BIO HAZARD irregular
SWORD REQUIEM

第ニ章


 タタン………タタン……

 薄く水を張った路面に、定期的な音と共に波紋が立つ。

 タタッ…タタッ…

 不意にその間隔は短くなっていき、
タンッ

 最後に一際大きな音と波紋を残し、音の主は見つけた獲物へと襲い掛かった。

「はっ!」

 腐臭の混じる唾液を滴らせながら飛び掛かってきたゾンビ犬に向けて、レンは気合と共に水平に抜刀、その胴体を両断する。

「このやろっ!」

 その背後では、同じようにして襲い掛かろうとしているゾンビ犬ヘと向けて、スミスがモスバーグを発射。
 一度態勢を崩しながらも、なお唸り声と共に立ち上がろうとするそれに更に駄目押しの散弾を撃ち込む。
 地面に倒れたゾンビ犬が起き上がってこないのを用心深く確認しながら、スミスは構えていたモスバーグをゆっくりと降ろした。

「どうなってやがんだよ、全く。最初はゾンビの大群、次は狂暴なカラス、今度は犬のゾンビと来た。次は何だ?猫かネズミかゴキブリか?」
「さすがにネズミやゴキブリともなると小さくて斬りにくいな。せめてアライグマくらいなら………」

 本気か冗談か判断しかねるような事を言いながら刀を鞘に収めようとしたレンは、上半身だけになったゾンビ犬がまだ唸り声を上げながら前足だけでこちらに近付こうとしているのに気付き、顔をしかめながらその首を斬り落とした。

「分かったのはどうやらゾンビ化したのは人間だけじゃないって事だ。この様子だとこの街にいるほとんどの生物がゾンビ化している可能性が考えられる。」
「アライグマもか?」

 減った分の弾丸をモスバーグに補充しながらスミスが茶化す。

「精々襲われて洗われない様に気を付けるか」

 レンが刀に付いた血を振るい落としながらそれに応じる。あまり抑揚の無い口調(普段からこんな感じだが)で言われたので、スミスは思わず“襲った人間の手足を洗って食おうとしているアライグマゾンビ”を想像してしまい身震いする。

「それならまだしも、最悪の場合動物園の猛獣がゾンビ化している可能性だってあるな」
「ゾンビになったら猛獣だろうが草食動物だろうが関係…無い……ような…」

 ふとそこでスミスはある事を思い出す。

「なあ、そういえば街外れでワニ飼っている家無かったか?」
「ああ、1mにもならないようなのを飼ってたとこ有ったな。一月位前に一匹いなくなったってみんなして騒いだ…」

 そこまで言ってレンもようやくスミスの言わんとしている事を理解し、顔を見合わせた。

「で、でも1m位の奴ならなんとか……」
「ワニってのは結構速く動くし、姿勢が低くて狙いにくい上に表皮も硬い。いきなり襲われたら対処できるかどうか自信は無いな」

 冷静に分析するレンに恨みがましそうな視線を向けながら、スミスはおもむろに前へと歩き始めた。
 あの警官が言った通り、バリケードのお陰で二人はここまでほとんどゾンビとは出会わずに進んで来れた。
 時たま脇道にいるゾンビを見掛ける事も有ったが、向こうが気付く前に逃げれば無事にやり過ごせるらしい事が分かり、猛ダッシュでその場から離れる事で戦闘は回避していた。

「にしても、西に向かえって言われても、こっから街外れまで何kmあると………」
「それじゃあそこから近道するか?」

 愚痴りながら歩くスミスに、レンが斜め前に見えてきたバリケードを指差す。
 そこからは、バリケードを叩く音と共に、大量のゾンビ達の呪詛が聞こえてきていた。

「絶対にゴメンだ。街外れどころか10mも行かねえ内にゾンビ達の腹に直行しちまう」
「そういう事だ。とっととここから離れよう」

 小走りで二人がバリケードの前を過ぎた瞬間だった。
 突然後ろから大きな音が響いた。驚いた二人が後ろを見ると、そこには倒れたバリケードとひしめくゾンビ達の姿が有った。

「!逃げ…」

 走り出そうとしたスミスが、言葉の途中で何かに足を掴まれ転倒する。
 慌てて足を見たスミスの目に、バリケードが倒れる拍子に一緒に倒れたらしいゾンビが自分の足首をガッチリと掴んでいるのが飛び込んできた。

「スミス!!」
「離せ! 離しやがれえぇぇ!」

 スミスは必死にもう片方の足でゾンビの手を蹴るが、異常なまでの握力で足首を握る手は緩まる気配は無い。
 レンが助けに行こうとするが、その時すでに先頭のゾンビ達が動けずにいる獲物を見つけ群がろうとしている寸前だった。

(やるしかない!)

