第二次スーパーロボッコ大戦
EP56



異なる世界 ブルーアイランド

「もうそろそろだよ」
「どんなのが来るんだろう?」

 時間を確認するフレスヴェルグを頭上に乗っけながら、あかねは興味津々で待つ。

「なんでも将校クラスが来るらしいわよ」
「すごいおっかない人らしいわ」
「粗相のないようにしないと………」

 両肩にそれぞれ乗っているマテリア姉妹からの情報に、あおいは少し身を固くする。

「あ、来たみたい」
「確かにそのようだ」

 わかばが上空に出現した渦に気付き、迅雷(※わかばが用意した正装用振り袖姿)もそれを確認する。
 そして渦の中から一つの艦影が姿を表す。

「なんか変わった形。飛行機じゃないみたい」
「目標確認、トリガーハート支援艦カルナダイン。端的に言えば宇宙船となる」

 ひまわりが降下してくる艦影に首をかしげる中、アーキテクトが説明する。

「情報によれば、星間戦争をしている世界から地球に転移した者達、だったか」
「そうだとしたらこちらよりも遥かに高度な技術を持っている事になりますね」

 健次郎と悠里が自分達の知識の外にある技術が見て取れるカルナダインを見つめつつ、指定のヘリポートにカルナダインが着陸する。
 そしてハッチが開き、軍服姿の初老男性が最初に顔を見せる。

「出迎え感謝する。私は人類統合軍、嶋 秋嵩 元・少将だ。今回はNORN代表として、情報交換及び同盟交渉に赴いた」
「示現エンジン管理局局長の紫条 悠里です」
「一色 健次郎、この次元エンジン及びビビットシステムの開発者だ」

 自己紹介に返礼する悠里に続いて、専用ポッドで浮いているぬいぐるみ姿の健次郎に嶋は僅かに眉を上げる。

「責任者と技術主任、と受け取っていいでしょうか?」
「はい。一色博士は元はこうではなかったのですが………」
「まあその辺は後回しじゃ」
「変わったのがいるのはこちらも似たような物ですからな」
「私達もそうなるでしょうか。護衛として随伴したトリガーハート TH32 CRUELTEARです」

 嶋に続けて降りてきたクルエルティアが名乗り、ビビットチームが興味深そうに彼女を見る。

「なんか変わった名前の人だね」
「正確にはコードネーム、つまりボクらみたいな機械体だよ」
「え、それって………」
「わかりやすく言えばアンドロイド」「もっとわかりやすく言えばロボット」
「ええ!? まるで人間だけど!」
「技術レベルならトップクラスだからな。戦闘力も」
「すごいの来たね」
「他にもいる」

 ビビットチームが更に後から顔を見せたフェインティアとツヴァイに気付く。

「あれ、双子さん?」
「正確にはオリジナルとコピーだよ」
「ここの戦士って貴方達?」
「FAGがついてるとなるとそうなる」

 あかねが首を傾げるフレスヴェルグの説明に更に混乱するが、ほぼ同じ顔の二人に話しかけられる。

「そう、私の名前は一色 あかね! よろしく!」
「TH44 FAINTEARよ」
「Fツヴァイ、そう呼ばれてる」
「私は武装神姫・戦車型MMSムルメルティア。よろしく」
「あれ、そっちにも小さいのが?」
「彼女は武装神姫、ボク達FAGの元となった存在だよ。戦闘力は下手したら桁で向こうが上だけど………」

 フェインティアの肩にいるムルメルティアにあかねが気付くが、そこでフレスヴェルグが解説する。

「さすが宇宙仕様、見た事ない素材使ってる」
「現状NORNで一番自由度が高い母艦はこのカルナダインらしい」
「ちょっとそこ! 勝手に触らない!」

 ひまわりが勝手にカルナダインの外板を突つき、アーキテクトも興味を持つ中、フェインティアが思わず怒鳴る。

「フェインティア、ついでだから彼女達に艦内を案内させておいて」
「まだ同盟するかも分からないのに、いいの?」
「同盟の可否はともかく、お互い手の内をある程度明かしておくべきだろう」
「それはそうかもしれないけど………」

