん、ちょっと筆が滑ったかな?)
このヘンな世界のヘンな人々(?)の中で暮らす事になってしまった(毎回ラストで、帰ると言い張って
いるが)主人公の“春野カスミ”こと“カスミン”(この世界観の中では“カスミン”こと“春野カスミ”
では無い)の明日は如何に? という処が第1回。
とにかく、キャラクター達が、皆、魅力的なのだ。声優も芸達者なベテラン揃いで楽しい。(“あらいさ
ん”=“タンバリンを鳴らして踊るタワシ”を梅津秀行がやってる!)余談だが、“おばさん”を根谷
美智子がやっていて、以前、三石琴乃が『こっちむいてみー子』(だったかなぁ、タイトル不確か。)で
母親役をやっていた時以上にショックを受けてしまった。そういえば、日高のり子も『学園戦記ムリョウ』
の中で母親役だなぁ。でも、この“おばさん”の役どころは、実は、重要なのだが。(それについてはもう
少し後で述べよう。)
そして、この物語を魅力的にしているのは、実に、この芸達者なベテラン声優達に拠る処が大きいのである。第1
話の終わり頃の“仙左右衛門”と“カスミン”の「帰れVS帰るわよ」の怒鳴り合いも、とても面白かった。
第2話では、旦那と離婚して舞い戻って来た由緒正しきヘナモン屋敷の長女“蘭子”の、そのワガ
ママパワーに振り回される“カスミン”とヘナモン屋敷の面々が引き起こすドタバタ。これが結構スピーディ
ーで面白い。第3話は、巻き込まれ型主人公の典型たる“カスミン”の自ら墓穴を掘りまくる姿が、
実に楽しい。こういう、笑えて楽しいアニメが最近頓に少ないのだ。メカばり
ばり、CGばりばり、パンチラばりばり・・・・・・そういうアニメは、そろそろもういいよ!
ちょっと前の新人声優はヘタクソだった! 例えば、『赤い光弾ジリオン』で(何処がちょっと前
か? と突っ込まない様に。)主人公デビューした関俊彦は本当にヘタクソだった! けれども、脇
を固めるベテラン達に揉まれながら、一年のTVシリーズを終える頃、彼はとても上手くなっていた。ある
いは、どんな役を演じても同じ声しか出せなかった(勿論、今はそんな事はないけれど)林原めぐみは、
けれども、強烈な個性を放っていた。
今の新人声優は初めから上手い。以前とは比べ物にならない過酷な競争の世界を勝ち抜いてデビュ
ーする彼等は、初めから上手くなければ生き残れないだろう。勿論、その為の努力が並大抵の事で
無い事は容易に理解出来る。実際、相当頑張ってデビューに漕ぎ着けた人達ばかりだろう。けれども、どの
新人も同じ様な演技をすると感じてしまうのは、僕だけだろうか。声優の演技がパターン化されたら、アニ
メーションだってパターン化されてしまう。最近のアニメが詰らない原因のひとつが(全てでは、勿論ない
が)、もしかしたら、この辺りにあるのかも知れない、と思えてならない。
例えば、駅のプラットホームで場内アナウンスが流れて、――お〜いっ! 林原っ、声を変えろよなっ!
と思ったのは、僕だけだろうか? けれども、逆に考えれば、それは強烈な個性なのだ。誰がやっても同じ
声と、誰にも真似出来ない声と・・・・・・。多分、今の新人声優が演じたら、全員同じ声になるだろうと思える
程、今の新人声優達は完成されている。しかし、それは歓迎すべき事なのだろうか。例えば、先程の“仙左
右衛門”と“カスミン”の「帰れVS帰るわよ」の怒鳴り合いだが、ここで面白いのは、お互いに「帰る」
と言っている事だ。どちらも「帰るな」とは言っていない。つまり、意見は一致しているにもかかわらず、
怒鳴り合っているのだ。そして、その怒鳴り合いの裏に、お互いに、どこか「帰らせたくない」「帰りたく
ない」という、言葉に出来ないもどかしさを滲ませているのである。勿論、“カスミン”役の水橋かおりは
新人だが、『ジリオン』の関俊彦のように周りに引っ張られていい味を出せたのだ。
そんな事を考えていたら、この『カスミン』の楽しさは、『うる星やつら』の楽しさと似ている様に
思えて来た。ドタバタと、芸達者な声優達による掛け合いと、何が出て来るか判らない楽しさと。
こういうアニメが最近本当に少ない。毎週同じ時間にTVの前に座って、
一回限りの楽しさを満喫する。TVアニメって、それだよね。ビデオに録画して見たらダメ! それ
では本当の楽しさは、判らない。かもね!
閑話休題。先程の“おばさん”の役どころはが実は重要なのだ、という話をしようと思ったが、長くなり
そうなので、次回、日を改めて。
(2001.10.28)