 レンはゾンビ達の目前で急停止すると、刀に手を掛けながら息を大きく吸い込む。
 体はゾンビに対してほとんど真横を向き、吸い込んだ息は半ば強引に肺に貯める。
 そして、足音が響く程強く右足を踏み込んだ。

「はああああぁぁぁ!!」

 肺に貯めこんだ息を気合と共に吐き出し、大きく体を回転させながらレンは低い軌道で抜刀した。

「あああああぁぁぁぁ!」

 刃がゾンビ達の足を斬り裂いてもレンはそのまま体を回転、それに応じて刃はその軌道を少し上に変化させ、続けてゾンビ達を斬り裂く。

「ああああぁぁぁぁぁぁ!」

 それでも回転は止まらず、刃は螺旋状の軌道を描きながらゾンビの足を、腹を、胸を、首を次々に斬り裂いていった。
 ちょうど刀を斜め上に掲げたような状態になって、レンはようやく回転を停止。
 その頃にはスミスに迫っていたゾンビ達は全て輪切りにされた肉の塊となって地面へと落ちた。

「ひいっ!」

 自分の足に降り注ぐゾンビ達のパーツにスミスが悲鳴を上げるが、その内の一つが偶然足首を掴んでいたゾンビの腕に当たり、握力が緩んだ拍子に足首を引き抜く事に成功した。

「逃げるぞ!」
「言われなくても!」

 立ち上がりながら自分の足首を掴んでいたゾンビに一発、こちらに気付いて近付こうとしているゾンビ達にも一発散弾を撃ちこむと、スミスはレンの後に続いて走り出した。

「追ってくるぞ!」
「意地でも引き離せ!」

 レンは走りながら振り向くと、一番先頭にいたゾンビに向けてクーガーDを連続して発砲、ゾンビの体が傾くのを横目に見つつまた走り出す。

「ゾンビが走んな!」

 スミスもそれに習って振り向くと、モスバーグを発砲してまた走り出す。
 しばらく走っては撃ち、撃っては走りを繰り返すが、ゾンビ達はその数は減らしても一向に二人の追跡を止める気配は無い。
 ちょうど二人同時に振り向いて撃った瞬間、双方の銃が同時に弾切れを起こす。

「ガッデム!」

 悪態を付きながらスミスは腰のホルスターからレッドホークを抜くと連続して44マグナム弾を発射、がすぐに弾切れを起こす。

「くそっ! くそっ!」

 急いでシリンダーをスライド、空薬莢を地面に落として次弾を装填しようとするが、慌てている為か、なかなかうまくいかない。

(どうする? どうすればいい?)

 レンはゆっくりとこちらに近付いてくるゾンビの群れと、なかなか装弾出来ないでいるスミスを交互に見ながら考えた。
 左右は建物の壁で逃げ道は無い。
 ふと、レンは前方に建物の内部へと続くドアを発見した。

「スミス! あそこに逃げ込むぞ!」

 ようやく装弾を終えたレッドホークを発砲しながら、スミスはレンが抜いたままの刀で差しているドアを見た。

「あん中にゾンビがいないって保証は!」
「無いっ! だけどこのまま最悪の鬼ごっこするよりはマシだ!」

 レンの言葉にスミスがうなずくと、レッドホークを立て続けに速射、弾が尽きた所で二人そろってドアへと走り出した。
 ドアを突き破らんがばかりの勢いで開けてその中に飛び込み、大慌てでドアを閉めると鍵を掛ける。
 それだけに留まらず、ドアの傍に有った重そうなスチール棚、掃除用具入りのロッカー、中身入りのダンボール箱等を次々にドアの前へと積み重ねる。
 追い着いたゾンビ達がそのドアを叩く頃には、ドアはそう簡単に開けられない程のバリケードで埋め尽くされていた。

「助かった………のか?」
「あいつらからはな…………」

 お互い肩で息をしながら、床へと座り込む。スミスはそのまま床に大の字に転がった。
 レンは未だに刀を抜いたままだった事に気付くと、軽く振って鞘へと収め、呼吸を整えながら周囲を見渡した。
 そこはどうやらどこかの倉庫らしく、広い部屋の中には色々な物が納まっているダンボール箱が整然と並んだスチール棚に無数に置かれていた。

「ところで、ここはどこだ?」
「知らん。確かめているヒマなんてあるか」

 ようやく落ち着いてきた呼吸を整えながらスミスがむっくりと起き上がり、その場に座り込んだままの状態で弾丸を装填し始める。

「どうやらどこかの店の倉庫みたいだが……」

 レンはダンボール箱の中に入っているドリンクや雑貨などを見ながら、ポケットから取り出した弾丸をクーガーDのマガジンへと詰める。

「どこでもいいさ。ゾンビがいなけりゃな」

 レッドホークの装弾を終え、モスバーグへと取り掛かりながらスミスがぼやく。
 レンが見渡した限りでは少なくともこの倉庫の中で動いているのは彼らと、壁に取り付けられた換気扇だけのようだった。
 装弾を終えたマガジンをクーガーDへと戻し、初弾をチェンバーへと込めると、ガンベルトのパウチやベストのポケットをまさぐって残弾数を確かめ始める。