 クルエルティアからの頼みにフェインティアは難色を示すが、予想外の嶋からの依頼に渋々頷く。
 その様子を見ていた悠里がある疑問を呈する。

「すでにそちらにはかなりの数の組織が加入していると聞いていますが」
「数の上だけなら確かに多数の戦力を有しているでしょう。しかし…」
「相手の特殊性が高すぎる」

 嶋より先に、健二郎が答えを述べる。

「しかり。物理攻撃がほぼ無効となるような物や、逆に圧倒的なエネルギーを持ってしか破壊出来ない物も確認されている」
「圧倒的エネルギー………よもや」

 嶋の説明に、健二郎は目配せすると悠里が持参していたタブレットを操作する。

「ひょっとして、これでは?」
「これは………」
「間違いありません。ペテルブルグで確認された敵とデータが一致します」

 そのタブレットに表示されたアローンの姿を、嶋だけでなくクルエルティアも覗き込むと、外見その他のデータが照合する事を確認する。

「これはアローンと呼称している。この世界に現れる敵だが、他の世界にまで出現していたとは………」
「ちょうど近隣にウィッチと呼ばれる者達、その中でもエース級が複数いたので、撃退には成功したらしい」
「撃退? この時代の兵器でも通用しない相手を?」
「それだけ特殊な戦闘力を持った者達と相対したという事じゃろう。スコップで掘ったような跡が有ったのはよく分からんが」
「………該当者が一名、現地にいたはずです」

 クルエルティアの補足に、悠里と健二郎は思わずぎょっとするが、それ以上の追求は一先ず後回しにする。

「とにかく、こちらの状況説明からじゃな」
「アローンが他の世界にまで出現してるとなると容易な事態では…」

 嶋とクルエルティアを案内して屋内に入ろうとした時、突然カルナダインから甲高い警報音が鳴り響いた。

「何事だ!」
「カルナ!」
『大規模な次元転移反応確認! 一定質量を持った何かがこの世界に転移してきます!』
「今ここでか! まさかこちらの様子を読まれたか!」
「不明です! 至急迎撃体制を取ります! カルナ、ブレータ、緊急発進準備!」

 クルエルティアが踵を返し、カルナダインへと向かう。

「あかね達はあの宇宙船の中じゃったな。そのまま一緒に出撃しても構わないだろうか?」
「カルナ、こちらの者達も一緒に迎撃に向かいたいらしいが、大丈夫か?」
『カルナダインの装備で出撃出来るなら可能ですが………』
『現在FAGとデータ交換中、彼女達が使うパレットスーツならカルナダインからの出撃は可能。ですが、FAG達は戦闘参加できるほどの性能は有してないそうです』
「ならば、一緒に出撃を。場合によってはサポートを頼む。FAG達は艦内待機、無理はさせるな」
『了解です』

 健二郎からの提案に、嶋は携帯通信機でカルナダインと通信、可能と判断すると即座に許可を出す。

「何が出現するかによっては、こちらの増援を要請するかもしれん」
「先程の物理攻撃が効かない敵、という奴かの」
「ええ………」
『来ます!』

 嶋と健二郎が懸念を抱く中、ブルーアイランドから少し離れた海上に、次元トンネルの霧の竜巻が出現、そこから巨大な何かが飛び出してくる。

「あれは!?」
『データ一致! 出現したのはワームです!』

 嶋が徐々に形を変えていくその存在に見覚えがある事に気付き、カルナからもそれが既知の存在である事を知らせてくる。

「何という事だ………あれは私の世界で戦っていた敵、正確にはそのコピーだ!」
「特性は?」
「ワームはナノマシンの集合体だが、再生力が異常に高い。ナノマシン自体を連鎖崩壊させるか、再生以上の高火力を持って破壊するしか…」
『カテゴリーはAクラス! それが二体います!』
「Aクラスが二体だと!?」

 カルナからの続けての報告に、嶋の顔色が変わる。
 次元トンネルから飛び出してきたワームは確かに二体、それが形を変え、巨大なウミネコ型ワームへと変貌する。

「まずい、至急ソニックダイバー隊に増援要請を!」
『了解、しかし追浜基地の転移装置では攻龍の次元転移は不可能ですが………』
「ソニックダイバー隊だけで構わん! 指揮は私が取る!」
『了解、追浜基地に緊急出撃を要請します!』


太正十八年 帝都東京沖 追浜基地

「緊急出撃要請!?」
「嶋少将の行った世界でワームが出現したらしいわ! しかもAクラス二体!」
「Aクラス二体同時なんて………」
「まずいじゃん!」

 いきなりの出撃要請に、ソニックダイバー隊は色めき立ちながら出撃準備に入る。

「今試算してるけど、ここの転移装置だと次元転移用のホール開けたら、一分持つかどうかかな?」
「そんな短いの!?」

 どうやってるのか、急いで出撃準備を整えている音羽の頭の上に乗ったまま落ちもしないヴァローナの言葉に、音羽も驚く。

『準備完了したら、カタパルトから連続発進だ!』
『次元通信装置はまだ雷神のみ、しかも仮搭載しかしてません! 向こうに行ったら、嶋少将の指示に従ってください!』

 冬后とタクミからの通信を聞きながら、スプレットブースから飛び出したソニックダイバー隊が自分達の愛機へと搭乗する。

「飛行外骨格『零神』。桜野。RWUR、MLDS、『パッシブリカバリーシステム、オールグリーン』っ!」
「飛行外骨格『風神』。園宮。『バイオフィードバック』接続っ!」
「飛行外骨格『雷神』、一条、ID承認。声紋認識。『ナノスキンシステム』、同期開始っ!」
「『バッハシュテルツェ』、エリーゼ。『バイオフィードバック』接続っ!」
『次元座標入力、転移ホール発生確認!』
『ソニックダイバー隊、発進してください』
「雷神 一条、発進!」
「風神 園宮、出ます!」
「零神 桜野、ゼロ行くよ!」
「バッハ エリーゼ、テイクオフ!」

 仮設ドッグ内に設置された転移装置が作動、発生した転移ホールに四機のソニックダイバーが立て続けに出撃、転移ホールを四機全てがくぐって程なく、転移ホールは消失する。

「現状だとこれが精一杯か………」
「今後の課題だな」
「そう言えば、帰りどうなるんです?」
「カルナダインに全部詰めるでしょうか?」

 攻龍のブリッジから全機の出撃を見送った者達が心配そうに呟くが、それ以上彼らに出来る事は無かった………


「転移ホール通過、通常空間に復帰を確認。現場は海上、ワームを確認しました」
「10時方向、カルナダインを確認。データリンクします」
『ソニックダイバー隊、こちら嶋。トリガーハート隊と合同でワーム撃破にあたれ。現地のチームも出撃するそうだ』

 転移ホールから飛び出したソニックダイバー隊は素早く現状を確認していく。
 瑛花と可憐が体勢を整える中、嶋からの通信通りにカルナダインからトリガーハート達が次々発進していく。