「ところでレン」
「何だ?」
「さっきオレが食われそうになった時、何やったんだ?」

 装填を終えたモスバーグのポンプをスライドさせて初弾を装弾させながらのスミスの問いに、パウチにギチギチに詰められていた弾丸を取り出しやすいようにいくつかに分けてベストのポケットに仕舞いながらレンは答えた。

「あれか。オレが習った剣術、光背(こうはい)一刀流の技で《光螺旋》(ひかりらせん)、英語で言えばシャイニングスパイラルとでも言う技さ」
「あんなすげえ事出来るんならもっと早く使えよな」
「成功したのはあれで三度目だ」
「……………」

 失敗していたらどうなっていたんだろうか、という考えを精神力で必死に頭の片隅に追いやりながら、スミスは立ち上がってズボンのホコリを払おうとした所で、自分のズボンが血と腐肉まみれの事に気付いて顔をしかめた。

「取り合えず、出入り口を探すとするか」
「そうだな」

 二人そろって倉庫から建物奥へと続く扉を目指して歩き始める。
 二人がその扉をくぐったすぐ後で、彼らを追って天井を這う影がいる事を二人は知るよしも無かった。


 扉をくぐった所で二人が一番最初に目にしたのは、棚に陳列された香辛料の列だった。

「ここって、ひょっとしてRマートか?」
「みたいだな」

 そこはラクーンシティで一番大きいショッピングセンターだった。
 普段ならば買い物客で賑わっているはずの店内は不気味なまでに静まり返り、ただ商品維持用の冷却器がたてる音が妙に大きく響いていた。

「運がいいのかもな」
「何がだよ」
「少なくてもここで食料が入手出来そうだ」
「ゾンビがいなけりゃな」

 二人は周囲を警戒しながら店内を探索し始めた。

「ひっ!」

 三分も立たない内に、スミスは陳列棚の影から伸びている足を発見した。

「に、人間とゾンビ、どっちだと思う?」
「襲ってくればゾンビ、でなけりゃただの死体だ」
「ま、まてよ」

 刀に手を掛けながら近付こうとするレンを震える声で静止させ、スミスが傍に有ったモップで軽くその足を突つく。しかし、足は何の反応も示さない。

「死んでるのか?」
「じゃなきゃ死んだふりだ」

 陳列棚の影で見えない体の方へと用心深くレンは回り込む。その死体の下に大量の血溜りを発見すると、無造作に死体に手を掛け、それをひっくり返してあお向けにした。

「お、おい!」
「心配無い。こいつはただの死体だ。だが…」

 スミスもその死体の方へと目を移す。それはこのショッピングセンターの制服を着た中年の男性の死体だった。

「こいつを見ろ」
「なんだこりゃ!?」

 スミスもすぐにその死体の異常に気が付いた。それは街で見かけた死体と違い、噛み付かれたような跡が一切無い代わり、その胸に直径5cm位の穴がポッカリと空いていた。

「焦げていないから弾痕じゃあないみたいだが、一体何の跡だ?これは?」
「オレが知るか」

 謎の死体からスミスが目を背けたその先に、もう一つ別の死体を見つけてしまった。

「おい、あっちにもあるぜ」
「済まないが調べてきてくれ。オレはもう少しこの死体を調べる」
「オレがか!?」

 非難の声も聞かず黙々と死体の傷口を調べているレンに非難の視線を向けながら、スミスはさっきも使ったモップを片手に、なるべくゆっくりと死体に近寄った。

「動くなよ?、ゾンビになってんなよ?」

 そろりそろりと死体に近寄るが、ある程度近づくとその死体にも同様の血溜りを発見し、幾分動きを速めながら死体へと近寄った。

「レン!ちょっと来てくれ!」
「どうした?」

 今度のそれは私服を着た若い男性の物だったが、それの胴体には大きく斜めに切り裂かれた傷跡が有った。

「レン、お前通り魔でもやったか?」
「誰がやるか。それにこれは刀傷じゃない。もっと太い……斧とか鉞とか、もしくは…」
「もしくは?」
「巨大な獣の爪とか」

 スミスの顔から完全に血の気が消え失せる。
 もしそうだとしたら、少なくてもこのラクーンシティ周辺に棲む獣の物では有り得ない程、その爪痕は大きかった。

「冗談辞めてくれよ………」

「オレもそうだったらどんなに…」

カタン………

 突然聞こえてきた物音に、二人が過敏に反応する。

「ゾンビかな……」
「もしくはここの連続殺人犯か……」

 用心深くレンが周囲を見渡し、音の聞こえてきたらしい方向へと歩き始める。
 その後に続いて体中を震わせながらモスバーグを握り締めたスミスが続く。
 何者かに食い荒らされた形跡の有る生鮮食料品売り場を越え、事務所へと続くドアを開ける。