「へ〜、ああいう風にするんだ」
「え〜と、トリガーハート単機に随伴艦を装備するのがスタイルのようだね」

 カルナダインの中で、次々出撃していったトリガーハートをパレットチームとFAGが見送る。

「それじゃあ、私達じゃアレ相手するには力不足だから」
「頑張ってね〜」
「甚だ不本意ながら、足手まといになる訳にはいかぬので」
「ここで情報収集及び解析に移る」

 FAG達がそれぞれ降りる中、パレットチームはビビットシステムの発動キーであるオペレーションキーを取り出す。

「行くよみんな!」
「うん!」「ええ!」「分かった」
『イグニッション! テクスチャーオン!』

 皆がオペレーションキーを突き出し、それを回すとビビットシステムが発動、皆の体をそれぞれ四色の光が包み込み、パレットスーツを形成していく。

『戦闘体勢が整ったら、順次カタパルトに搭乗してください』
「しゅっぱ〜つ!」

 ブレータのナビに従い、パレットチームが次々とカルナダインから出撃していった。


「エグゼリカ達も出てきた!」
「待って、なんか他にも…」

 音羽とエリーザがカルナダインの方を見た時、カルナダインのカタパルトの辺りから閃光が走ったかと思うと、更にそこから発進する者達に気付く。

「あれって………」
「この世界の戦士の子達だね。今データリンクを…」

 零神と並行して飛んでいるヴァローナが確認するよりも早く、カルナダインから発進した影、それが赤、青、緑、黄のそれぞれ四色のスーツをまとった少女達がこちらへと並んでくる。

「こちら一条! 今隣をマーチングバンドが飛んでます………」
「私は一色 あかね、貴方達は?」

 その少女達の格好に思わず瑛花が唖然とする中、先頭を飛ぶあかねが気さくに声をかけてくる。

「私達は人類統合軍・ソニックダイバー隊の者よ」
「通称スカイガールズ、よろしく!」

 瑛花の簡略的な紹介に音羽が追加する。

「取り敢えず詳しい事は後で! 今はワームへの対処を!」
「一体はこちらで引き受ける! もう一体、そちらで足止め出来るか!?」

 先にウミネコ型ワームと交戦を始めたエグゼリカ達を見ながら、クルエルティアと瑛花が即興で作戦を立てる。

「分かった! 片方こっちでやっつければいいんだね!」
「待って、ワームはそう簡単な相手じゃ…」

 作戦を聞いたあかねが、詳細も聞かずに突撃していき、パレットチームもそれに続く。

「どちらにしろ、Aクラス二体同時相手は不可能です! 彼女達がどれほどの戦闘力を持っているかは不明ですが、せめて時間稼ぎだけでもしてもらえれば…」
「! 来るよ!」

 可憐の提案を精査する間もなく、エリーゼが警告を発する。
 ウミネコ型ワームの片方が大きく翼を持ち上げ、何かの予備動作だと察したソニックダイバー隊が即座に反応する。

「散開!」

 即座に散ったソニックダイバー隊に、ウミネコ型ワームが巨大な翼をふりかざし、そこから何かが一斉に発射される。

「何これ!?」

 白い何かが無数に高速で射出された事に、音羽は零神を旋回させながらそれを避ける。

「ニードル? いや…」

 ヴァローナが通り過ぎたそれを後ろ目で見た時、その白い何かが高速のまま弧を描いてこちらに再度向かってくるのに気付く。

「小型高速追尾ミサイル!」
「ええ!?」

 レーダーに確かに回避したはずの白い小型ミサイルが再度こちらに迫ってきている事に気付いた音羽は、零神を更に加速させる。

「ダメだオーニャー! 振り切れない!」

 流石についていけないヴァローナが零神にしがみつきながらレーダーを注視、小型ミサイルとの距離がどんどん詰まってきているのに警告を発する。

「だったら! しっかり捕まってて!」

 回避が不可能と判断した音羽は、距離を図りつつ、機体を起こしながら変形で急激にエアブレーキをかける。
 さすがに反応しきれなかった小型ミサイルがこちらを通り過ぎた直後、腕部ビーム砲を速射して小型ミサイルをなんとか撃墜する。