「おそらくこっちだと思うが……」
「そ、空耳だといいんだけど……」

 お互いなるべく小さな声で声を掛けながら、先へと続く。やがて事務所からその先の更衣室の方へと進むが、物音の原因になりそうな物は見当たらない。

「や、やっぱり空み…」

カタン…………

「!!!!」

 今度ははっきりと聞こえた。スミスが声にならない悲鳴を上げる。レンはその音のした女子更衣室の方へとなるべく足音を立てないように進む。
 女子更衣室の中を調べていく内に、レンは一つのロッカーの前で立ち止まり、スミスへと指差す。よく見ると、そのロッカーは微かに音を立てて震えていた。
 レンはクーガーDを抜いてロッカーへと向けながら静かに刀を抜く。
 スミスは唾を飲み込みながらモスバーグをロッカーへと向けた。
 用心深く刃をロッカーの隙間へと差し込むと、レンは一気にロッカーを開けた。
 スミスの指が一瞬トリガーを引こうとするが、寸前で止まり、ゆっくりとトリガーから外す。

「お願い……助けて………」

 ロッカーの中には、ショッピングセンターの制服を着た少女がひざを抱えた状態で震えていた。

「大丈夫だ。一応人間だよ、オレ達は」

 レンが声を掛けると、少女はゆっくりと顔を上げる。掛けていた眼鏡がずれ、涙でくしゃくしゃになった顔に二人は見覚えが有った。

「ミリィ?」
「レン!?」
「ミリィじゃないか!」
「スミスも!」

 その少女がクラスメートのミリィことミリア・マクセルである事に二人が驚くのと、意外な人物がそこにいるのにミリィが驚くのは同時だった。
 が、ミリィが驚いた表情をしたのはごく短い時間で、すぐに泣き顔になりながらロッカーから飛び出し、すぐ前にいたレンへと抱き着いて大きな声で泣き始めた。

「あたし、あたし、ここでアルバイトしてて、忘れ物取りに来たら、何かみんな慌ててて、気が付いたら街のあちこちにゾンビがいて、あたし、みんなとここに隠れてて、気が付いたら妙に静かになっていて、様子を見に主任とトムさんが行ったんだけど帰ってこなくて、残っていた人達が裏口から逃げようとして、みんな、みんなゾンビに襲われて、だからあたし、ずっと、ずっと………」
「大丈夫、もう大丈夫だ」

 レンはクーガーDをホルスターに収め、空いた左手でミリィの肩をやさしく叩きながらなだめる。やがて、ゆっくりと泣き声は小さくなっていった。

「ミリィ、オレ達と一緒にこの街を出よう」
「でも、外には……」
「安心しなって、オレとレンの二人に掛かればゾンビの10匹、20匹どうって事ないって」

 スミスが手の中のモスバーグを見せ付けるようにしながら強がる。が、ミリィの表情は曇ったままだった。

「違うの!ゾンビじゃない何かがここにいるの!」
『!』

 レンとスミスが顔を見合わせる。おそらく、その何かの餌食になったのがあの死体であろう事に二人同時に気付いたからだった。

「ミリィ、そいつはどんな奴だ?」

 無意識に少し強く相手の肩を掴みながらのレンの問いに、ミリィは首を横に振った。

「分からない………あたしずっと隠れてて音を聞いただけなの」
「音?」

 ミリィは首を縦に振って続ける。

「うん。ヒタヒタ、ヒタヒタって何かが這い回る音………」

 スミスが冷や汗をかきつつ、唾を飲みこんでゆっくりと後ろを見た。レンも緊張しながら耳を澄ます。
 少なくともここに来るまでにそういった音は二人は聞いていない。
 考えられるのは、ここからいなくなったか、ただ彼らが聞いていないだけか………

「どうやらここも安全じゃないみたいだ。早く出た方がいいだろう」
「さ、賛成……」

 スミスが開けっ放しになっていたドアへと近付こうとした時だった。

ヒタ………ヒタ………

 遠くからだが、はっきりとその音は聞こえてきた。
 三人の間に緊張が走る。その音は徐々にだが確実に近づいて来ていた。
 スミスがまた唾を飲み込みながらモスバーグを構える。
 ミリィはレンにしがみついて震え、レンは彼女の肩を抱きながら用心深く備前長船を構えた。

ヒタ……ヒタ……

 もはや音はかなり間近に聞こえて来ていたが、いまだその相手の姿は見えなかった。
 ふと、レンはスミスのすぐ前に水滴が滴っているのに気が付いた。何気に視線を上に向け、その水滴が唾液である事に気付くまでは一瞬だった。

「上だスミス!」
「何っ!?」

 上を向いた彼らの目に、奇怪な怪物が見えた。
 人間位の大きさのそれは、全身を紅い体色で占め、四肢には巨大な爪の生えた手足が伸び、頭部は脳が露出し、目が無い代わりに無数の牙が生えた口から異様に長い舌が舌なめずりをしながらこちらを伺っていた。

「くたばれ!」

 スミスが天井をポイントしながらモスバーグを撃つが、散弾が届くより速く怪物は天井から落ちると、器用に床へと着地。散弾は虚しく天井に弾痕を刻んだ。

「くそっ!」

 慌てたスミスが銃口を下へと向けながら次弾を装填しようとするが、それよりも怪物の舌が伸びてスミスの胸へと突き刺さる方が速かった。

「スミス!」
「きゃああぁぁ!」

 スミスは後方へと吹っ飛び、レンの斜め後ろのロッカーへと大きな音を立ててぶち当たる。
 そちらを横目で見ながら、レンはミリィを自分の背後へと匿い、怪物へと向かって刀を八双に構えた。
 怪物はスミスのいる方向へ向き直ると、また舌を伸ばしてきたが、それが伸びきるよりも速くレンがその舌を半ばから斬り落とす。
 奇怪な咆哮を上げながら後退ろうとする怪物の横へとレンは回り込み、刀を逆手に持ち直すとその背中へと一気に突き刺し、床へと縫い止める。

「どけえ!レン!」

 突然聞こえて来たスミスの声に従って、レンが刀から手を離して傍のロッカーへとへばり付いた瞬間、レッドホークから放たれた44マグナム弾が怪物の頭部を吹き飛ばした。

「ざまあみろってんだ、このカメレオン野郎………」

 スミスが未だ硝煙を上げている銃口に一息吹くと、のろのろとした動作で立ち上がる。

「大丈夫?」

 ミリィが心配そうに声を掛けるが、スミスは笑って胸の防弾チョッキを指差した。

「強化用金属板入りで助かったよ。ケプラーだけだったら今ごろ神の御許に行ってる。すげぇ痛かったけどな」
「高かったからな、それ」

 レンが怪物の死体に足を掛けながら刀を引き抜く。
 床に食い込んだ部分に刃こぼれが無いかを確かめると、鞘へと収めて改めて微かにケイレンしている怪物の死体へと近寄った。

「何なんだ、こいつは?」
「カメレオンのモンスターだろ」
「違うわ」

 断言するスミスにミリィが異を唱えた。

「爬虫類にしては動きが柔軟過ぎる上に機敏過ぎるわ。それにこの舌も補食用じゃなくて狩猟用みたいだけど、爬虫類は自分より小型の獲物を狙う事が多いからこんな進化はしないわ」
「それじゃあこいつは一体?」
「多分……」

 真っ青な顔で説明を続けようとしたミリィの体が、ビクッとケイレンする。
 理由は聞かなくても原因ははっきりしていた。
 また、あの這い寄る音が聞こえたからだ。先程よりも速く、しかも、複数………

「スミス、そっちを頼む」
「おうよ」

 スミスがレッドホーク片手に振り向いて更衣室の奥の方を警戒する。
 レンはクーガーDをホルスターから抜いて出入り口を警戒した。
 ロッカーの陰から巨大な爪が生えた腕が見えると同時にレンはクーガーDのトリガーを連続して引く。
 その内の数発は怪物へと当たるが、怪物は微かにひるんだ次の瞬間には大きく跳躍してその巨大な爪を振りかざした。
 レンはとっさに背後へ身を引こうとするが、背後にミリィがいた事を思い出すと、僅かに身を反らして左腕で顔と首をガードした。
 爪が直撃した途端、鈍い破砕音を立てて砕け散ったプロテクターの破片と引き裂かれた袖、そして紅い飛沫が宙を舞った。

「いやああぁぁ!」
「レン!」

 レンの負傷に気付いたスミスがレンの手前に着地した怪物へと狙いを付けようとするが、ちょうど陰になっていて狙いが定まらない。
 その内に天井からもう一匹の怪物が這い寄るのが視界に飛び込み、そちらへと狙いを変える。
 力の入らない左手からクーガーDが滑り落ちる感触が伝わってくるが、それを拾いに行く事はレンには出来なかった。
 すぐ目の前の怪物は何を思ったか床の上を滑るクーガーDの方へと這い寄るが、すぐに興味を無くしたらしくレンの方へと向き直った。

(姿勢が低い………居合い、斬撃共に使えない………)

 左腕の激痛を堪えながら、レンは刀を抜いて片手で構えながら怪物と対峙する。そのまま慎重に摺り足で間合いを計る。

(この状況で使えるとしたら、あれだけか……)

 こちらの様子を伺っている怪物への対処法を頭の中で巡らしていた時、偶然足が床へと落ちていたプロテクターの破片を踏んで小さな音を立てた。
 途端、怪物は再び跳躍してレンの血が付着している爪を振りかざした。

(今だ!!)