「みんな無事!?」
「こちらは大丈夫!」
「な、なんとか…」
「危な〜………」
「残弾はこちらで処理します!」

 音羽が改めて仲間の方を確認、全機無事な事を確認し、クルエルティアがアンカーを使って残った小型ミサイルをなんとか処理する。

「あっちのマーチングバンドは!?」
「何らかの爆発は確認しましたが…」

 瑛花がパレットチームの安否を確かめる中、可憐が風神のセンサーで所在を確認する。

「あれって………」

 そこでエリーザは、パレットチームの前に大きなバリアが発生してる事に気付く。

「これでよし」
「ありがとひまわりちゃん!」

 回避でなく、ネイキッド・コライダーのバリアで全弾防いたパレットチームが、反撃に転じる。

「ネイキッド・ラング!」

 あかねの投じたブーメラン状の武器がウミネコ型ワームに突き刺さったかと思うと、そのまま表面をえぐりながら貫き、あかねの手元へと戻ってくる。

「今の武装、Aクラスワームのセルを安々と貫いてる………」
「見た目に反して、すごい出力です!」
「出力だけならこちらより上かもね………」

 瑛花が唖然とする中、可憐とクルエルティアがそれぞれ独自にパレットスーツの出力を計測して驚愕する。

「アレなら任せて大丈夫じゃない?」
「だといいんだけど…!」

 音羽とエリーゼも予想以上のパレットチームの戦闘力に驚くが、再度ウミネコ型ワームが翼を振りかざした所で警戒を高める。
 再度離れた小型ミサイルは、今度は直進ではなく弧を描いてパレットチームを包囲するように迫る。

「カルノバーン・ヴィス!」

 包囲が完了する前に、クルエルティアが放ったアンカーが小型ミサイルを次々とキャプチャーし、まとめてウミネコ型ワームへと投げ返す。
 小型ミサイルを文字通り叩き返されたウミネコ型ワームは直撃を食らうが、爆発でえぐれた箇所は即座に再生を始める。

『どうやら、あちらと分担しても問題ないようだ。各個で対処にあたれ』
「了解! 右のワームはこっちで受け持つわ! 左のをお願い! 無理はしないように!」
「任せて!」
「エグゼリカは私とパレットチームの援護を! フェインティアはツヴァイとソニックダイバー隊の援護を!」
『了解!』

 嶋の指示で瑛花とクルエルティアが素早く役割を分担し、二手に別れてウミネコ型ワームへと向かう。

「GモードからAモードにチェンジ、攻撃開始!」

 瑛花の指示と共にソニックダイバー四機は変形、ウミネコ型ワームへと攻撃を開始する。

「うわ、変形した! かっこいい!」
「ホントだ、そういう機体なんだ………」
「二人共、見るのは後に!」
「またアレが来たら危ない」

 ソニックダイバーに見惚れるあかねとあおいをわかばがたしなめ、ひまわりが再度の攻撃に備える。

『四人共、今ワームのデータをこちらで精査してるけど、パレットスーツでも十分対処は可能らしいわ。基本はアローンと一緒、セルと呼ばれる構成体を潰していって』
「りょ〜かい!」
「まずはあの翼をなんとかしないと!」