 怪物の体が刃の攻撃範囲に届くと同時に、レンは鋭い刺突を繰り出す。
 それが相手の体に突き刺さると同時に踏み出した左足のつま先に体重をかけ、一瞬にしてまた手元へと強引に刃を戻し、次の瞬間に再び刃を突き出す。    
連続。
 怪物の体は瞬く間に穴だらけになっていき、その爪がレンへと届く頃にはその体からは完全に力が失われていた。

「光背一刀流、《烈光突》(れっこうとつ)………」

 ぼそりとレンが技の名前を呟くのと、スミスがもう一匹の怪物にとどめの弾丸を撃ち込むのはほぼ同時だった。
 怪物が完全に死んだのを見届けると、レンは背中からロッカーへと持たれかかり、そのまま崩れるように座り込んだ。

「レン!」
「おい!大丈夫か!」
「あんまり………」

 二人が慌てて駆け寄るが、レンの傷口から止めど無く流れている血を見ると言葉を失った。
 ミリィが自分のロッカーからタオルを取り出して傷口へとあてがうが、瞬く間にそれは真っ赤に染まっていく。

「どうしよう、どうしよう」
「落ち着け、こういう時は止血して病院に…」
「街がこんな状態で開いている病院があるか」

 狼狽しきっている二人に冷ややかな視線を向けながら、レンはどうすればいいかを考えた。

「スミス、ベルトを貸せ」
「は?」
「ミリィは何でもいい、厚めの本を探してきてくれ」
「何に使うの?」
「治療だよ」

 訝しがっている二人をよそに、レンはスミスのベルトで上腕をきつく縛って止血すると、ミリィが自分のロッカーから持ってきた数冊の文庫小説を重ねると一番上の本の表紙をめくり、ページを一枚破って床へと置いた。

「どうするつもりだ?」
「いいから手伝え」

 レンはベストのポケットから何発かの弾丸を取り出すと、弾頭を歯で挟んで外し、中の炸薬を紙の上へと撒けた。

「どうすんだよ、一体?」

 訳が判らないながらもスミスもそれに協力して、同じように弾丸から炸薬を抜き出す。

「血が止まらなけりゃ、出ないようにしてやりゃいい」

 レンは一定量が紙の上に溜まると、傷口の血を拭ってその上へと振り掛けた。

「オレの銃を取ってくれ」
「おい、お前まさか……」
「多分当たりだ」

 ミリィがクーガーDを手渡すと、レンは腕を本の端に置いて、弾丸が腕を掠って本へと突き刺さるように銃口をポイントした。

「正気か!止めろ!」
「一応正気だ」

 不敵な笑みを浮かべながらレンはクーガーDのトリガーを引いた。
 発射された弾丸は傷口を覆っていた炸薬を一瞬にして着火させる。

「!!」
「やりやがった…………」

 歯を食いしばって痛みに耐えたレンに対し、驚きのあまり声も出ないミリィと唖然としているスミスの前で、炸薬はあっという間に燃え尽きる。
 後には火傷によってほとんど血が出なくなった傷が残った。

「こいつで何とかなる」

 激痛の為、顔を歪めているレンが左腕を持ち上げて軽く拳を握ったり開いたりする。
 充分動く事を確認すると、そこに救急スプレーを吹きつけた。

「待って」

 その上から包帯を巻こうとするレンをミリィは止めると、窓際に置いてあった鉢植えのハーブの葉を千切って傷口の上へとあてがった。

「このハーブは傷や火傷によく効くし、鎮痛効果もあるの」
「そうか、済まない……」
「ううん、お礼を言わなきゃならないのはあたしの方。この傷、あたしを庇ったからでしょ」

 包帯を巻きながら、ミリィは真摯な瞳でレンの方を見た。

「ありがとう。あたし一人だったら、もうとっくに死んでいた」
「気にするな。体が勝手に反応しただけだ」
「でも…」
「そ、それよりも、結局こいつ何なんだろうなあ」

 その場に漂う自分だけが気まずい雰囲気に、スミスが強引に話題を変えた。

「ええ、さっきの動きを見て確信したわ。そいつは多分肉食の哺乳類の変種だわ」
「へえ、そうなんだ」

 白々しい返事を返すスミスを苦笑しながら、包帯を巻き終えた左腕でクーガーDの握り具合を再確認しながらレンが立ち上がる。

「そいつの右腕を見てみろ。そいつが何の変種か分かるぞ」
「あ?何で腕を見て分かる…」

 言葉の途中でスミスの目が驚愕に見開かれる。何事かと近寄ったミリィもそこにある物を見つけて愕然とした。

「そんな………」

 怪物の右腕には、今にもちぎれんがばかりに伸びている金色のチェーンブレスレットが光っていた。

「じゃあこれ……」
「人間だった、てのか……」

 呆然としている二人に、レンは短く頷いた。

「ずっと考えていた、どうしてこの街が急に化け物達であふれたか………こいつはオレの仮設だが、この街に生き物を変貌させる何かの要因が有って、その要因に触れた生物が何らかの変化を起こしてゾンビや怪物になるんじゃないのか?」
「ちょっと待てよ!その何かの要因って何だよ?軍が作った秘密兵器のガスか?それともブードゥーの儀式か?そんな事ある訳が…」
「…可能性はあるわ」

 何かを考え込んでいたミリィが突然口を開き、論議していた二人の視線がミリィへと集中する。

「ウイルス進化説って学説が有るの。それによれば、脅威的な致死性を持ったウイルスが生物に感染すると、ほとんどの生物は死滅するけど、それに耐性を持った生物、もしくは耐性を持つ為に進化した生物が生き残るって説なの。はっきりとは言えないけど、今の状況はこれに当てはまるような気がするの」
「それじゃあ伝染病だってのか!?」
「あくまで仮説としてよ。それに、市当局から出ていた奇病の感染者数からいって、おそらく空気感染ではなくて、何らかの媒介、水や微生物、小動物からの間接感染がもっとも有力だと思うわ」
「これから直接感染する可能性は?」

 レンが左腕の包帯を差しながらの問いに、ミリィはしばし沈黙した。

「………多分、大丈夫だと思うわ。負傷後すぐに高温及び薬品による消毒を行ったから、もしウイルスが原因だったとしても死滅しているはずよ」
「オレ達がそのウイルスに感染する可能性は?」

 ミリィは無言で首を横に振った。

「分からない……そもそも本当にウイルスが原因なのかすらも特定出来ない状況じゃとても……」
「頼むよ!オレは死ぬのもゾンビになるのもゴメンだ!」

 スミスがミリィの肩を揺さぶるのを、レンが止める。しばらくそのまま不気味な沈黙だけがその場を支配した。

「とにかく、ここで考えてても何も解決しない。今はこの街から生きて脱出する事だけを考えよう」
「……うん……」
「ああ」

 レンの言葉に、残る二人が小さく答えた。

「取り合えず、腹ごしらえでもしよう」
『え?』

 続くレンの言葉に二人は同時に疑問符を浮かべた。

「腹ごしらえって……」
「よく考えたら朝から何も食ってなかったからな。幸いここには大量に食料があるから、必要な分だけ拝借していくとしよう」
「でも外にはゾンビが……」
「切りぬけてやるさ。この備前長船に賭けて」

 レンは刀を持ち上げながら挑戦的な笑みを浮かべた。


 店内に戻った所で、そこに転がっている死体を見たミリィが小さな悲鳴を上げる。

「主任………」
「見ない方がいい」

 レンが彼女の視界を閉ざすように前へと立つと、スミスに目配せする。
 その意図を察したスミスが手近の被服エリアから適当な服を取ると、死体の上に掛けた。

「向こうも頼む」
「お、おう」

 しがみ付いて震えだしたミリィをなだめながら、レンはもう一つの死体の方を顎で示す。

「この先、こんなのは幾らでも転がっている。慣れろとは言わないが、覚悟はしておけ」

 レンの言葉に、ミリィは震えながらも小さく頷く。

「おわっ!?」

 その時、スミスが妙な悲鳴を上げた。
 レンがそちらを見ると、そこには胸を切り裂かれて絶命していたはずの死体が、ゆっくりと起き上がる所だった。

「トムさん!?」
「違う!あれはもう人間じゃない!」

 レンがミリィを背後に匿いながら刀に手を掛ける。
 が、それよりも早くスミスが至近距離から散弾を撃ち込み、その上半身を四散させた。

「ひっ!?」

 その光景を目の当たりにしたミリィが悲鳴を上げながらその場にへたり込む。

「あ…ああ…………」

 あまりのショックに、ミリィは言葉を失いケイレンするような声を出しながら嗚咽を漏らす。

「これが今のこの街の状況だ。例え知人を見かけても…」
「ひぃっ!」

 レンの言葉の途中で、ミリィが悲鳴を上げる。何時の間にか、その足首を土気色をした腕が掴んでいた。

「い、いやあっ!!」

 それが、先程隠した死体から伸びている事に気付いたミリィが錯乱しながら足を振るう。
 が、動き出した死体はミリィの足首を掴んだまま、ゆっくりと這い寄ってくる。
 レンは無言で刀を素早く抜くと、ゾンビの首筋へと突き刺した。
 ゾンビは短くケイレンすると、掴んでいた手を離し、再び死体へと戻る。
 レンは刀を振るって鞘に収めると、ミリィの肩に優しく手を掛けた。