 指揮を取る天城 みずはの指示を聞いた四人は即座に散開、あかねとわかばそれぞれ左右の翼を狙う。

「ネイキッド・ラング!」
「ネイキッド・ブレード!」

 同時に攻撃したあかねとわかばだったが、寸前でウミネコ型ワームが旋回し、ネイキッド・ラングは外れ、ネイキッド・ブレードはかすめるだけに終わる。

「外れた!?」
「大きい割に小回りが効く! もう一度…」

 再度攻撃に移ろうとする二人だったが、そこでウミネコ型ワームが旋回しながら翼を振り上げる。

「まずっ!」

 あかねが思わず身構える中、そこへウミネコ型ワームの両翼にビーム砲撃が炸裂し、小型ミサイル発射を強引に中断させる。

「油断しないで、強敵よ」
「サポートします! ワームとの戦い方なら知ってますし!」
「お願いします!」

 クルエルティアとエグゼリカの援護に、あかねは元気よく答えると、再度ネイキッド・ラングを振りかざした。


「はあああぁ!」

 気合と共に零神の振りかざしたMVソードがウミネコ型ワームの翼の先端を切り裂いていく。

「ガルクァード!」

 半ばまで千切れた翼の先端部分をフェインティアがアンカーでキャプチャー、スイングして強引に引き千切ると、ウミネコ型ワームへと叩き返す。

「あのミサイル、連射は出来ないみたい! 攻撃し続けて!」
「発射前に撃墜すれば問題ないはず!」

 零神の傍らでヴァローナがジャミングしながら叫び、フェインティアの傍らでムルメルティアがインターメラル 3・5mm主砲を速射する。

「モチーフがモチーフだけに機動性も高いです! 注意を!」
「それくらい!」

 可憐が風神のレーダーでデータを解析しつつミサイルを放つ中、エリーゼはバッハシュテルツェを機敏に操作してMVランスで各所を斬り裂いていく。

「こいつそんなに固くない! 一気に行こう!」
「何か隠してる可能性もあるわ! 慎重に!」

 一気呵成に攻めようとするエリーゼに、瑛花は雷神でビーム砲撃を加えながら注意するが、そこでウミネコ型ワームの顔がバッハシュテルツェの方を向いた事に気付く。

「エリーゼ、退避!」

 攻撃の予兆だと判断した瑛花が叫び、エリーゼは即座にバーニアを吹かして上昇、直後に先程までいた空間を何かが通り過ぎていき、海面に激突して盛大に水しぶきを上げる。

「今の何!?」
「ソニックキャノンだ、また来るぞ」

 エリーゼが驚く中、その攻撃の正体を看破したツヴァイが警告した通り、ウミネコ型ワームは奇怪な動きで顔を向けると、口からソニックキャノンを次々と放ってくる。

「動きを止めるな! 狙い撃ちされるぞ!」
「音波砲なら、距離さえ取れば威力は半減するはずです!」
「あまり離れると、またミサイルが…」
「うわあぁ!」
「ディアフェンド!」

 瑛花と可憐が回避と対策を講じる中、フェインティアが羽根のミサイルに警戒するが、向こうから響いてきた悲鳴に思わず皆がそちらを見ると、ソニックキャノンの直撃を食らったひまわりが吹っ飛ばされ、海面に激突する前にエグゼリカのアンカーがキャプチャーする。

「大丈夫!?」
「なんとか。バリアが持ったけど衝撃で飛ばされただけ」

 エグゼリカの安否確認に踏ん張りきれなかったひまわりが頷く。

「ひまわり、大丈夫!?」
「直撃じゃなければ、パレットスーツで耐えられる。でもかなり厄介………」

 心配して文字通り飛んできたわかばにひまわりはうなずきつつ、ウミネコ型ワームの能力を解析していく。

「翼の方はこちらでなんとかするわ! 首の方をお願い! エグゼリカ!」
「はい姉さん!」

 クルエルティアがまず小型ミサイルを封じるべく、エグゼリカと分担してそれぞれ左右の翼にアンカーを打ち込む。
 更に翼を固定した状態でビーム砲撃を次々撃ち込み、小型ミサイルを発射前に破壊していく。
 ウミネコ型ワームがエグゼリカの方に首を向けた時、あかねがその鼻面をかすめていく。

「こっちだよこっち!」

 あかねがウミネコ型ワームの注意を引くべく、接近離脱を繰り返し、あおいとひまわりもそれに加わり、ウミネコ型ワームを翻弄する。

「今!」
「はああぁぁ!」

 ウミネコ型ワームが三人に気を取られている間に、上空に待機していたわかばがネイキッド・ブレードを上段に構えて急降下、一息に首を斬り落とす。

「やった!」
「まだよ! 完全に潰して!」
「! 動いてる! ネイキッド・インパクト!」

 クルエルティアの警告と、切り落とされたはずの首が崩壊しつつもこちらに口を向けた事にあおいが反応して攻撃して完全に頭部を潰した。


「あっちはなんとかなってるようね」
「じゃあこっちも!」
「そこだ!」
「いくよ〜!」

 善戦しているパレットチームを見ながら、フェインティアと音羽が構える中、ムルメルティアとヴァローナがインターメラル 超硬タングステン鋼芯とFL015 バトルスタッフでウミネコ型ワームの翼に切り取り線を穿っていく。

「いいよオーニャー!」
「たりゃああ!」
「カルノバーン・ヴィス!」

 そこで音羽が気合と共にMVソードで切り取り線を一気に繋いで翼を斬り飛ばし、切断された翼をフェインティアがアンカーでキャプチャー、思いっきりスイングして本体へと激突・爆発させて大ダメージを負わせる。

「構成セル損壊率28%突破、行けます!」
「クアドラフォーメーション!」

可憐がクアドラロック発動可能質量に達した事を確認すると、瑛花の号令でソニックダイバー四機がフォーメーションを組んでウミネコ型ワームに突撃する。

「行くよゼロ!」

 零神がMVソードを手に突貫し、それを狙おうと顔を向けたウミネコ型ワームにフェインティアとツヴァイの砲撃が左右から同時に叩き込まれて攻撃を阻止する。
 援護を受けながら音羽は渾身の力でMVソードを突き刺す。

「座標、固定OKっ!!」
「4!」「3!」「2!」「1!」
『クアドラロック!』

 四機のソニックダイバーがリンクして人工重力場を発生、ウミネコ型ワームを完全に閉じ込め、ホメロス効果を発生させる。

「セル転移強制固定、確認っ!!」
「アタック!!」

 瑛花の号令で、ソニックダイバーのみならず、フェインティアとツヴァイ、武装神姫達も一緒になって人工重力場内のウミネコ型ワームを一斉攻撃、限界に達したウミネコ型ワームは一気に爆発崩壊した。

「こちら雷神 一条、ワーム殲滅を確認」
「向こうは!?」


「うわ、なんか必殺技出した!」
「あかねちゃん、こっちも!」
「うん!」

 二人は頷くと、胸元からパレットスーツの起動の要となるオペレーションキーをかざす。

「オペレーション!」「ビビットブルー!」

 宣言と共に、あおいがあかねの額にキスをすると、二人は青い光球に包まれ、そのシルエットが一つに溶け合う。
 そして光球の中から、青いロングヘアにドレスを模したパレットスーツをまとった大人びた姿となって出現する。

「ビビットブルー、オペレーション!」
「合体した!?」
「変わったシステムね………」

 予想外の切り札に、エグゼリカとクルエルティアも絶句する。

「あれがこっちの必殺技!」
「援護を」
「り、了解!」
「なんて出力、まだ上がっていく!?」

 わかばとひまわりが援護攻撃する中、エグゼリカとクルエルティアもウミネコ型ワームの攻撃を加える。

「ビビッドインパクト、セーフティー解除!」
「エンジン出力、120%! 150% 180%!」
『臨界突破! 出力200%!』
『ファイナル・オペレーション!!』

 巨大化したネイキッド・インパクトがウミネコ型ワームに叩き込まれ、内包された莫大なエネルギーが開放、ウミネコ型ワームの構成セル全てを一気に崩壊、大爆発と共に完全消失させる。

「なんて威力………」
「トリガーハートよりも出力が遥かに上ね」
「まさか力技でワームを殲滅するなんて………」
「頼りになりそうだね」

 トリガーハートもソニックダイバー隊も、パレットチームの桁違いのパワーに完全に絶句する。

「ところでオーニャー、そろそろ………」
「あっといけない!」
「嶋少将! 戦闘終了を確認しましたが、ナノスキンの残時間が…」
『こちらでも確認した。ブルーアイランドのヘリポートに着陸許可を得た、そこに着陸を』
「了解」
「こっちだよこっち!」

 何か慌てているソニックダイバー隊を、元通り分離したあかねが先導する。

「で、帰りどうすんの?」
「カルナダインのカーゴベースになんとか………あ、でもハンガーが無いと」
「それくらいなら一色博士に頼めば造ってくれる」
「変形型とは変わってますね。まあこっちも人の事は言えないけど………」
「大丈夫、どこも似たようなのばかりだから」
「それぞれ特性はありますけどね」