「ショックかもしれんが、受け入れろ。もしくは忘れるんだ。でなければ持たないぞ」
「でも………」

 小さく嗚咽しているミリィに、レンが半ば冷徹な声で言葉を続ける。

「余計な事を考えている暇は無い。生き残る事だけを考えろ。それが嫌なら何時までも泣いている事だな」
「おい、そんな言い方は…」

 さすがに見かねたスミスが忠告するが、レンはそれを制して後を続ける。

「どんな時も生き残るのは意志が強い人間だ。“運に頼るな、自分の力で掴み取れ”、オレは剣の師匠からそう教えられた」
「………………うん…………」

 しばらくの沈黙の後、ミリィは小さく頷いた。

「取り合えず、着替えた方がいいぞ」
「え?」

 レンの言葉に、ミリィは改めて自分の状態を見た。
 そして、初めて自分が座り込んでいた床に小さな湯気を立てる水溜りが出来ている事に気付いた。

「馬鹿っ!」

 ミリィは赤面しながら傍の陳列棚からヘアスプレーの缶を取るとレンへと投げ付けた。
 缶はちょうど向こうを向いたレンの後頭部へと命中した。


「なるべく缶かビン、それにここで作られた物以外の物しか口にしない方がいいぞ」

 レンが後頭部を保冷材で冷やしながら、失敬したコンビーフ缶を咀嚼する。

「さもしいけどな」

 スミスが缶詰のフルーツを缶ジュースで流し込みながらぼやく。
 そこで、着替えてきたミリィが目の前にカロリー食品を置いたまま、手を付けていない事にレンは気付く。

「無理にでも食っておいた方がいい。食事を取ると取らないのでは行動出来る範囲が違ってくる」
「………うん」

 ミリィはカロリー食品の封を破ると、強引にそれを口に入れて咀嚼し、缶ジュースで流し込んだ。

「食ったはいいが、吐かない程度で抑えておけ。無駄になる。あくまで必要量を食う程度に」
「どれ位だそれは」
「個人差だな。腹ごしらえが済んだら、必要な物を失敬してすぐに出るぞ」

レンが食べ終えた缶詰を律儀に店内のゴミ箱に投げ捨てながら立ち上がる。

「立派な万引きだよな、これって………」

 ゾンビの血と腐肉で汚れていたズボンをちゃっかり店内の物で着替えたスミスが食料やら何やらを物色しながらぼそりと呟く。

「非常時だ。請求されたら後払いで払う。もっともゾンビに請求されたら別だけどな」
「笑えないぞ、それは………」

 スミスがげんなりした顔でレンを見る。
 ふと、ミリィがゾンビ化してレン達に倒された同僚達の死体に、生花エリアから持ってきた花を捧げているのが見えた。
 十字を切って黙祷を捧げているのを見たスミスが言葉を掛けようとするが、思い留まって無言でその場を離れた。

「飲み物と食い物、あと何が必要だ?」
「そうだな、薬の類でも…」
「それはあたしが持つから」

 少し青い顔をしながらも、ショックから立ち直ったらしいミリィが小さなナップサックにアウトドア用品や地図、生花エリアの鉢植えから取ってきた治療用のハーブ等を押し込んでいく。

「必要最小限にしておけ。かさ張ると荷物になるだけだぞ」
「うん、分かった」

 荷物をまとめたミリィがナップサックを背負うと、準備は整った。

「さて、ここからどう行く?」
「外にゾンビ連中がいなきゃいいんだが………」
「あたしに考えがあるわ。こっちに来て」

 ミリィの後に続いて、三人は事務所を抜け、外の従業員駐車場へと出る。

「フェンスの向こうに何匹か居やがるな」
「ドアを開けるのも出来ない連中だから、こっちに来る事は出来ないだろう」

 フェンスの向こうからこちらを見ているゾンビ達に多少驚きながらも、ミリィは足元を指差す。

「ここなら安全だと思うの」
「なるほどな」

 そこには下水道に続くマンホールが有った。

「何か開けるの取ってくる」

 スミスが小走りに店内に戻り、すぐにバールを手にしてくると、マンホールのフタにそれを掛け、力を込める。

「せーの」

 金属とコンクリートが擦れる重々しい音を立てながら、フタが横にずれる。

「お〜し、開い…」

 マンホールのフタを横に置こうとしたスミスが、フェンスの横からこちらに向かってくるゾンビに気付いて仰天する。

「やばい、回り道するぐらいの知恵が残ってやがった!」
「ウソ!」
「急げ!」

 三人は慌ててマンホールの中に入ると、フタにバールを引っ掛けて内側から閉めた。
 その先に、何が待っているかも知らずに……………






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