 トリガーハートも加わり、全員でブルーアイランドへと帰投していった。


「なんとかなりましたな」
「ええ、そちらでも対処出来る相手で良かった。あの出力は予想外でしたが」

 帰投してくる者達を見ながら、健二郎と嶋が呟く。

「まだ力押しが出来る相手ならば、なんとかしようがある。だが…」
「そうでない相手も居る。FAG達から聞いております」
「そして、次に何が来るのか、我々には予測の立てようも無い」
「そのための同盟か………じゃが、パレットスーツは示現エンジンからのエネルギー供給あってこそあの出力が出せる。違う世界ともなると話は違ってくるぞ?」
「その件はこちらの技術班とも相談してみましょう。同盟の件、前向きに検討していると取っていいでしょうか?」
「ワシの一存では決定出来んがな」
「いえ、こちらとしても同盟の件は検討すべきだと思います。アローン対策をあの子達に一任している状況の打開の可能性も有り得そうですし」

 悠里も加わり、NORN参加の件が前向きに検討される頃、別の視点でその場を見ている者がいた。



「あれが、違う世界の………」

 ブルーアイランドが見える丘から、れいが戦闘の一部始終を観察していた。

「あんなのがこちらに来たら、更に話が厄介になる………どうすれば………」

 見せつけられたソニックダイバーとトリガーハートの戦闘力に、れいはどう対処すればいいかを思い悩む。

「だが、他の世界の敵が暴れている間に、こちらの目的を遂行出来るかもしれない。その時を待てば………」

己の目的を果たすため、れいは必死に考えを巡らせていた頃…



「ふむ、来たか………」

 レイの自宅で、相変わらず鳥かごに入れられたままのミズキは、カルナダインの到着と共に微弱だが発信された別の武装神姫のシグナルを感知する。

「本来なら、わらわもマスターと共に合流すべきなのじゃが、アレではな………」

 幾度となくマスターであるれいの説得を試みたが、まるで聞き入れようとしないれいにミズキはほとほと困り果てていた。

「下手にこちらの事を本隊に知らせれば、マスターが逆上して暴挙に出かねんしの………」

 首を傾げるミズキの隣で、ピースケが真似をしたのか同じように首を傾げて小さく鳴く。

「プロフェッサーもこのような事態は考慮しておらんかったか。一番の問題はマスターでなく、あの妙なカラスじゃ………」

 センサーその他で件のカラスがいない事を確認しつつ、ミズキは更に悩む。

「あんな物、こちらのデータにはおらん。マスターはあやつの口車に乗せられておるのではないか? だが尋常ではない力を持っておるらしいし………」

 首どころか全身を傾げた所で、座っていた止まり木から落ちそうになったのをミズキは器用に足で捕まって唸りながら逆さにぶら下がる。

「下手に示現エンジンとやらを破壊されれば、今後の活動に支障となる。だがだからと言ってマスターを突き出す訳にもいかん………お主はどう思う?」

 逆さにぶら下がっているミズキを不思議そうに見ながら、ピースケは再度鳴く。

「致し方ない、取り敢えず合流不可の連絡だけでもしておくかの………こちらの場所も知らせん方が良かろう」

 問題の解決策が見つかるまで、まずはれいを必要以上に刺激しない事を決めたミズキは、止まり木から足を離して回転しながら降りる。
 そして鳥かごの戸の前へと立つと、その手に白い狐の顔の面『面隠し《闇狐》』を取り出し、顔にかぶる。

「面隠し《闇狐》、ハッキングモード」

 ミズキのボイスコマンドと共に面隠し《闇狐》の目がわずかに発光、明滅をくりかえすと鳥かごにつけられていた電子ロックが解除され、戸が開いた。

「という訳じゃ、ちょっと離れた場所から連絡してくる。マスターには内緒じゃぞ?」

 自分で出て再度戸を締めたミズキは、ピースケに必要もないが言い含め、武装状態になると換気扇から外へと飛び出していく。

「何でわらわばかりこうも苦労するのじゃ。そもそもあのカラスが訳の分からん事を…」

 飛びながら愚痴るミズキだったが、そこでふと急停止する。

「よもや、あのカラス………」

 データバンクの片隅に有った、無関係と思われていたデータに何か符号する物を感じたミズキは、再度飛びながら通信内容を再考する。

「Gに連絡、代弁者の詳細について………」






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